改訂新版 世界大百科事典 「シュミット望遠鏡」の意味・わかりやすい解説
シュミット望遠鏡 (シュミットぼうえんきょう)
Schmidt telescope
B.シュミットが考案した光学系をもつ望遠鏡。この光学系を利用した天体写真儀をシュミットカメラSchmidt cameraという。広写野で明るいことが特徴で,広い天域の掃査的な観測,どこに現れるか限定できないすい星や新星の監視,動きの速いすい星・小惑星・人工衛星などの追跡,さらに広がりをもつすい星・星団・星雲・銀河・銀河団などの撮像などをその役割とする。
対物鏡に回転放物面を使う通常の反射望遠鏡では,球面収差と色収差はないが,非対称性のため位置や明るさの測定に障害の多いコマ収差が生ずる。その大きさは,写野中心からの角距離に比例し,F数の2乗に反比例するので,良像の得られる写角は狭く,またあまりF数を小さく(明るく)することができないという欠点がある。シュミットはこれを改良するため,球面反射鏡の曲率中心に,特殊な曲面をもつレンズ(補正板という)を置いた光学系を考えた(図)。一般に球面によって生ずる反射像は,その曲率中心に絞りがあれば,広義の球面収差のうち,コマ収差,非点収差および像のゆがみはなくなり,狭義の球面収差と像の曲りが残るだけになる。この球面収差を除くために,絞りの位置に補正板を置き,像の曲りについては,受像面(写真乾板やフィルムの面)を湾曲させるか,像面平たん化レンズを補入するという対策を講ずる。このような光学系で写真を撮ると,広写野にわたって収差のない像が得られるわけである。シュミット光学系はこのように収差のない写野を広くとれるうえに,F数を小さくできるので,明るさの点でも優れており,望遠鏡のほか,分光器や反射顕微鏡に,また水中カメラやテレビジョン撮影などにも用いられている。
世界のシュミット望遠鏡としては,ドイツのカールシュワルツシルト天文台(補正板口径134cm),アメリカのパロマー天文台(126cm),オーストラリアのサイディング・スプリング天文台にあるイギリスのシュミット望遠鏡(124cm),東京天文台木曾観測所(105cm),アルメニアのビュラカン天文台(100cm),南アメリカのチリにあるヨーロッパ南天天文台(100cm)などがおもなものである。パロマー天文台のシュミット望遠鏡は北天,イギリスとヨーロッパ南天天文台のシュミット望遠鏡は合同で南天の全域掃天写真を完成した。またパロマーおよびイギリスのシュミット望遠鏡は,屈折率の違う2種のガラスをはり合わせた色消し補正板の使用により,シュミット光学系の欠点として残されていた色収差の除去に成功している。
執筆者:高瀬 文志郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報