好酸球性胃腸炎・消化管アレルギー

内科学 第10版の解説

好酸球性胃腸炎・消化管アレルギー(腸疾患)

概念
 好酸球性胃腸炎は,消化管壁への好酸球浸潤を特徴とする原因不明のまれな疾患である.病変は胃,十二指腸,小腸などに好発する.食道や大腸にも病変を認める場合もある.消化管アレルギーは,消化管から吸収された特定の抗原に対し消化管および全身性に過剰な免疫反応が生じる疾患である.
病因
 好酸球性胃腸炎の原因は不明である.末梢血好酸球増加や血中IgE高値を伴うこと,アレルギー性鼻炎,アトピー性皮膚炎,じんま疹などのアレルギー性疾患の合併例が多いことや,特定の食餌摂取により症状が増悪する例のあることより,何らかのアレルギー,免疫機序が病因に関与していると考えられている.ただし,アレルギーの既往のまったくない例に本症を認める場合もある.消化管アレルギーにおいて最も重要なアレルゲンは食餌性であり,食物アレルギーともよばれる.Ⅰ型アレルギー反応により,アレルゲン摂取直後より症状出現することが多い.Ⅳ型アレルギー反応により,数時間から数日で症状出現する場合もある.
臨床症状
 好酸球性胃腸炎では,粘膜層に病変を有すると腹痛下痢を認める.粘膜層に広範囲に病変を認める場合や長期罹患例は貧血,栄養障害,体重減少を認める.また,蛋白漏出性胃腸症や消化管出血を呈することもある.筋層に病変を有すると腸管壁肥厚,硬化,運動異常をきたし,悪心,嘔吐,腹痛,腹部膨満などの消化管狭窄,閉塞症状を起こす.漿膜に病変を有する場合は全層性病変をきたしていることが多い.典型例では好酸球性腹水を認める.消化管アレルギーの場合,消化器症状としては腹痛の頻度が高く,悪心・嘔吐,下痢,腹部膨満などを伴う.全身的な随伴症状としては,じんま疹,湿疹,口唇,口腔内浮腫などの皮膚症状や,咽頭浮腫,喘鳴,鼻漏などの呼吸器症状を伴うこともある.
検査成績
 好酸球性胃腸炎では,約80%の症例で末梢血好酸球増加を認めるが,末梢血好酸球が正常値を示す例もあり,注意を要する.栄養素の吸収障害や蛋白漏出に伴い鉄欠乏性貧血や血中アルブミン値の低下がみられる.消化管アレルギーは,食事に起因した症状がないか詳しく問診することが重要である.食物日誌も有効である.アレルゲンの推定ができれば,血清特異的IgE抗体(RAST)や,プリックテストによる皮膚反応を行う.
X線検査・内視鏡検査
 好酸球性胃腸炎では,X線検査,内視鏡検査像は多彩であり,疾患に特異的なものはない.内視鏡検査でみられる胃病変としては,びらん,発赤,皺襞肥厚など非特異的な変化が多い.結節状隆起や狭窄を認めることもある.小腸造影では,好酸球の壁浸潤や浮腫により壁肥厚,結節形成などの所見を認める.腹部CTでは腸管壁肥厚,腸間膜リンパ節腫脹,腹水などを認める.消化管アレルギーの場合も,X線検査,内視鏡検査像で特異的なものはない.
組織検査
 好酸球性胃腸炎では,病変部の粘膜を内視鏡的に生検する.サンプリングエラーを防ぐため,複数個の生検を行う.生検組織は好酸球を主体とした炎症細胞浸潤と浮腫が特徴的である.血管炎の所見は通常認めない.病変の主座が筋層や漿膜下層にある場合,粘膜生検で好酸球浸潤を認めない例もあり注意を要する.
診断
 典型例ではアレルギー疾患を有する患者が,腹痛,下痢などの消化器症状を訴え,末梢血好酸球増加を認めた場合,好酸球性胃腸炎を疑う.実際にはアレルギー疾患のない例や,末梢血好酸球増加のない例もある.生検で著明な好酸球浸潤を認めることが,診断上重要である.消化管アレルギーの場合,発症誘因となる特定の食餌性抗原の同定が重要である.
鑑別診断
 好酸球性胃腸炎を診断するにあたり,消化管に好酸球浸潤を認める他疾患との鑑別は重要で,寄生虫疾患と鑑別は重要である.病歴の詳細な聴取や便の虫体,虫卵検査を行い,鑑別する.好酸球増加症候群は消化管をはじめ,心臓,肺,皮膚などの複数臓器に好酸球浸潤をきたす.また,Crohn病は腹痛,下痢など好酸球性胃腸症に若干類似した臨床症状をきたすが,画像診断,組織診断で鑑別可能である.また,膠原病のなかでは,アレルギー性肉芽腫性血管炎や結節性多発動脈炎などの血管炎で消化管に好酸球浸潤を認めることがある.臨床症状の違いや,生検で好酸球浸潤が血管周囲に限局していることより鑑別できる.消化管画像上鑑別すべき疾患として,スキルス胃癌,消化管悪性リンパ腫,消化管アミロイドーシス,Henoch-Schönlein紫斑病などがある.消化管アレルギーは通常一過性であり,臨床経過から消化管アレルギーの発症を推測していく.
経過・治療
 好酸球性胃腸炎では,保存的療法で自然軽快例の報告もあるが,ステロイドが著効し多くの場合適応となる.成人ではプレドニン20~40 mgの経口投与により,多くの場合1,2週間で症状寛解する.ステロイド治療後のステロイド減量期の再発例もみられるので,ステロイドの減量は数カ月間かけて行う.5~10 mgの少量維長期持療が必要な場合もある.腸管狭窄や穿孔による外科手術例も報告されている.消化管アレルギーと診断された場合,原因となるアレルゲンを除去した食餌療法を行うことが重要である.症状出現時には,アレルギー症状を改善させるため対症的な治療や抗ヒスタミンH1受容体拮抗薬,抗アレルギー薬などの投与を行う.アナフィラキシーを起こした場合,昇圧剤などを用いた迅速な対応が必要である.[喜多宏人]
■文献
Klein MC, et al: Eosinophilic gastroenteritis. Medicine, 49: 299-319, 1970.
Pratt CA, et al: Food allergy and eosinophilic gastrointestinal disorders: guiding our diagnosis and treatment. Curr Probl Pediatr Adolesc Health Care, 38: 170-188,2009.
Tally NJ, et al: Eosinophilic gastroenteritis: A clinicopathological study of patients with disease of the mucosa, mustle layer, and subserosal diseases. Gut, 31: 54-58, 1990.

出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報

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