日本大百科全書(ニッポニカ) 「学校用家具」の意味・わかりやすい解説
学校用家具
がっこうようかぐ
学校で使う家具の総称であり、次のものを含む。(1)普通教室用机・いす、(2)特別教室用実験台・いす、(3)講義室用連結机・いす、(4)収納家具、(5)管理諸室用家具。このうち(5)については事務用家具のJIS(ジス)(日本工業規格)で寸法、性能などが決められているので、文部省(現文部科学省)では1966年から80年の間に(1)~(4)の家具の標準化について検討を進め、それぞれのJISを制定した。1981年(昭和56)にはそれらをまとめた手引書を作成し、よりどころを示した。従来学校で用いる道具については校具と教具があったが、これにより家具が加わることとなった。
学校用家具の特徴は、つねに成長する児童・生徒の体位と、多様な学習形態にあうようにつくられていること、および安全でじょうぶであることである。学校用家具のうち基本になったのは普通教室用の机・いすであり、そのJISは1966年に制定された。このJISの基本的な考え方は、人間工学を取り入れ、まず人間があって、それにあういすを考え、次に人間といすとにあわせて机を考える、というようにして寸法を決めたことである。従来は、まず机といすとを置いて、その間に人間をはめ込んで適否を判断していたのであるから、寸法を決める順序がかわったのである。
その後、学校の教育現場ではパーソナルコンピュータなど多様な教材が日常的に使用されている状況にあり、普通教室のなかで整然と机を並べて行う一斉授業だけでなく、多目的スペースを含む広い教室を利用したティーム・ティーチングやグループ学習、個別学習など、ひとりひとりの個性を生かした多様な学習形態をとることが多くなっている。こうした状況をふまえ、1999年(平成11)「普通教室用机・いす」のJISが改正された。そのねらいは次のようなものであった。
(1)多様な教材に対応できるよう机面寸法を拡大し、また高さ調整が可能ないすを対象とするなど学習形態の変化に対応すること。
(2)机・いすの材料・材質についての詳細な規定は、有害な物質の使用に対する規制のみとし、ぬくもりを感じさせることができる木製机の導入などの妨げにならないようにすること。
次に、JISの改正において変更となったおもな点をあげる。
(1)普通教室以外の多目的スペース等で使用することを想定して、名称を「学校用家具―教室用机・いす」に変更した。
(2)机の甲板(こういた)の寸法は、従来は40×60センチメートルの1種類であったが、大きな寸法のものが追加された。
(3)旧JISでは机・いすの高さは11段階となっていたが、その後につくられたISOの規格では日本のJISが参考にされ、1段階高いものを加えた12段階の偶数号のみを採用して6段階とされた。そこで、今回のJIS改正で、日本もこれまでの11段階からISOの規格とも共通の偶数号のみの6段階に変更したが、高さについては従来通り変化はない。
(4)号数の呼び方は、日本の旧規格では高い方(1号)から低い方(11号)へ号数をつけていたが、ISOの規格にならって、低い方(0号)から高い方(6号)へと呼び方をかえた。
なお、教室用机・いすの寸法・角度等については「JIS S1021」を参照されたい。特別教室用の家具は、理科室、図書室、家庭科教室、図画工作・美術教室、視聴覚教室、音楽教室などの家具について、JISで定められていたが、1999年の改正に伴い廃止された。ただし「講義室用連結机・いす」については寸法の規定が残っている。
[小原二郎・高橋鷹志]