塗師(読み)ヌシ

デジタル大辞泉 「塗師」の意味・読み・例文・類語

ぬし【塗師】[狂言]

狂言和泉いずみでは「塗師平六」。越後塗師、平六を頼って都から師匠が来ると、平六の妻は夫の仕事が減ると思い夫は死んだと偽る。師匠に会いたい平六はしかたなく幽霊に化けて対面する。

ぬ‐し【塗師】

《「ぬりし」が音変化した「ぬっし」の促音無表記》「塗り師」に同じ。

ぬり‐し【塗(り)師】

漆細工漆器製造に従事する職人

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精選版 日本国語大辞典 「塗師」の意味・読み・例文・類語

ぬ‐し【塗師】

  1. [ 1 ] 〘 名詞 〙 ( 「ぬりし」の変化した「ぬっし」の促音無表記から ) 漆塗りの細工、漆器の製造に従事する職人。漆工塗師屋(ぬしや)。ぬっし。
    1. 塗師<b>[ 一 ]</b>〈七十一番職人歌合〉
      塗師[ 一 ]〈七十一番職人歌合〉
    2. [初出の実例]「塗師御作手給 一丁 神殿庄」(出典:三箇院家抄(1469頃)一)
    3. 「うつはもの、われかけたるはぬしの細工にをきぬふそかし」(出典:俳諧・類船集(1676)奴)
  2. [ 2 ] 狂言。各流。都の塗師が越後にいる弟子の平六を頼って行くと、平六の妻は夫の仕事が無くなることを恐れて夫は死んだと偽る。師を慕う平六は仕方なく幽霊になって師と会う。和泉流では「塗師平六(ぬしへいろく)」という。

ぬり‐し【塗師】

  1. 〘 名詞 〙ぬし(塗師)[ 一 ]

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「塗師」の解説

塗師
ぬし

下地・中塗・上塗など漆塗りの工程にたずさわる職人。漆の技術は高度な専門性が要求されるため,その利用が始まった初期の段階から漆塗りを専業とする人々がいたと考えられる。しかし,その存在が史料で確認できるのは,大宝令で漆部司(ぬりべのつかさ)が設けられ,太政官符などに「漆塗工」の記載がみられる奈良時代である。漆器の需要が広がった中世以降,分業化はさらに進み,仏具調度刀装・飲食器など,それぞれの分野に専門の塗師が登場した。

出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報

世界大百科事典(旧版)内の塗師の言及

【ウルシ(漆)】より

…それまで貴重品であった漆器も,室町時代以降しだいに一般化し,15世紀半ばには天王寺門前で塗物を販売する店があったこと,武蔵国でも領主から塗物の販売を許可されていたことが知られる。塗師はその技術で寺院などに年貢を納め,天皇または幕府の手形を持って全国を渡り歩いた。日本各地で出土する中世の椀類に技術的に多くの類似性があるのはこのような理由によるものであろうか。…

【ウルシ(漆)】より

…それまで貴重品であった漆器も,室町時代以降しだいに一般化し,15世紀半ばには天王寺門前で塗物を販売する店があったこと,武蔵国でも領主から塗物の販売を許可されていたことが知られる。塗師はその技術で寺院などに年貢を納め,天皇または幕府の手形を持って全国を渡り歩いた。日本各地で出土する中世の椀類に技術的に多くの類似性があるのはこのような理由によるものであろうか。…

※「塗師」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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