塗屋造(読み)ぬりやづくり

日本大百科全書(ニッポニカ) 「塗屋造」の意味・わかりやすい解説

塗屋造
ぬりやづくり

塗家造とも書く。建物外部の柱や窓枠などを大壁造として白壁で塗り籠(こ)めた建築様式。つまり内部からは柱が見えるが、外部からは柱や窓の木部が見えないもの。近世以降の町家(まちや)によく用いられ、耐火建築としての効用からつくられた。一般に町家では側面は1、2階とも塗り籠められるが、正面背面の一階部分は軒裏の垂木(たるき)や桁(けた)などが塗り籠められるのみで、柱や格子はそのまま木材部分を現し、腰回りの蹴(け)込み部分も木を残している。したがって塗屋造といっても、すべてを塗り籠めるわけではなく、なかには背面の軒裏を省略するもの、また二階の壁体部分を塗り籠めるだけで、正面・背面とも軒裏は塗り籠めないものなど、簡略化したものもある。このような塗屋造は、単に町家の外観を整えるだけのものであり、本来の耐火性への認識はしだいに薄らぐようになった。とくに耐火性を考慮し、塗り籠めの壁を厚くした土蔵造の町家も幕末には出現した。

[工藤圭章]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「塗屋造」の意味・わかりやすい解説

塗屋造
ぬりやづくり
stucco finished building

外面を壁や化粧漆喰 stuccoで塗り込んで防火的にした建物。日本では近世初頭から生れた。また,外周土壁を厚く土蔵のように塗り,軒下も塗籠にした民家形式を土蔵造という。

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旺文社日本史事典 三訂版 「塗屋造」の解説

塗屋造
ぬりやづくり

家屋の外周を土で塗りこめる建築様式
土蔵造りの一種江戸時代の享保期(1716〜36)以後,防火上から江戸で発達した。屋根瓦葺にする。

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世界大百科事典(旧版)内の塗屋造の言及

【壁】より

…しかし,この土蔵造は長い間庶民の家には禁じられていたもので,1720年(享保5)出火と飛火防止のため〈土蔵造あるいは塗屋と瓦屋根は,これからはかってに町中の普請で用いてよい〉とされて以来,ようやく民家にも普及した。民家の塗屋造は簡易土蔵造というべきもので,土蔵造より壁厚が薄く,柱形などを見せるが,土蔵造との違いはあまり明確でない。土蔵造や塗屋造の腰に平らな瓦をはり,目地を漆喰で盛り上げたものを生子(なまこ)(海鼠)壁という。…

【土蔵造】より

…幕末から明治にかけては銀行や官公庁,学校などの擬洋風建築にも利用されている。なお,民家において,木部の外側を塗り込んではいるが塗厚が薄く,開口部など木部の露出した部分もあって簡易耐火構造ともいうべきものを塗屋造(ぬりやづくり)という。江戸においては,初め町家の土蔵造や塗屋造を奢侈(しやし)として規制する方向にあったが,享保(1716‐36)以後は防火のために強制的に普及させた。…

※「塗屋造」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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