少量の変性剤を加えたエタノール(エチルアルコール)をいう。変性剤を加えることで飲用できないようにして酒税(アルコール事業法の加算額)の対象から外し、しかも使用許可申請なしで使えるので、工業用アルコール溶剤として適当である。変性剤としては悪臭、不快な味、毒性をもち、容易にアルコールから分離できないが工業的用途には支障がない物質が適当で、現在はメタノール(メチルアルコール)、1-プロパノール、イソプロピルアルコール、メチルエチルケトンなどが用いられている。市販の変性アルコールの例では、エタノール85~89%に10~13%のメタノール、イソプロピルアルコールまたは1-プロパノールを添加しているものが多い。医薬品・化粧品に使う変性エタノールについてはこのほかの種々の物質が変性に用いられている。
日本では2001年(平成13)まで「アルコール専売法」によりエタノールの製造販売が規制され、「アルコール売捌(うりさばき)規則」により変性の仕方が定められていた。同規則では、変性アルコールは、エタノール180リットル当りメタノール7キログラム、ホルマリン30グラム、コリジン400グラム、ローダミン(赤色染料)0.5グラムを添加してつくると規定されていた。
「アルコール専売法」にかわって2001年から施行された「アルコール事業法」によると、特定アルコール、一般アルコール、変性アルコールが、エタノールを主成分とする製品として認められている。特定アルコールと一般アルコールは純粋なエタノールであり、特定アルコールではその価格に酒税相当の加算額が上乗せされているので、飲用を除く用途に自由に使えるが、一般アルコールは加算額が課せられていないので、安価であるが使用には経済産業省の許可と使用状況の定期的報告が必要である。変性アルコールは加算額が課されないうえ、経済産業省への許可申請なしで使用できる。「アルコール事業法」は90%以上のエタノールを含有する製品だけに適用されるが、90%以下のエタノールを含む製品には「酒税法」が適用されるので、免税のためには変性が必要である。
[廣田 穰 2016年2月17日]
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…また金属ナトリウムを加えると,水素を発生しナトリウムエチラートC2H5ONa(ナトリウムエトキシドともいう)を生じ,これは有機合成反応の縮合剤や触媒に用いられる。工業用アルコールは無税の取扱いをうけており,これが飲料用に転用されるのを防ぐために毒性の強いメチルアルコールが混入され,変性アルコールとよばれている。エチルアルコールを混入したガソリンはガソホールgasoholとよばれ,自動車用燃料としてブラジルなどでは実用に供されている。…
…メチルアルコール(メタノール)にも殺菌効力があり,以前にはよく使用されたが,今日では毒性などのため用いられなくなった。エチルアルコールに加えられたものは変性アルコールとして,価格が安いため環境の殺菌剤として用いられる。エチルアルコールの殺菌最適濃度には古くから種々の説があるが,対象とする微生物にもよるが,無水物を除いて濃度の高いほうが殺菌効力が強いといわれる。…
…タンパク質やアルコールにおける変性はdenaturationと呼び,合成樹脂の成分の一部を重縮合に際して変性剤で置き換えて,その性質を変えることや,デンプンを熱,化学薬品,酵素で処理することはmodificationと呼んでいる。 変性アルコールdenaturated alcoholは飲料用のエチルアルコールに変性剤を加えて工業用としたもので,工業用アルコールは税制の面で優遇されており,変性剤の添加も〈アルコール売捌規則〉で規定されている。飲料用への転用を防ぐため,不快な味や悪臭を付与したり,着色剤を加えたりする。…
※「変性アルコール」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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