妻鏡(読み)つまかがみ

改訂新版 世界大百科事典 「妻鏡」の意味・わかりやすい解説

妻鏡 (つまかがみ)

鎌倉時代の仏教書。無住著。1巻。13世紀末ごろの成立。鎌倉の武士の家に生まれた無住は,諸宗の教えを学んだ後,30代の半ばに尾張の長母寺に住みついて庶民教化につとめた。本書晩年の無住が,仏教の基本を平易な仮名交り文で説き明かしたもので,民間の布教者無住の,一宗一派にとらわれない立場主張が簡潔に述べられている。引用される説話には《沙石集》《雑談(ぞうたん)集》と共通のものが少なくない。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「妻鏡」の意味・わかりやすい解説

妻鏡
つまかがみ

鎌倉時代後期の仏教説話集。臨済僧道鏡一円 (1226~1312) の編。1巻。一円は無住と号し,大円国師と諡 (おくりな) された人 (→無住一円 ) 。その晩年の編と考えられる。無常観修行業因持戒などの説話を集め,婦人を対象としたために『妻鏡』という。婦人相手の数少いかな書き法語 (仮名法語) として覚済の『迷悟抄』とともに有名。一円にはこのほか,仏教説話集として『沙石集』『聖財集 (しょうざいしゅう) 』『雑談集』などの編著がある。

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