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子どものアレルギー性の病気の特徴と対策 こどものあれるぎーせいのびょうきのとくちょうとたいさく

家庭医学館の解説

こどものあれるぎーせいのびょうきのとくちょうとたいさく【子どものアレルギー性の病気の特徴と対策】

◎異物の侵入とアレルギー反応
◎アレルギー性の病気の種類
◎なぜ、いまアレルギーか
◎アレルギー性の病気の特徴
◎気道のアレルギー反応と感染症
◎アレルギー性の病気への対処
◎食物アレルギー、昆虫アレルギー、薬剤アレルギー

異物の侵入とアレルギー反応
 人のからだには、外界と通じているいくつかの穴があり、そこから、からだの内側に通じることができるようになっています。
 呼吸のための気道(きどう)は、鼻や口にはじまり、咽頭(いんとう)、喉頭(こうとう)、気管、気管支、細気管支(さいきかんし)と続き、はじめは1本の管であったのが、だんだんに枝分かれして、最後は肺胞(はいほう)という小さな空気のつまった袋で終わります。
 消化管は、口から、咽頭、食道、胃、腸、そして肛門(こうもん)で外界に出ます。
 眼球(がんきゅう)は、眼瞼(がんけん)(まぶた)の内側とともに、結膜(けつまく)でおおわれ、穴(眼窩(がんか))におさまっています。
 外界からは、これらの穴の中に、さまざまな物質や、細菌・ウイルスなどの病原体など、人にとって異物であるものが入り込んできます。
 異物を異物と認識し、これを排除しようとする反応は、どんな生物にもあり、自然免疫(しぜんめんえき)と呼ばれます。脊椎動物(せきついどうぶつ)では、さらに、獲得免疫系(かくとくめんえきけい)という、異物を記憶する能力のある免疫のはたらきがあります。
 このような免疫反応は、生物の生存にとって非常に重要なはたらきです。
 しかし、場合によっては、免疫反応が、人にとって不愉快と感じられたり、人の生命をおびやかす場合があります。からだを防衛する免疫本来のはたらきからすれば、おかしな表現ですが、これを病的免疫反応(びょうてきめんえきはんのう)とかアレルギー反応といいます。
 そして、このような反応をおこす異物は、アレルゲンあるいは感作原(かんさげん)と呼ばれます。

◎アレルギー性の病気の種類
 アレルギー反応は、いろいろな臓器でおこり、反応のおこった場所によってさまざまな症状が出ます。ふつうは、アレルゲンが入った場所でアレルギー反応がおこります。したがって空気中にあるアレルゲンでは、呼吸気道でアレルギー疾患をおこしやすく、食物アレルゲンなら、消化器にアレルギー症状が出ます。
 しかし、アレルゲンが血液に入って全身に散布されると、循環器の症状や、全身の皮膚に症状(じんま疹(しん))が出たりします(表「アレルギー疾患の臓器別分類」)。

◎なぜ、いまアレルギーか
 20世紀になって、世界的にアレルギー性の病気が増加したといわれています。屋外、屋内の環境が急速に変化し、人にとって異物と認識されるものが増えたためです。
 屋内では、室内温度の上昇、気密性の向上(換気の減少)、カーペットの敷きつめ、屋内のペット(イヌ、ネコ、ハムスター)、たばこの煙などがアレルゲンとして、気管支ぜんそく患者を増やした因子と考えられます。
 日本では、第二次大戦後全国的にスギの植林をしました。当時「お山の杉の子」という、まるまる坊主のはげ山にスギを植えるという童謡がはやったように、さかんに植林が行なわれました。
 戦後50年がたつと、スギは爛熟期(らんじゅくき)に入って、毎年春になると黄色い煙のような花粉をあたり一面に噴き出すようになりました。そのため、最近では、スギの花粉症(かふんしょう)に悩まされている子ども(年長児に多い)やおとながきわめて多くなっています。
 花粉は、結膜、鼻の粘膜(ねんまく)に付着するので、アレルギー性結膜炎(せいけつまくえん)、アレルギー性鼻炎(せいびえん)をおこします。気管支(きかんし)ぜんそくの子どものなかにも、スギ花粉のアレルギーがある子がいます。
 平安時代に生まれていたら、アレルギーにならなかった人でも、環境の変化のために、現代ではアレルギー性の病気に悩まされることがあるのです。

◎アレルギー性の病気の特徴
 アレルギーでおこる病気のなかで、生命にかかわるのは、激烈な即時型の反応であるアナフィラキシーショック(「アナフィラキシーショック」)と、重症気管支ぜんそく発作(ほっさ)で、そのほかは比較的に軽いものです。
 アレルギー性の病気の特徴は、ともかく「かゆい」ということです。目がかゆい、涙が出るとかゆい、鼻がかゆい、鼻水がついたところがかゆい、皮膚がかゆい、食べた口のまわりがかゆい、粘血便(ねんけつべん)の出たお尻のまわりがかゆい、などです。
 これは、アレルギー反応がおこると出てくるヒスタミンなどの物質によって、神経が刺激されるためです。
 気管支ぜんそくでは、かゆみはありませんが、おこっているアレルギー反応は、もっと深刻です。
 ぜんそくの発作は、アレルゲンが、肥満細胞(ひまんさいぼう)(マスト細胞)という細胞の表面にある抗体(こうたい)(おもにIgE抗体)に結合すると、肥満細胞がたくわえていたヒスタミンなどの生理活性物質(からだにさまざまな変化をおこす物質)が放出され、それによって気道が狭くなることから始まります。
 つづいて、肥満細胞の膜にSRS‐A(コラム「SRS‐Aとは」)という物質ができ、これも気道を狭くします。
 そこに、異物を食べる好酸球(こうさんきゅう)という白血球(はっけっきゅう)がよってきて、遅発型のアレルギー反応(ぜんそく)をおこし、また、気道の内側の組織を破壊します。これは好酸球性炎症と呼ばれています。
 この状態は、発作が終わった後でも、かなり長く続きます。
 この炎症の結果、気道は過敏になって、つぎのぜんそくがおこりやすくなります。慢性的に重症の発作をくり返すと、気道の内側をおおっている基底膜(きていまく)というものが、ぶ厚くなってしまい、もとにもどらなくなります。

◎気道(きどう)のアレルギー反応と感染症(かんせんしょう)
 子どもも、おとなも、大量の空気を吸い込み、はき出しています。そのため、気道の内側の粘膜は、花粉やそのほかのアレルゲンが付着する場であると同時に、かぜの病原ウイルスが感染する場でもあります。
 アレルギー反応は、アレルギー性の炎症をおこします。
 日本では、あまり関心がもたれていませんが、気管支ぜんそくの発端を調べてみると、乳児期の気道の感染から始まっていることが少なくありません。
 一方、病原性のある微生物に感染すると、気道では感染性の炎症反応がおこります。どちらの炎症も、症状は気道でおこっています。部位別にアレルギーと感染症を対応させたものが、表「気道のアレルギー性の病気と感染症」です。
 また、アレルギー性鼻炎と、ウイルスでおこるかぜはまちがえやすく、また重なっておこることもあります。
 かぜをおこすウイルスは、200種類以上あります。マイコプラズマ、クラミジア(オウムなどの鳥から感染するオウム病の病原体)といった微生物がおこす気道の感染症も、ウイルスがおこす感染症と区別がつかないので、ふつう「かぜ」といっています。
 乳幼児は、さまざまなかぜウイルスにつぎつぎに初感染していき、そのうちには、再感染もします。そのため、小児はかぜをひきやすく、その病気のようすは多彩です。
 ウイルス性の気道感染症(きどうかんせんしょう)(はなかぜ、のどかぜなど)は、炎症のおこっている場所によって、鼻炎、鼻咽頭炎(びいんとうえん)、喉頭炎(こうとうえん)(クループ)、気管・気管支炎、肺炎に分けられます。
 細気管支炎(さいきかんしえん)は、乳児の病気で、最初は生後2~6か月くらいにおこり、冬に多く、春までみられます。
 せき、鼻水、発熱など、上気道(じょうきどう)の炎症症状と、息をはくのがむずかしい呼吸困難、呻吟(しんぎん)(呼吸をするときうなる)、多呼吸、陥没呼吸(吸気(きゅうき)のときに鎖骨(さこつ)の上や肋骨(ろっこつ)と肋骨の間がへこむ)、肺気腫(はいきしゅ)(空気をはくのがうまくいかず、肺に空気がたまった状態)など、閉塞性(へいそくせい)の呼吸器症状がみられます。
 細気管支炎の病原は、RSウイルスがほとんどですが、ほかのウイルスでもおこります。また、それぞれが何度でも再感染しますから、この病気にかかった子どもが、その後、何度も発病することもめずらしくありません。
 また、なかなか治らないこともあります。気管支炎がなかなかよくならないと思っていると、せきぜんそくだったということもあります。
 このように感染症は、アレルギー性の病気と密接に関連していて、しばしば互いに悪化させる原因となります。
 日本では、ぜんそく様気管支炎と細気管支炎は区別しているようですが、米国では1つの病気にしています。

◎アレルギー性の病気への対処
 アレルギー性の病気をみる外来では「この子のぜんそくは、からだのなかからきているから、もとからなおしてほしい」あるいは、「アレルギーの原因を精密検査してほしい」という要望をよく聞きます。
 しかし、アレルギー反応は、人が生まれつきもっている反応そのものなので、それだけをからだの外につまみ出すことはできません。
 アレルギーをおこす物質は、人が異物と認識するさまざまな気体、液体、固体です。アレルギー反応は、おこっている場所のからだの反応なので、たとえば、じんま疹をみて、その原因物質を特定することは不可能です。
 これを除こうとするなら、家庭でのきめの細かい観察が役に立ちます。
 病医院では、血液中のハウスダストやダニ、スギ、そのほか特定のアレルゲンに対するIgE抗体(即時型のアレルギー反応をおこす血液中の成分)があるか調べたり、皮膚にアレルゲンを接触させるテスト(パッチテスト)を行ない、その反応をみてアレルゲンをさがしたりします。
 食物などのアレルゲンの場合は、除去試験(除いてみる)、誘発試験(わざわざ食べさせてみる)をする場合もあります。
 以上のようにして、幸運にもアレルゲンが特定できれば、できるかぎりアレルゲンから遠ざかることができる場合もあります。
●アレルギーを受け入れよう
 しかし、もう1つ対処法があります。それは、アレルギーという現象を認めたうえで、アレルギー性の反応を抑え、また、病気の再発を予防することに全力をつくすことです。
 ぜんそくの発作には、気管支を広げる薬(気管支拡張薬(きかんしかくちょうやく))を使いますが、外見では発作がおさまってきても、気管支表面の炎症は依然として続いています。
 この発作と過敏性体質というぜんそくの悪循環を絶ちきるには、ステロイド(副腎皮質(ふくじんひしつ)ホルモン)薬の吸入と、抗アレルギー薬の内服や吸入で対処します。
 発作をできるだけ早い時期に治療して抑え、発作が、見かけ上はしずまった後も、ステロイド薬の吸入と、抗アレルギー薬の内服や吸入を根気よく続けます。
 これができるかどうかが、ぜんそくをコントロールし、支障なく生活できるようになるかどうかの分かれ目になります(図「気管支ぜんそくとその治療」)。
 気管支ぜんそくは、このコントロールしだいです。あなどると致命的な発作がおこることがありますが、コントロールさえできれば、病気がないも同然の生活ができます。

◎食物アレルギー、昆虫アレルギー、薬剤アレルギー
 食物や薬は、一般には、きわめて安全性の高いものです。しかし、食物、昆虫による刺傷、薬剤などは、人にとって異物です。一部の例外的な人は、ほかの人にとってきわめて安全な食物や薬剤に対して、強いアレルギー反応をおこし、死亡することもあります(アナフィラキシーショック)。
 食物アレルギーは、米や小麦粉などの穀物、卵、牛乳、大豆(だいず)などが原因となります。また、昆虫アレルギーは、ユスリカ(蚊(か))やガあるいはハチなどに刺され、毒が体内に入ることでおこります。
 ふつう、食物や服用する薬剤は、口から肛門(こうもん)に通じる管(これはからだのまんなかを通過する管で、管の内部は体外だといえます)を通り、消化、吸収によって体内にとりこまれます。しかし、注射される薬剤や昆虫の毒は、直接からだの中に入ります。
 したがって、同じ物質でも、口から入るとだいじょうぶでも、注射をするとアレルギー反応をおこすことがあります。
 異物に対する反応は、免疫反応(アレルギー反応)です。その反応が病気として現われる場合に、いくつかのタイプがあります。これを、ゲルとクームスという学者が4つの型に分類しました。
 Ⅰ型反応(即時型反応)は、通常30分以内で反応が出ます。
 Ⅱ型反応やⅢ型反応では、ワンステップおいて、結局はⅠ型反応とおなじことがおこります。たとえば、注射の翌日にじんま疹などの反応が出るのは、このメカニズムによります。
 Ⅳ型(遅延型)のアレルギー反応は、48時間くらいたって、はっきりする反応です。
 人はだれでも、結核菌(けっかくきん)に感染すると細胞性免疫(T細胞というリンパ球が記憶する)を獲得します。そこで、結核菌に感染したことがあるかどうかをみるには、精製した結核菌の成分(ツベルクリン液)を腕の皮内(ひない)に注射して、48時間後にその場所にアレルギー反応(腫(は)れや赤み)が出るかどうかをみるという方法がとられています。これが、身近にあるⅣ型アレルギー反応の代表です。
 食物、昆虫、薬剤などの異物に対しても、それがアレルギー反応なら、4つの型のどれでもおこりえます。
 いずれも、アレルギー反応であることが診断されれば、アレルゲンを遠ざけたり、アレルギー反応を弱めるようにする減感作療法(げんかんさりょうほう)、薬物療法などが行なわれます。薬物療法では、抗アレルギー薬、抗ヒスタミン薬、ステロイド薬、気管支拡張薬などが、症状に応じて使われます。

出典 小学館家庭医学館について 情報

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