大気混濁度(読み)たいきこんだくど(英語表記)atmospheric turbidity

改訂新版 世界大百科事典 「大気混濁度」の意味・わかりやすい解説

大気混濁度 (たいきこんだくど)
atmospheric turbidity

微粒子などで大気混濁している度合のこと。日射に対して大気の透明度が悪くなっている度合で測定する。完全に清澄な大気は存在せず,実際の大気は塵埃じんあい),煙,煙霧などの固体または液体の浮遊微粒子を含んでいるので,それらによって日射は消散される。

 空気による日射の消散係数kと純粋な乾燥大気の消散係数kaとの比τ=k/kaをリンケLinkeの混濁因子という。すなわち,混濁因子とは大気の消散係数が乾燥空気のそれの何倍にあたるかを示す量である。実際に混濁係数を求めるときは,次式を用いる。大気外で強さI0の太陽直射光が大気中で弱められ,地表に達したときに強さIになったとすると,で求められる。Zは通過空気量に比例する量で,地表における日射を観測するときの太陽の天頂角である。リンケの混濁因子は直達日射量の観測だけから求められ,便利なので広く用いられている。しかし,大気中の細塵だけでなく水蒸気によっても直達日射量が変わるので注意する必要がある。そこで,可視部の水蒸気などの吸収のない波長域をとって調べればよいことになる。その波長域における大気の消散係数kλは乾燥空気の消散係数kaλと微粒子の消散係数kdλの和で求められる。

 kλkaλkdλ

kaλレーリー散乱の理論から算出できる。kdλは太陽光の分光観測により経験的にkdλ=βλ⁻αで表せる。式中のαは定数で微粒子の消散係数が波長によって変化する様子を示し,1~1.3程度の値をもつ。βは気柱内の微粒子の粒子の個数に比例する。これをオングストロームの混濁係数という。βは微粒子の個数だけできまり,水蒸気の吸収による影響を含んでいないので,リンケの混濁因子よりも優れている。しかし,日射の波長別観測をする必要がある。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「大気混濁度」の意味・わかりやすい解説

大気混濁度
たいきこんだくど

大気の混濁の度合いをいう。単に混濁度とよぶことがある。大気は塵埃(じんあい)など浮遊微粒子(煙霧質一種エーロゾルエアロゾルともいう)を含んでいる。これを大気の混濁という。空気の密度の違いにより屈折率の異なる気層が存在し、屈折、反射散乱などに影響を及ぼすことがある。これを光学的混濁とよぶことがある。大気混濁度を表現する尺度としては視程が一般的であるが、日射量を測って混濁の程度を表す値が用いられる。大気の外では日射量が一定であるから、地上で日射量を測定し、日射量の減少の程度から大気混濁度を推定することができる。これを混濁因子という。日射量の減少は水蒸気量によっても左右されるので、浮遊微粒子の量による減少を知るためには、水蒸気による日射の吸収効果を除去する必要がある。波長別に日射量を測定し、浮遊微粒子の量によるものだけで混濁度を表したものを混濁係数という。

[股野宏志]

『ナショナル・リサーチ・カウンシル編、和田攻ほか訳『気中粒子状物質』(1986・東京化学同人)』『河村武著『大気環境論』(1987・朝倉書店)』『本間克典編著『実用エアロゾルの計測と評価』(1990・技報堂出版)』『日本エアロゾル学会編、高橋幹二著『エアロゾル学の基礎』(2003・森北出版)』『三崎方郎著『微粒子が気候を変える――大気環境へのもう一つの視点』(中公新書)』

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