家庭医学館 「妊娠貧血」の解説
にんしんひんけつ【妊娠貧血 Anemia of the Pregnancy】
妊娠することによってひきおこされる貧血です。症状は、軽度のものはほとんど無症状ですが、重症になると、めまい、動悸(どうき)、息切れなどがおこり、皮膚や爪が蒼白(そうはく)になります。
極度の貧血の場合は、胎児(たいじ)の発育に悪影響を与え、分娩(ぶんべん)時には母体が危険な状態になります。
[原因]
妊娠によって、母体は血液の量が増えて水血症(すいけつしょう)状態(血液中の水分の割合が異常に増えた状態)となり、そのため血液自体が薄くなります。また、胎児の発育にともなって、母体の血液中の鉄分が胎児に移行するため、母体に貯蔵されていた鉄分が著しく消費され、妊婦は鉄欠乏性貧血(「鉄欠乏性貧血」)になります。
WHO(世界保健機構)の基準では、血色素濃度が1dℓ中11g未満を貧血として取り扱います。
妊娠貧血は、妊婦の定期健診の際に行なわれる初期、中期、後期の3回の血液検査でチェックできます。
[治療]
鉄分の多い食物をとることが第一ですが、明らかな貧血を食事療法だけで改善することはむずかしいものです。医師に相談し、鉄剤を内服するか、または、鉄剤の静脈注射をしてもらうとよいでしょう。