土蔵造(読み)どぞうづくり

精選版 日本国語大辞典 「土蔵造」の意味・読み・例文・類語

どぞう‐づくり ドザウ‥【土蔵造】

〘名〙 土蔵のように家の四面を土・漆喰(しっくい)で塗った構造。また、その家。
御触書寛保集成二九・享保五年(1720)四月「町中普請之儀、土蔵作り或は塗家并瓦屋根に仕候事」

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デジタル大辞泉 「土蔵造」の意味・読み・例文・類語

どぞう‐づくり〔ドザウ‐〕【土蔵造(り)】

土蔵のように家の四面を土や漆喰で塗った構造。また、その家屋

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改訂新版 世界大百科事典 「土蔵造」の意味・わかりやすい解説

土蔵造 (どぞうづくり)

日本建築における耐火構造の一つ。木部の外側を土壁で覆い,白土または漆喰(しつくい)の上塗りをかけたもので,壁厚は30cmに及ぶ。《春日権現験記》に土蔵造の倉が描かれており,遅くとも鎌倉時代初めには倉に用いられたらしい。室町時代末以後は城郭に利用されて発達し,桃山~江戸時代には民家や寺院建築にも広がった。農家ではもっぱら倉に用いられたが,市街地の商家では店舗(店蔵(みせぐら)という)や座敷にも利用された。関東と関西では形式が少し異なり,関東では腰巻があって軒の鉢巻が幅広いが,関西には腰巻がなく鉢巻も狭い。寺院建築では経蔵などに用いられた。幕末から明治にかけては銀行や官公庁,学校などの擬洋風建築にも利用されている。なお,民家において,木部の外側を塗り込んではいるが塗厚が薄く,開口部など木部の露出した部分もあって簡易耐火構造ともいうべきものを塗屋造(ぬりやづくり)という。江戸においては,初め町家の土蔵造や塗屋造を奢侈(しやし)として規制する方向にあったが,享保(1716-36)以後は防火のために強制的に普及させた。土蔵造の町並みとしては埼玉県川越市のものがよく知られている。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「土蔵造」の意味・わかりやすい解説

土蔵造
どぞうづくり

建物の外観が土蔵のように大壁(おおかべ)で塗り籠(こ)めて、柱などの木の部分を露出しない造り方をいう。耐火性があるため、近世以降は土蔵だけではなしに町家の店舗にも用いられた。壁は柱の外側に間渡(まわたし)を打ち付けて塗られる大壁となるため、大壁造ともいう。また、近世の町家にあっては、一階部分は柱を露出するが、二階は土蔵造とし、窓の格子や軒裏の垂木(たるき)も塗り籠めたものを塗屋造(ぬりやづくり)という。江戸時代末期には、とくに耐火性を考慮して壁を厚くして、窓にも土扉をつけ、一見土蔵風にみえる店舗がつくられる。これを店蔵(みせぐら)とよび、土蔵造の典型的なものである。これに対して、塗屋造は概して大壁が薄い。

 土蔵造の著名な町家は福島県喜多方(きたかた)市、埼玉県川越(かわごえ)市、富山県高岡(たかおか)市など多くの地方に所在し、明治時代以降は大壁を鼠漆喰(ねずみじっくい)・黒漆喰仕上げとすることが多い。また、れんが要所に用いる土蔵造の店舗も現れる。山形地方では明治時代から店舗に限らず、一般の住居にも土蔵造が取り入れられ、居間仏間を土蔵造とする例もみられる。

[工藤圭章]

『川添登編『蔵』(1980・文芸春秋)』


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山川 日本史小辞典 改訂新版 「土蔵造」の解説

土蔵造
どぞうづくり

外回りを土の大壁でおおった伝統的な防火建築。軸部(柱・梁(はり)・桁(けた)など)は塗家(ぬりや)造と同じく木造であるが,壁は一段と厚く,屋根裏・軒裏・格子(こうし)を土で塗り,開口部も火災時には土戸で密閉できるように造る。粗壁を保護する石灰を使った漆喰(しっくい)仕上げをした白壁や,平瓦を用いた海鼠(なまこ)壁などの工夫もされている。中世の京都の高利貸業者の土倉(どそう)は質物保管の土蔵をもつことが前提で,絵巻物にも描かれる。近世は享保期以降火災の多い都市で奨励され,店舗・上質の座敷にも土蔵造が現れた。明治期にも銀行・官庁などで擬洋風建築として利用され,埼玉県川越市・福島県喜多方市などで町並みとして残されている。

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百科事典マイペディア 「土蔵造」の意味・わかりやすい解説

土蔵造【どぞうづくり】

土蔵の形式をとった耐火建築物。江戸時代には江戸や大坂で町屋を土蔵造にすることが奨励され,特に明暦の大火後には御触書(おふれがき)まで出されている。土蔵造の町並としては,埼玉県川越市のものが知られる。
→関連項目民家

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世界大百科事典(旧版)内の土蔵造の言及

【壁】より

…また,土壁は柱との納まりの関係から,柱の露出する真壁(しんかべ)式と柱を外側から塗り込んでしまう大壁式とに分けられる。大壁式塗籠の一種である土蔵造は耐火用として中世から倉に用いられ,近世には城郭に用いられておおいに発達した。しかし,この土蔵造は長い間庶民の家には禁じられていたもので,1720年(享保5)出火と飛火防止のため〈土蔵造あるいは塗屋と瓦屋根は,これからはかってに町中の普請で用いてよい〉とされて以来,ようやく民家にも普及した。…

【住居】より

…前土間で台所に四畳半か六畳程度の部屋がついたものが多く,便所も共用であるなど,店持(たなもち)の住居とはかなりの落差があった。防火対策が遅れていた東日本の町屋も,江戸時代の後期になると江戸や川越などの都市で,屋根を瓦で葺き,外壁を厚い土壁で塗った土蔵造の町屋が増加し,西日本の町屋とは異なった外観を呈するようになった。
【近代】
 明治維新以降,日本の社会は急速に西欧の文物の移入を行う。…

【町家(町屋)】より

…防火のため,あるいは富や格式の象徴といわれているが,いまではほとんど見かけなくなっている。大火の多かった江戸では,江戸後期になると,主屋の建物も土蔵と同じように厚い土壁で塗り込め,開口部にも土扉を開閉する土蔵造が普及した。東京には遺構はないが,埼玉県川越市に1877年の大火後に建てられた町家が残っており,重厚な江戸の町家建築をしのばせている。…

※「土蔵造」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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