令集解(読み)リョウノシュウゲ

デジタル大辞泉 「令集解」の意味・読み・例文・類語

りょうのしゅうげ〔リヤウのシフゲ〕【令集解】

養老令私撰注釈書。50巻(現存35巻)。惟宗直本これむねのなおもと撰。貞観年間(859~877)ごろ成立先行の諸注釈を集成し、撰者の説を加えたもの。→養老律令

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精選版 日本国語大辞典 「令集解」の意味・読み・例文・類語

りょうのしゅうげリャウのシフゲ【令集解】

  1. 平安前期の法制書。五〇巻(現存三六巻)。惟宗直本著。貞観(八五九‐八七七)頃の成立。養老令に関する私撰の注釈書で、先行の諸注釈書を集成し、さらに直本の説を加えたもの。大宝令の注釈書である「古記」を引用しているために、失われた大宝令を復元する最も有力な手がかりとなっている。

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改訂新版 世界大百科事典 「令集解」の意味・わかりやすい解説

令集解 (りょうのしゅうげ)

養老令の私的注釈書。もと50巻と伝えるが,現存は35巻。しかしそのなかには,《令集解》ではない〈令私記〉(個人の著した令の注釈書)が3巻含まれている。編者は,9世紀末から10世紀はじめにかけて明法博士(みようぼうはかせ)に任じ,明法道(律令学)の重鎮と目されていた惟宗直本(これむねのなおもと)。編纂の時期は明らかではないが,860年代ころとみられる。直本は別に,養老律の注釈書として《律集解(りつのしゆうげ)》30巻を著したが,これは今日残されていない。

 《令義解(りようのぎげ)》の編纂が公的事業として行われたのに対し,本書は私的に編したものであるが,先行の諸学説をそのまま引用することに重点をおいている点に,特徴がある。すなわちそれ以前に著された明法家個人の〈令私記〉は,それを著した本人の解釈を記述することに重点がおかれ,先行学説は,自説を補強するためか,あるいは批判の対象として引用されるのが通例であった。だが本書では,《令義解》の説をはじめ,〈古記云〉〈釈云〉などとして,これらの学説をそのまま引用し,直本の私見はきわめて控えめに加えられているにすぎない。このため時代別の令解釈学のありかたを知ることができ,今日研究者に本書が珍重される最大の理由となっている。なかでも重要なのは,738年(天平10)ころに成ったと推定される大宝令の注釈書〈古記〉であって,著者は不明だが,これによって大宝令の文章を部分的ながら知ることができる。〈釈云〉とする〈令釈〉以下はみな8世紀末から9世紀はじめにかけて成った養老令の注釈書で,成立の古い順にみると,〈釈云〉はその著者は不明だが半公的性格をもつ注釈書であり,〈跡云〉とする〈跡記〉は安都(あど)某の,〈穴云〉とする〈穴記〉は穴太内人(あなほのうちひと)の,〈讃云〉とする〈讃記〉は讃岐永直さぬきのながなお)の〈令私記〉とみられている。以上は直本が座右において直接引用した〈令私記〉のおもなものであるが,間接的に引用されたものを含めれば,引用されている〈令私記〉の数はさらに多く,なかには唐の学者の〈令私記〉もある。《新訂増補国史大系》所収。
大宝律令 →養老律令
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「令集解」の意味・わかりやすい解説

令集解
りょうのしゅうげ

養老(ようろう)令の注釈を集大成したもの。現存残欠35巻。明法博士(みょうぼうはかせ)惟宗直本(これむねのなおもと)の編。9世紀なかばごろの成立という。ここに集められた令の注釈は、『令義解(りょうのぎげ)』をはじめとして「古記」(大宝(たいほう)令の注釈)、「令釈(りょうしゃく)」「跡記」「穴記」「朱記」などで、これらはみな丹念に字句に訓詁(くんこ)を施して法意を説明しており、異説をあげたり、慣行を記しているところも多い。「古記」には大宝令が引用されているため、現存しない大宝令の本文を知ることができ、また格(きゃく)、式(しき)、律付釈(りつふしゃく)、律集解(りつのしゅうげ)、弾例、八十一例などの古い法律書や、唐令などの中国の法律書も引かれているので、日本、中国の律令制の研究に重要な史料を提供している。現在、軍防令、倉庫令、医疾令、関市令、捕亡令、獄令、雑令の7編が伝わらない。刊本は『国市大系』所収のものがもっとも優れ、欠けた7編の逸文を集め、所収法令の編年索引を付収している。

[皆川完一]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「令集解」の意味・わかりやすい解説

令集解
りょうのしゅうげ

『養老令』の注釈書。 30巻,のちに改編されて 50巻 (現存 35巻) 。平安時代前期の法律学者惟宗直本著。9世紀中頃の成立。まず令の条文を掲げ,次に清原夏野らが天皇の命を奉じて編んだ官撰の注釈書『令義解』の注を引き,その下に奈良時代から平安時代初期にかけての法律学者の説や政府文書,和漢の典籍を引用して解釈を施す。令条の趣旨と現実の事情が異なっている場合に言及している点もあり重要。引用文献のなかには,散逸した『大宝令』の注釈書もあるため,『大宝令』の復元にも役立つ。直本には『養老律』の注釈書『律集解』もあるが,ともに直本個人の学問的注釈であり,法的拘束力がない点,『令義解』とは異なる。 (→養老律令 )  

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百科事典マイペディア 「令集解」の意味・わかりやすい解説

令集解【りょうのしゅうげ】

養老令を注釈した諸家の私説・古記を集大成した書。もと50巻と伝えるが,現存は35巻。惟宗直本(これむねのなおもと)編。成立は860年代ころとみられる。→律令
→関連項目大庭御野養老律令

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「令集解」の解説

令集解
りょうのしゅうげ

養老令の私撰注釈書。「令義解(りょうのぎげ)」をはじめ古来の令注釈書を集成したもの。もと50巻と伝えるが,現存するのは35巻(うち3巻は本来のものではない)。「本朝書籍目録」によれば明法博士惟宗直本(これむねのなおもと)の撰。引用されている格式(きゃくしき)が弘仁のものなので貞観年間(859~877)前半以前の成立か。「令義解」の施行により令文解釈は一定したが,これにより多くの学説がうずもれることを恐れた直本が集大成したといわれている。引用されているおもな注釈書には,「古記」「令釈」「跡記」「穴記」「讃記」「物記」「伴記」などがあり,唯一の大宝令注釈書である「古記」は重要である。「国史大系」所収。

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旺文社日本史事典 三訂版 「令集解」の解説

令集解
りょうのしゅうげ

平安前期,養老令の私撰注釈書
9世紀後半の成立。30巻(現存25巻)。惟宗直本 (これむねのなおもと) 編。『令義解』の完成後,諸家の私説が失われるのを恐れ,私的にそれらを収録したもの。大宝令の注釈書も含まれており,古代法制研究上の貴重な史料である。

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世界大百科事典(旧版)内の令集解の言及

【惟宗直本】より

…これは,かつて文徳天皇から〈律令の宗師〉とたたえられた讃岐永直(さぬきのながなお)が,その晩年にやはり私第で律令を講じた先例を襲ったものである。著書に《律集解(りつのしゆうげ)》30巻(現存せず),《令集解(りようのしゆうげ)》(もと50巻か。一部現存),《検非違使私記》2巻(現存せず)があり,曾孫の允亮(ただすけ)が著した《政事要略》に引用されている《交替式私記》(2巻か)も直本の著と推定される。…

【讃岐永直】より

…文徳天皇に〈律令の宗師〉とたたえられ,晩年には私邸で律令講書を行うことを許された。《令集解》に引用されている《讃記》は永直が著した令私記。【早川 庄八】。…

※「令集解」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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