微分方程式は一般に無数の解をもつが,その定義されている領域の境界上で解,あるいはそれの導関数の値に対して何等かの条件を課すことによって,一つの解を指定することができる。この条件を境界条件,境界条件を満たす解を求めることを境界値問題boundary value problemという。これは振動論,ポテンシャル論など,多くの物理的な問題に関連してしばしば現れる問題である。例えば閉区間[a,b]上で定義された常微分方程式,において,条件,
を満たす解を求めることは,(1)を境界条件とする境界値問題で,シュトゥルム=リウビルの問題Sturm-Liouville problemと呼ばれる。
また,三次元ユークリッド空間内の領域D上のラプラス方程式,において,φをDの境界∂D上で定義された関数として,∂D上で,
u=φ ……(2)
あるいは,
∂u/∂n=φ ……(3)
を満たす解を求める問題は,やはり(2),あるいは(3)を境界条件とする境界値問題である(∂u/∂nは∂Dの外向き法線方向への解の微分係数を表す)。境界条件が(2)で与えられているとき,これをディリクレ問題Dirichlet problem,(3)で与えられているとき,ノイマン問題Neumann problemという。
なお,境界に限りなく近づくときの解の漸近的挙動を指定して解を求める問題も,やはり境界値問題と呼ばれる。このときはその漸近的挙動が境界条件となる。
執筆者:斎藤 利弥
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報