女護の島、女人(にょにん)国ともいう。洋上はるかにあって女性だけが住んでいるという想像上の島。御伽(おとぎ)草子『御曹子島渡(おんぞうししまわたり)』に、義経(よしつね)が巡った島の一つに女護の島が登場する。この島の女は南風を身体に受けて孕(はら)み、生まれてくる子供はすべて女子であると記している。井原西鶴(さいかく)の『好色一代男』では、主人公の世之介(よのすけ)が女のつかみどりをせんと、好色丸という船を仕立てて友人とともに女護の島目ざして船出する。滝沢馬琴の『椿説弓張月(ちんせつゆみはりづき)』には、伊豆の大島に流された源為朝(ためとも)が島々を巡ることを思い立ち、女護が島に到着する。ここでは、男は鬼が島に、女はこの島に住み、年に一度、南風の吹く日に男が来島して契りを結ぶ。もし、男が生まれれば鬼が島に送り、男女がともに暮らすと海神の祟(たた)りを受けるという。このいわれを聞いた為朝は、自ら島の娘を娶(めと)り、双子をもうけて男女が同棲(どうせい)することの理を説いたと記している。近世には、女護が島を実在の島であるとする風説が根強く、『甲子夜話(かっしやわ)』『八丈筆記(はちじょうひっき)』『鋸屑譚(おがくずばなし)』などは、これを八丈島としている。同島の方言で長女を仁与吾(によこ)とよぶことや、島の船着場に草履(ぞうり)を並べ、自分の置いた草履を履いた来島者を歓迎する風習があったからであるという。江戸期の『仙台間語(かんご)』には、女国は薩州(さっしゅう)(鹿児島県)の甑(こしき)島だとあり、この島が文人たちによってさまざまに解釈された跡がうかがえる。
[野村純一]
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