夫より年長の妻。同年の妻を含める場合もある。現在は夫が妻より年長であるのが一般であるが,初婚年齢が今より低かった時代には,一人前の女性として,主婦の能力にたけている姉女房が,それほど珍しくはなかったと考えられている。姉女房を指す民俗語は広く見いだされ,東京のアネニョウボウ,関西のオヒニョウボウ,沖縄のシイザトジ(シイザは年長,トジは主婦の意),東北のヘラマシなどいずれも年長を意味し,姉女房が一般的でなくなる過程においてこうした名称が顕在したと考えられる。現在も姉女房を好む地域があり〈姉女房,福の神〉という類のことわざが各地にある。姉女房がかなり高率に存在する地域として,海女や養蚕・機織の村,奄美諸島の村などがあり,その社会における女性の労働との関係をうかがわせる。姉女房が全婚姻数の2割以上ある場合に,婚姻研究の上で問題になる。その存在の条件は必ずしも明らかではないが,地域内婚的傾向,父系親族集団の欠如にともなう女性の社会的地位の相対的高さ,および女性の労働力への依存に由来する経済的地位の相対的高さなどがあげられている。このことからも夫婦の年齢差,ことに姉女房の傾向は婚姻分析のひとつの指標として注意される。
執筆者:植松 明石
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…配偶者の個人的資質として求められたのは,男女ともによく働く者ということであった。地域によっては年長の妻(姉女房)を好むことがあり,〈姉女房,福の神〉といった類のことわざは各地にある。姉女房の存在は,その社会における女性の労働価値や,男女の相対的地位の問題と関係する。…
※「姉女房」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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