微弱な光領域でもっとも感度の高い光検出器。光電子逓倍管(こうでんしていばいかん)、ホトマルチプライヤーphotomultiplier(略してホトマルまたはPMT)ともいわれる電子管で、二次電子増倍管の代表的なものである。アメリカのツウォリキンらにより、テレビジョン撮像管の感度をあげるため、1926年ごろから開発された。
原理は、光電面(光陰極と光電子放出をあわせてもつもの)から放出された電子を加速して二次電子放出面(ダイノード)に衝突させて、入射電子の数倍~十数倍の二次電子を放出させ、さらに次々とダイノードに衝突を繰り返して電子を増倍する。ダイノードは普通7~14段で、100万倍程度の増倍率を得ている。一般にセシウム・アンチモン合金が用いられるが、酸化マグネシウムとか酸化セシウムなどを用いることもある。
光電子増倍管は、光電管出力を真空管で多段増幅する場合に比べ、信号対雑音比はよく、高い出力が得られるので、弱い光の検出、強度測定に適しており、写真乾板の黒化度、天文の測光、光の放射、吸収、反射における分光測定、石油探索、宇宙空間での放射線計測などに利用される。ダイノードを円筒内に次々と配したサイドオンタイプと、波状に並行して配したヘッドオンタイプがあり、約50センチメートル径のものまでがつくられている。
マイクロチャネルプレートといわれるものも一種の光電子増倍管で、1万倍程度の画像の増幅が得られる。これは、細く短い鉛ガラス管の内壁を水素ガス中で還元して二次電子放出面をつくり板状に並べたもので、管の両端に1キロボルト程度を加えて入射光電子を増倍し、蛍光スクリーンに照射するものである。これは近赤外、紫外線やX線、電子線、イオン線などでも増倍する。
[岩田倫典]
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光電面,二次電子増倍機構,陽極からなる真空管。光が光電面に入射して放出した光電子を増倍して陽極に捕集し,出力電流として外部に取り出すもので,多段の二次電子放出面を用いるのが一般的であり,105~107の増倍度が得られる。増倍にマイクロチャンネル板(MCP)を用いた立上り時間のとくに速いものもある。分光感度は光電面の種類で定まり,可視域から赤外,紫外,真空紫外用もある。各種の物理測光,分光光度計,フライングスポットカメラ,シンチレーションカウンターなどに用いられる。
→映像増倍管
執筆者:後藤 直宏
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光を光電面で受けて光電子を放出させ,これを静電的に集束して第二の電極に向けて衝突させ,さらに多くの二次電子を放出させる.このようなことを何段か繰り返して光電子の増大をはかるもので,光電管と二次電子増倍管を組み合わせた構造になっている.市販の増倍管は10段程度の電極をもっており,106 倍程度の利得を得ている.応用例として光電子増倍管をシンチレーターと組み合わせて放射線を検出し,入射エネルギーに比例したパルスを取り出すようにしたシンチレーション計数管がある.
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… 光電子のエネルギー分布を測定することにより,金属その他の物質の電子のバンド構造に関する情報を得る手法を,光電子分光といい,反射,吸収などの分光手法と並び,固体の電子のバンド構造を調べる重要な手法になっている。 光電子放出は光電管,光電子増倍管,撮像管などに応用されている。光電管は光電子を放出する光陰極と光電子を集める陽極からなる二極管で,光の検知や強さの測定に用いられている。…
…光検出器の中でも10~380nmの波長領域に感度をもつ光電検出器をいう。光子エネルギーが大きいため金属光電面をもつ外部光子効果型検出器をはじめ,サリチル酸ソーダなどの紫外‐可視変換蛍光体を前面にもつ光電子増倍管がよく用いられる。とくに200nmより短波長側は極紫外域と呼ばれ,なかでも120nmから短波長側では特徴のある種々の検出器が用いられる。…
…電子増倍管の前に光電面を置いた構造にすると,入射光により生じた光電子が,電子増倍管により増倍されるので,きわめて微弱な光にも感ずる光検出器となる。これを光電子増倍管と呼ぶ。二次電子収率は固体の表面状態に敏感に依存するので,走査形電子顕微鏡で,試料表面の差を識別した像(二次電子像)を見るのにも使われている。…
※「光電子増倍管」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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