久保田万太郎の代表的戯曲。4幕。1927年《女性》に連載,翌28年11月築地小劇場が青山杉作演出で初演。のち築地座,歌舞伎,新派,文学座が上演。明治末の浅草の私立代用小学校が舞台。校長の大寺三平は土地の人々の人情を信じて姪と生きているが,彼は若い教師の峰が土地の魚屋〈魚吉〉の娘を叱ったことで親から苦情を言われる。三平がそれを峰に伝えたため峰は辞表を出した。三平のこうした気遣いにもかかわらず,〈魚吉〉が市立小学校建設の土地を提供するという噂が伝わり,三平は心を暗くする。学校創立20周年祝賀会のあと,病死した生徒の家から届けられた送り膳の酒を,老教師の光長と酌みかわすうちに夜は更けていく。学校制度のあわいに浮かぶ代用学校を舞台に時代と人生の影をしみじみと描いて好評を得た。
執筆者:野村 喬
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
久保田万太郎の戯曲。4幕。自作の小説『黄昏(たそがれ)』(のち『くづれやな』と改題)を改作し戯曲としたもの。1927年(昭和2)1月号から4月号の『女性』に連載。翌年11月築地(つきじ)小劇場で、青山杉作の演出、友田恭助、汐見洋らによって初演された。明治末期の東京・浅草の大寺学校という代用小学校が舞台。老校長大寺三平は昔なじみの旧世界に生きている。三平は親類づきあいだと信じている「魚吉」の子供のことで若い教員峰と衝突、峰は辞職する。創立20周年の記念式典が済んだころ、老教師光長から三平は「魚吉」が市に土地を売り、その跡地に公立の小学校が建てられるという話を聞かされる。時代の流れに取り残される人間の悲哀を、きわめて完成度の高い文体で描いた写実戯曲の傑作である。
[大笹吉雄]
『『久保田万太郎全集6』(1967・中央公論社)』
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