陸地の表面に存在する水のうちで湖沼、湿地、河川などの水をさし、氷雪や海水は普通は地表水に含めない。土壌水や地下水などの地中水に対比される術語であるが、水そのものは水循環の過程で地表水から地中水へ、あるいはその逆へと変化する。
[榧根 勇]
地表水は現在、湿地を含めても全陸地の3.5%を覆うにすぎない。湖沼の分布は、地球規模でみると、氷河の影響を受けた地域、構造的な大地溝帯、海への出口をもたないステップ地域で密である。陸地の水面積率はフィンランド9.4%、スウェーデン8.6%と高緯度地方で高い。日本の湖水面積は2680平方キロメートルで、全国土の0.7%を占めるにすぎない。北極圏では蒸発による損失が少ないうえに、永久凍土であるため地中の排水条件が悪く、水面積率が30%を超える地域もある。とくに北流して北極海へ注ぐ河川では、融雪や融氷が上流域から始まるため、春の融雪期には雪融(ど)け水がせき止められて氾濫(はんらん)し、水面積が著しく大きくなる。モンスーン地域の河川は雨期になると氾濫し、東南アジアのメコン川やメナム川のデルタ地帯は、雨期の間水面下に没するのが普通である。カンボジアのトンレ・サップ湖は、メコン川の洪水調整池としての機能も果たしている。
乾燥地域の内陸湖は、乾期と雨期による水面積の変動が大きく、アフリカのチャド湖は低水位期には高水位期の半分以下に縮小していた。そして、1963年以後、地球温暖化によるこの地域の降水量の急激な減少と、湖へ流入する河川からの灌漑(かんがい)用水の取水により、湖面積は20分の1近くまで縮小してしまった。同じ時期に、同じ理由で、中央アジアのアラル海は湖水体積の80%を失った。内陸湖はまた長期的な気候変動の影響も受けやすく、たとえばアメリカのグレート・ソルト・レークは、約1万年前の温潤な時代には、現在と比べて湖水の面積は13倍、体積は500倍もあった。
大湖沼でもその40%は精密な測深図が得られておらず、湖沼水の体積の正確な値は不明であるが、推定では塩湖を含めて約21万9000立方キロメートル程度であり、地球上の水の0.016%を占めるにすぎない。人造湖の総面積は40万平方キロメートルで、有効貯水量は2000立方キロメートルと見積もられている。
河川水の総量は1000~2000立方キロメートル程度で水量は少ないが、湖沼水に比べると循環速度が速く、水資源としては湖沼水よりもはるかに重要である。河川水の約3分の1は地下水によって涵養(かんよう)されると考えられている。
日本では1960年代の高度経済成長期以降、工業化や都市化に伴う河川水の汚濁や、窒素やリンの流入による湖沼水の富栄養化が深刻な社会問題になり、水問題は水量から水質へと移った。そのようなことから、地表水は水資源としてのほかに、環境を構成する要素としての役割という点からも見直されるようになり、水環境が生み出す水の文化に対する関心も高まってきた。
[榧根 勇]
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