学習障害(読み)がくしゅうしょうがい(英語表記)learning disabilities

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

学習障害
がくしゅうしょうがい
learning disabilities

知能は正常でありながら,聞く,話す,読む,書く,計算するなどの能力のうち特定のものの習得と使用に著しい困難を示す障害LDともいう。認知,概念化,言語,記銘,注意の集中,衝動の抑制などが困難で,落ち着きに欠ける(多動性)ことが多い。失読症は最もよく知られている障害。中枢神経系機能障害によると考えられるが,完全には解明されていない。全児童の 2~4%が学習障害児ともいわれ,1990年に文部省が基礎研究を開始した。学習障害児教育で大きな成果を上げているアメリカ合衆国では,学習障害児専門の教師による個人教育プログラム,学習障害児のための大学設立,総合大学の特別コース設置などさまざまな対策がとられている。症状は乳児期からみられるため,早期に発見し,個別のプログラムで早期治療することが重要である。

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知恵蔵の解説

学習障害

聞く、話す、読む、書く、計算する、推論するなど、特定の能力に問題があり、その背景として脳の機能障害があると推測される。指導は個々の状態に応じた工夫が大切。例えば、聴覚性の情報処理が苦手な子供には、口頭だけでなく文字に書いて視覚的な手がかりを与えて教える。

(田中信市 東京国際大学教授 / 2007年)

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朝日新聞掲載「キーワード」の解説

学習障害

発達障害の一つで、全般的には知的発達に遅れはないが、聞く、話す、読む、書く、計算するなどの能力のうち、特定の分野の習得や使用に困難を抱える。中枢神経系の機能障害が原因とみられ、環境的な要因は直接影響しないとされる。文部科学省が2012年に全国の公立小中学校を対象に調査したところ、通常学級に在籍する子どものうち、学習障害とみられる子どもは4.5%いた。

(2014-03-08 朝日新聞 朝刊 岐阜全県 2地方)

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デジタル大辞泉の解説

がくしゅう‐しょうがい〔ガクシフシヤウガイ〕【学習障害】

字を書く・読む、話す・聞く、計算することなどのどれかの習得、使用に目立った障害があることをいう。ラーニングディスアビリティー。LD(learning disability)。限局性学習症(SLD:specific learning disorder)。
[補説]平成11年(1999)文部省(現文部科学省)が、「学習障害とは、基本的には全般的な知的発達に遅れはないが、聞く、話す、読む、書く、計算する、または推論する能力のうち特定のものの習得と使用に著しい困難を示す様々な状態を指すものである。学習障害は、その原因として、中枢神経系に何らかの機能障害があると推定されるが、視覚障害、聴覚障害、知的障害、情緒障害などの障害や、環境的な要因が直接の原因となるものではない」と定義している。

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百科事典マイペディアの解説

学習障害【がくしゅうしょうがい】

知能は平均またはそれ以上あるが,特定の技能や知識を習得,保持,または一般化できないこと。英語でlearning disorderということから,この障害をもつ子どもをLD児という。学習障害のなかでも,特に読む,書く,聞く,話す,計算する,といった言語または非言語能力の障害を学習能力障害(learning disability)という。成績不振が原因ではないが,はっきりした原因はわかっていない。 学習障害があると,たとえば漢字の〈つくり〉と〈へん〉や,アルファベットのdとbを逆に覚えたりする。算数の簡単な計算をできないケースもある。また,注意散漫,語彙(ごい)が乏しい,記憶できる時間が短い,といった症状もみられる。日本人の小学生の2〜3%がLD児といわれ,男女比では5:1で男児に多い。 学習障害は,1960年代に米国の眼科医が,視力障害もないのに字を読めない子どもがいることに注目したことで発見された。その後,1968年に米国の小児精神神経学関連学会がLDの定義を発表,1970年代に全米で治療・教育が確立された。日本では,文部省が1991年に調査を開始,1995年に〈中枢神経系の機能障害が原因と推定される〉との中間報告を発表した。 理想的な治療法は,個別の学習障害の程度に応じた教育課程で学ぶこと。1993年には,日本でも普通の学校に通いながら特別クラスで指導を受けられる制度が始まり,こうしたクラスに通うLD児は全国で約2万3000人にのぼっている。1999年春には,国内初のLD生徒を対象とした通信制の私立高校・星槎(せいさ)国際高校が,北海道芦別市に開校した。→発達障害

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家庭医学館の解説

がくしゅうしょうがい【学習障害】

 その子どもの年齢や受けてきた教育の程度、全体の知能程度に比べて、「書く」能力あるいは「読む」能力、または算数能力がとびぬけて低いものをいいます。
 感覚器の障害がある場合でも、その能力が、予想されるより強く障害されていることがあります。

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大辞林 第三版の解説

がくしゅうしょうがい【学習障害】

全般的な知能の水準や身体機能に障害は見られないが、読み書き・計算や注意の集中といった能力に欠けるために学習が困難な状態。ラーニングディスアビリティー。 LD 。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

学習障害
がくしゅうしょうがい
learning disorderslearning disabilities

発達障害の一つで、知的発達の遅れは認められず、聞く、話す、読む、書く、計算する、推論するといった特定の能力や技能を習得し使用することに困難を示す状態。LDと略される。学齢期になってから顕在化することが多い。アメリカ精神医学会の「精神疾患の診断と統計の手引き 第5版」(DSM-5)では、「神経発達障害」というカテゴリーのなかに限局性学習症(障害)specific learning disorderとして記載されている。[編集部]

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精選版 日本国語大辞典の解説

がくしゅう‐しょうがい ガクシフシャウガイ【学習障害】

〘名〙 (learning disability の訳語) その子どもの学齢や知能程度に比べて、読み書きや計算の能力、注意力などに欠けるため学習するのが困難な状態。LD。

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最新 心理学事典の解説

がくしゅうしょうがい
学習障害
learning disabilities,learning disorders

LDと略称される。学習障害とは,知的発達に大きな遅れはないのに,学習面で特異なつまずきや習得の困難をもつ者に対して,学際的に使用される用語である。学習障害は幅広い原因,症状,療育を包含する広義の用語であり,1960年代初頭にアメリカで登場し,特別支援サービスを必要とする児童生徒を救済するための一種の教育的「傘概念」として広まっていった。

 学習障害の定義としては,1994年の全米LD合同委員会(NJCLD)の以下のものがよく知られている。

 「学習障害とは,聞く,話す,読む,書く,推理する,あるいは計算する能力の習得と使用に著しい困難を伴う,さまざまな障害を包括する用語である。これらの障害は個人に内在するものであり,中枢神経系の機能障害によるものと推定され,生涯を通じて起こる可能性がある。自己調整行動,社会的認知,社会的相互交渉における諸問題が,学習障害と併存する可能性があるが,それ自体が学習障害を構成するものではない。学習障害は,他の障害の状態(たとえば,感覚障害,精神遅滞,重度の情緒障害),あるいは外的要因(文化の違い,不十分あるいは不適切な指導)によって起こりうるが,学習障害はそれらの状態や影響の直接的な結果ではない」。

 わが国の文部科学省の定義は,NJCLDの定義を基本的に踏襲する以下の1999年の文部省協力者会議・最終報告である。

 「学習障害とは,基本的には全般的な知的発達に遅れはないが,聞く,話す,読む,書く,計算する又は推論する能力のうち特定のものの習得と使用に著しい困難を示す様々な状態を指すものである。学習障害は,その原因として,中枢神経系に何らかの機能障害があると推定されるが,視覚障害,聴覚障害,知的障害,情緒障害などの障害や,環境的な要因が直接の原因となるものではない」。

 これらの定義に対し,1994年の『精神障害の診断と統計の手引き』(DSM-Ⅳ)などにおける学習障害learning disordersに対する医学的定義では,読み,書き,算数の学習困難に限定し,読字障害reading disorder,算数障害mathematics disorder,書字表出障害disorder of written expressionなどに分類される。また,学習障害の中核をなす読字障害は,伝統的な医学用語であるディスレクシアdyslexiaといったことばも使われる。

 イギリスなどでは学習困難を広くlearning difficultiesととらえる傾向があり,その場合には,一般的な学習困難に対して,アメリカにおける学習障害に相当するものを「特異な学習困難」と称する場合もある。近年,アメリカでも学習障害を包括的な傘概念として用いるだけでなく,個々の困難症状を「特異な学習障害specific learning disability(SLD)」ととらえる傾向もあり,学際的な教育,医学概念・用語の統合化が進みつつある。

【概念の歴史的変遷】 学習障害の伝統的な医学用語であるディスレクシア(読字障害)dyslexiaは,1887年ドイツの眼科医ベルリンBerlin,R.によって報告,命名された。その後,イギリスの眼科医ヒンシェルウッドHinshelwood,J.は,疾病や外傷によって脳に損傷を受けた患者の症状とよく似た読みに困難をもつ子どもの症例を報告し,1917年に「語盲word blindness」と名づけた。1930年代になるとアメリカの精神科医オートンOrton,S.は,学習上の問題の背景に情緒障害があるという考えを否定し,大脳半球の優位性の混乱にあると主張した。第1次大戦後,脳炎流行の後遺症としての脳障害研究が盛んになったが,やがてドイツの神経学者で精神科医でもあったシュトラウスStrauss,A.は1947年,多動などの目立つこれら子どもたちの知覚や抽象的な論理思考の問題に着目した論文を書いており,のちにシュトラウス症候群の名称が用いられるようになった。近代における脳損傷や脳障害という呼称の一般化の起点といわれる。

 知覚や学習,行動に類似する特徴や困難を示す子どもたちに対して,中枢神経機能障害とか微細脳機能障害minimal brain dysfunction(MBD)ということばも使われるようになった。1963年,アメリカにおいて学習障害への教育支援の発火点となったのは,学習障害ということばを提唱した教育心理学者カークKirk,S.ら専門家を立てて,こうした子どもたちの理解と支援を求める保護者たちの運動であった。1975年,アメリカでは障害のある児童一人ひとりに個別教育計画individualized educational program(IEP)を作成し教育するという体制が1975年法的に整備され,学習障害も正式な支援の対象とされた。今日,就学児童生徒の10~12%がその措置を受けているが,LDはそのうちの約半数近くを占めており,アメリカの特別支援教育special support educationの主要な対象となっている。

 わが国における学習障害の教育への検討は1990年以降本格化し,学習障害や注意欠陥多動性障害,(高機能)自閉症等を,法制上「発達障害」と位置づけたのは2005年に施行された発達障害者支援法である。文部科学省は2006年,学校教育法における「通級による指導」の対象としてこれらを正式に認め,これまでの身体障害や知的障害などを主として扱ってきた特殊教育から,発達障害をも包含する特別支援教育への転換を図っている。

【学習障害のタイプ】 学習障害のタイプは学習領域によって,①口頭言語,②書字言語,③算数の三つに大別できる。①口頭言語(聞く・話す)の学習困難:授業で先生の話を聞いて理解することが難しく,学習全般に遅れが生じやすい。とくに,聞く力に弱さがある子どもは,話すことにも困難をもちやすく,コミュニケーション能力の弱さとなって対人関係や集団行動の面にも難しさをもつことがある。②書字言語(読む・書く)の学習困難:会話にあまり問題はないが,読みや書きを苦手とする。こうした読みに関する問題は,読みの難しい英語に比べ,日本では少ないという説もある。しかし,ひらがな,カタカナ,そして音と訓による漢字からなる日本語にも特有の困難がある。教室では黒板の字が写せない,ノートが取れない,漢字の習得に困難があるなどのケースがよく見られる。読みに問題があると書きにも連動した問題をもちやすい場合も多い。また,音韻理解や視覚認知機能に問題がないかも調べておく必要がある。③算数(計算・推論)の学習困難:九九が覚えられない,計算が弱い,暗算ができないといった計算関係の弱さが目立つ。計算はできるが立式ができない,文章題が解けない。数や量の理解や関係の理解が苦手,図形や分数,小数,あるいは比例関係がわからないなどいろいろある。計算能力は短期記憶能力と,文章題や論理的思考のつまずきは読み能力やワーキングメモリと関係している場合もある。 →言語障害 →知的障害
〔上野 一彦〕

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