塩冶高貞(読み)えんや・たかさだ

朝日日本歴史人物事典 「塩冶高貞」の解説

塩冶高貞

没年:暦応4/興国2(1341)
生年:生年不詳
鎌倉末・南北朝時代武将。父は佐々木貞清塩冶判官,隠岐大夫判官とも称す。検非違使,左衛門尉,隠岐守,近江守。嘉暦1(1326)年以来出雲守護の地位にあったが,正慶2/元弘3(1333)年後醍醐天皇が隠岐を逃れ伯耆船上山に挙兵すると,いち早く馳せ参じて天皇方を支え,戦局を有利に導く。その功により,天皇の上洛に際しては先導役を務め,建武新政の発足に伴って出雲・隠岐両国国司,および雑訴決断所の寄人に任ぜられた。建武2(1335)年足利尊氏が鎌倉で反旗を翻した際には,その征討副将軍に指名され尊氏方と戦うが,箱根竹ノ下合戦において寝返り,以後尊氏方として活躍。翌年室町幕府が成立すると,改めて出雲・隠岐両国守護に任ぜられ,国内の南朝方勢力制圧に努めるとともに,出雲・伯耆などの軍勢を率いて海路北陸を攻めるなどの軍事行動を展開した。ところが,暦応4/興国2(1341)年3月突如として京都を出奔し,謀反陰謀ありとして幕府の追討を受け,翌月出雲国佐々布(島根県八束郡宍道町)で自害した。『太平記』によると,高貞の妻西台に横恋慕した高師直が讒言したためという。その西台も,播磨国陰山(姫路市豊富町)で自害。この話は『仮名手本忠臣蔵』に脚色され,塩冶判官は浅野内匠頭の役名となり,広く全国で知られるようになった。<参考文献>藤岡大拙『塩冶判官高貞』

(井上寛司)

出典 朝日日本歴史人物事典:(株)朝日新聞出版朝日日本歴史人物事典について 情報

改訂新版 世界大百科事典 「塩冶高貞」の意味・わかりやすい解説

塩冶高貞 (えんやたかさだ)
生没年:?-1341(興国2・暦応4)

鎌倉末~南北朝期の武士。塩冶判官,隠岐大夫判官と号される。父は貞清。検非違使,左衛門尉,隠岐守,近江守。1333年(元弘3)後醍醐天皇が隠岐を逃れ伯耆国船上山に挙兵すると,出雲国守護としてはせ参じる。その後,足利尊氏のもとに下り,出雲・隠岐に守護として勢力を築くが,41年京都を出奔し,謀反の陰謀ありとして幕府の追討をうけ,播磨国影山で自害した。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「塩冶高貞」の意味・わかりやすい解説

塩冶高貞
えんやたかさだ
(?―1341)

南北朝時代の武将。貞清(さだきよ)の嫡子。1333年(元弘3・正慶2)後醍醐(ごだいご)天皇が伯耆(ほうき)国船上山(せんじょうさん)に討幕の兵をあげるや、これに呼応して出兵。35年(建武2)足利尊氏(あしかがたかうじ)が反すると、新田義貞(にったよしさだ)の下で箱根竹の下の戦いに参加するが、敗れて尊氏に降(くだ)り、やがて出雲(いずも)、隠岐(おき)両国の守護に補任(ぶにん)される。41年(興国2・暦応4)3月に突然京都を出奔。桃井直常(もものいなおつね)ら幕府の追っ手により、播磨(はりま)国影山宿で自害させられた。『太平記』は出奔の理由を、高師直(こうのもろなお)が高貞の妻に横恋慕して尊氏に讒言(ざんげん)したと記している。

[海津一朗]

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「塩冶高貞」の解説

塩冶高貞 えんや-たかさだ

?-1341 南北朝時代の武将。
佐々木貞清の子。正慶(しょうきょう)2=元弘(げんこう)3年後醍醐(ごだいご)天皇のよびかけに応じ,のち足利尊氏(たかうじ)に服し,出雲(いずも)・隠岐(おき)の守護となる。暦応(りゃくおう)4=興国2年幕府方におわれ,3月20日播磨(はりま)影山で自殺。「太平記」によれば高師直(こうの-もろなお)が中傷したためという。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「塩冶高貞」の意味・わかりやすい解説

塩冶高貞
えんやたかさだ

[生]?
[没]興国2=暦応4(1314).3.
鎌倉時代末期~南北朝時代の出雲の守護。足利尊氏の執事で権勢を誇った高師直が彼の妻に横恋慕したあげく,高貞を尊氏に讒言したため,追討を受け自尽した。『仮名手本忠臣蔵』では浅野長矩の役名として使われて有名。

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