仏教説話集。無住道暁(むじゆうどうぎよう)編。10巻。1304年(嘉元2)に起筆し,翌年に脱稿,その後も加筆された。《沙石集(しやせきしゆう)》《聖財集(しようざいしゆう)》《妻鏡(つまかがみ)》に続く無住最晩年の作で,表記は漢字片仮名交じり文。同法の僧の求めに応じて,編者の日常の法談,雑話をまとめたものという。雑纂的で,広く仏教の事理を説き,証話を引いて仏・法・僧の霊験に言及している。一宗に偏せず,ときに神明,俗事にもわたっていることは,編者の仏教理解の姿勢を反映したもの。先出の《沙石集》などと共通の記事が散見し,また随所に述懐的記事が目だつのも,晩年の作たるにふさわしい。《沙石集》に比べて流布性に乏しく,後代文学への影響は希薄である。
執筆者:今野 達
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鎌倉時代の仏教説話集。10巻。無住(むじゅう)の著。1305年(嘉元3)成立。同じ著者の手になる『沙石集(しゃせきしゅう)』と同様に、説話を比喩(ひゆ)・例証として、読者を正しい仏教理解へと導こうとするもの。硬質の教理解説的な記述が多いが、各論の断片を順不同に並べた趣(おもむき)があり、体系的ではない。他の説話集と類似の説話も少なくないが、著者の見聞に基づく同時代の説話には捨てがたい味わいのあるものも多い。説話集としては珍しく著者自身を話題にするところがあり、説話集編者の内面をのぞかせている。
[小島孝之]
『山田昭全・三木紀人校注『中世の文学3 雑談集』(1973・三弥井書店)』
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