独立行政法人大学入試センターが毎年1月に実施する大学志望者の共通試験。国公立大受験生が対象の共通1次試験を変更し、私立大も参加して1990年から始まった。今月16、17日に行われる試験の志願者数は56万3767人で、利用する大学・短大は過去最高の850校となっている。文部科学省はセンター試験に替わり、記述式の問題を取り入れた新テストの導入を検討している。
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大学入試センター試験とは,共通第一次学力試験(日本)(共通一次試験(日本))に代わる大学入学者選抜のための共通テストとして,1990年(平成2)から実施されている試験である。センター試験(日本)は,大学・短期大学に入学を志願する者の高等学校段階における基礎的な学習の達成度を判定しており,各国公私立大学は,大学入学者を選抜する際に各大学で実施する試験等とともにセンター試験を活用している。独立行政法人大学入試センター(日本)と,センター試験を利用する国公私立大学が共同で実施し,例年10月初旬に受験希望者による出願の受付が行われ,1月中旬に本試験が2日間にわたって実施される。
[導入の経緯]
国立大学を対象として1979年(昭和54)から実施された共通第一次学力試験は,従来の一期校・二期校制下で問題となった大学入試試験における難問奇問の排除や,受験競争の激化の排除を導入の目的としたが,一律に5教科利用を原則としたことなどにより,結果的には偏差値に基づく国立大学の序列化を進行させた。1985年,臨時教育審議会は「教育改革に関する第一次答申」において,偏差値偏重の受験競争の弊害を是正するとともに,各大学の個性的な入学者選抜が可能となるような,国立大学だけでなく公立大学・私立大学も利用できる共通テストの創設を提言した。同答申と1988年の大学入試改革協議会最終報告を踏まえ,90年度入学者選抜よりセンター試験が導入されることとなった。国公立大学の受験機会複線化を目的として1989年より導入された二次試験の分離・分割方式と合わせて,大学入試の個性化・多様化が図られている。2004年度から短期大学もセンター試験を利用することが可能となった。
[センター試験の概要]
大学入試センターは,センター試験の役割として以下の四つを挙げている。①難問奇問を排除した,良質な問題の確保,②各大学が実施する試験との適切な組合せによる大学入試の個性化・多様化,③国公私立大学を通じた入試改革,④アラカルト方式による各大学に適した利用。
高等学校学習指導要領に基づく科目から出題され,2014(平成26)年度試験では国語,地理歴史,公民,数学,理科,外国語の6教科29科目であった。マークシート式で回答し,2006年からは英語でリスニング問題が導入されている。大学は各学部・学科で必要とする利用教科・科目を指定することができ,各大学で二次試験を実施する際に独自の学力問題や小論文,面接等を組み合わせることで,大学の創意工夫に基づいた能力・適性の判定を行うことが期待されている。またセンター試験,二次試験の各科目の配点を自由に設定することができるため,他大学との総得点の単純な比較による序列化を困難にしている。
参加大学・短期大学数は,1990年の148校から,2013年には846校(うち大学685校)まで増加した。とくに私立大学の参加が増加傾向にあり,1990年には16校の参加にとどまっていたのが,2013年は523校まで増加している。また受験者数は,1990年に43万542人であったのが,2003年には60万2887人まで増加した。それ以後はやや減少し,2016年度センター試験の志願者数は56万3768人であった。
[センター試験に対する評価と課題]
上記の通り,近年もセンター試験への参加学校数が大幅に増加しており,過去の共通一次試験等と比較して定着したといえる。また,一般入試だけでなく推薦入試,AO入試においてもセンター試験を課す大学があるなど,各国公私立大学におけるセンター試験を利活用した選抜方法は多様化しており,センター試験導入当初の目的はある程度達成されている。
一方で,共通一次試験と同様のマークシート形式が知識偏重であり,受験機会が年に1度しかないこと,科目数が増加したことにより,試験が複雑化したという指摘もある。近年では,2006年(平成18)から導入された英語のリスニングにおける機器不良の発生や,2012年の「地理歴史,公民」における試験問題冊子の大規模な配布ミスなど,試験の管理・運営上のトラブルが続出している。また大学全入時代を迎える中,大学進学希望者の大学への入学が容易になる一方で,高校段階での学習到達度が問われていないことから,学生の学力低下等が生じることへの対策となる新たな試験も模索されている。文部科学省は,センター試験に代わるものとして,高校段階の学力到達度の評価を目的とする「高等学校基礎学力テスト(日本)(仮称)」と,大学入学者選抜のための「大学入学希望者学力評価テスト(日本)(仮称)」の導入を検討している。後者は2020年度からの実施が予定されており,思考力・判断力・表現力を評価するために記述式問題の出題等が検討されている。
著者: 黒川直秀
参考文献: 本木章喜「センター試験の現状」『IDE』No. 506,2008.12.
出典 平凡社「大学事典」大学事典について 情報
(南 文枝 ライター/2017年)
(金子元久 東京大学教授 / 2007年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報
大学入学志願者を対象とし、高等学校における基礎的な学習の達成度を判定するために大学入試センターが実施する試験。1990年度(平成2)以降、1年に1回、1月中旬に全国一斉に行われている。全国すべての国公立大学と多くの私立大学が採用している。各大学・学部は、教科・科目等を自由に選択指定し、2、3月に各大学が行う学力試験や調査書、面接、小論文、実技等と組み合わせて入学者を判定する。1979年度(昭和54)から1989年度まで行われた共通一次試験は、難問奇問を廃した点で評価された。しかし、5教科利用を原則としたため大学間の入学難易度による序列化(輪切り)が進み、高校の進路指導をゆがめた。また国公立大学志願者に、一次、二次の試験の加重負担感を与え、国公立と私立の大学で試験方法が異なり併願がむずかしかったことなどから、臨時教育審議会の第一次答申(共通テスト創設)を受けて廃止され、その反省点を踏まえて「新テスト」として再発足した。2011年度(平成23)の志願者数は55万8984人であった。
[山崎博敏]
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