言語障害(読み)げんごしょうがい

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

言語障害
げんごしょうがい

言語を自由に,あるいは正確に用いることができなくなった状態をさし,言語障害には,言語そのものの障害 language disorderと話し言葉の障害 speech disorderが含まれる。最も多いのが聴覚不全に起因する,いわゆる聾唖者の場合で,このほか,幼児期の難聴が言語発達を遅滞させることはよく知られている。発声器官の異常による障害がこれに次ぐ。口腔の障害,声帯の異常,発声や構音に関係する筋肉の麻痺などである。また,脳出血,頭部外傷,脳腫瘍などにより大脳皮質言語野が侵されると,その支配下にある言語機能に異常が生じ,特有の失語症となる。心理的要因からも吃音や失語症様の言語障害が起る。

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百科事典マイペディアの解説

言語障害【げんごしょうがい】

言語にかかわる機能の運動性または感覚性の障害により,言語による意思の疎通が妨げられた状態。声帯の振動による発声音は,喉(こう)頭,咽(いん)頭,口蓋,舌などの筋肉の微妙な運動によっていろいろに変化し(これを構音という),音声として外に発せられる。これを外的言語といい,その障害のおもなものに,喉頭の炎症や,喉頭癌によるかれ声や失声,進行性球麻痺(まひ)などの神経障害による構音不全,発声筋の不随意性けいれんによる吃音などがある。また,外的言語に対して,言語の音声としての響きとその意味を一体として内的言語と呼び,その障害には大脳の損傷による失語症がある。そのほか,特殊なものとして,小脳疾患により言語が極端にゆるやかになったり,爆発的にはやくなったりするものがあり,運動失調によるものと解せられている。
→関連項目言語中枢難聴

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家庭医学館の解説

げんごしょうがい【言語障害 Speech Disorder】

 ことばによるコミュニケーションの障害は、大きく分けて聞こえの障害(聴覚障害)、発音の障害(構音障害)、言語中枢(げんごちゅうすう)の障害(失語症)に分けられます。このうち構音障害と失語症を合わせて言語障害と呼びます。
 構音障害は、器質的構音障害、機能的構音障害、運動障害性構音障害に分類されます。

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世界大百科事典 第2版の解説

げんごしょうがい【言語障害 speech disturbance】

言語障害とは話すこと,言葉を聞いて理解すること,文字を読んで理解すること,文字を書くことなどが障害されることである。話すことの障害は大きく二つに分けることができる。一つは構音障害であり,発音の障害のことで構音器官の障害を原因として起こる。失語症で起こる話しことばの障害はふつうは除くが,近年は構音障害として扱うことがある。またどもりも構音障害に含まれる。話すことのもう一つの障害は失語症であり,話すことだけでなく,言葉を理解すること,文字を読んで理解すること,文字を書くことなどもいっしょに障害されるのが普通である。

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大辞林 第三版の解説

げんごしょうがい【言語障害】

言葉が話せない、理解できない、読めない、書けないなど、様々な原因によって言語の受信と発信が障害された状態の総称。音声障害・構音障害・吃音・言語発達遅滞・失語症など。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

言語障害
げんごしょうがい

ことばを用いた意思の交換(コミュニケーション)に障害のある場合をいう。ことばは、耳から入ってくる言語音を大脳の感覚性言語中枢で認知、把握し、記憶、保持する。その記憶したもののなかから、そのときの状況に応じた言語を選び出し、運動性言語中枢からいろいろの発語器官を支配する運動中枢を経て発語器官が共同的に働き、言語音を表出するわけである。このような経路のどこかに障害がおこると、言語障害となる。このようなことから言語障害を大きく3群に分類する。
(1)耳から入り言語を感受するまでの経路に障害のあるものを感覚性言語障害という。耳の障害による難聴、脳内出血による感覚性言語中枢の障害(感覚性失語症)などがある。
(2)言語の記憶、保持、選択、学習などは人間の精神機能や構造に大きく依存しており、それらの障害による言語障害で、精神病や精神発達遅滞などによるものが含まれる。
(3)運動性言語中枢から発語器官に至るまでの経路に障害のあるものを運動性言語障害という。脳内出血による運動性失語症、麻痺(まひ)性構音障害、口蓋裂(こうがいれつ)や口唇裂などによるものが含まれる。
 治療は原因や症状などに応じて行われるが、小児は教育的治療もあわせて行うことが多い。[河村正三]

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精選版 日本国語大辞典の解説

げんご‐しょうがい ‥シャウガイ【言語障害】

〘名〙 ことばを、社会的に妥当と認められるようなありかたで発音したり、理解したりできなくなる障害の総称。吃音(きつおん)、発音不明確、失語症など。
※マヤと一緒に(1962)〈島尾敏雄〉「幾人かの医師の診察によってマヤの言語障碍の原因がつかみ出せなかったことが」

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最新 心理学事典の解説

げんごしょうがい
言語障害
speech and language disorder

言語による情報伝達と受容の障害。言語障害はさまざまな原因で発生し,しかも,乳幼児から老人に至るすべての年齢層に見られる。

【言語発達の障害】 言語行動の発達が同年齢の他の子どもに比べてかけ離れて遅れている状態を言語発達障害developmental language disorderあるいは言語発達遅滞delayed languageといい,小児の言語障害の中で最も多く見られる。言語発達障害の原因はさまざまであるが,最も多いものは,精神発達遅滞に伴う言語発達の遅れであり,とくに象徴機能の発達の遅れが顕著である。原因は不明であるが,遺伝的要因が考えられる。精神遅滞,難聴,対人関係障害,脳損傷,環境上の問題などがなく,原因を特定できないにもかかわらず,言語発達が突出して遅れている状態を特異的言語発達障害specific developmental language disorderという。また,広汎性発達障害pervasive developmental disorderによっても言語発達が遅れる。広汎性発達障害とくに自閉症の特徴である,人との関係を維持する能力の発達の遅れ,コミュニケーションの質的異常(オウム返しや独特な言い回し),興味や活動の制限(マークや数字に固執する),常同的で反復的な行動といった状態がことばの発達を阻害するためである。広汎性発達障害の原因解明にはいまだほど遠いが,微細な脳損傷の存在を示唆する研究結果が報告されていることは,注目に値する。このほかに,言語が関係する領域,すなわち「読み,書き,理解,計算」の学習が困難な状態としての学習障害learning disorder(LD)の場合もことばの発達が遅れるが,これも原因不明である。さらに,交通事故やケガなどで脳に損傷を受けて,小児失語症になった場合もことばの発達が遅れる。

【構音障害articulation disorder】 言語発達の遅れに次いで多いのは構音障害で,発音障害ともいわれる。構音障害は,大きく,機能性,器質性,運動性の3種類に分かれる。機能性構音障害とは,発声発語器官の形態と機能の異常や中枢性の運動障害がなく,原因が認められないにもかかわらず,構音の誤りが固定化している状態である。器質性構音障害とは,発声発語器官の形態や機能の異常による構音障害で,代表的なものは,唇裂・口蓋裂によるものである。唇裂・口蓋裂とは,胎生早期になんらかの理由(たとえば,母親が妊娠後に服用した薬の影響)で,唇や口蓋の発育が完成しない状態をいう。このような状態で生まれてくると,さまざまな問題が生じるが,いちばん重要なのは話しことばの異常である。喉に力が入った異常な発音や特有の発音の誤り,鼻からの息漏れ,鼻声などが目立ち,全体的に非常に不明瞭なことばになる。運動性構音障害は,子どもの場合主として脳性麻痺によるものである。この場合は,構音障害に加えて発声障害を伴うことが多い。発声障害(音声障害)voice disorderとは,同年齢,同性の子どもと比べて声が高すぎたり,低すぎたり,抑揚が乏しかったり,大きすぎたり,小さすぎたり,声の質が変わっていたりする(しわがれ声,かすれ声など)状態を指す。子どもの場合は,声の乱用が主な原因である。ことばの流ちょう性の障害(音・音節の異常な繰り返し・引き伸ばし,とぎれ,言い直しなど)である吃音stuttering(いわゆる,どもり)は,人類の歴史上古くから知られていることばの障害であるが,いまだに,原因が明らかではない。

【成人の言語障害】 代表的なものは,失語症aphasiaである。失語症とは,大脳の特定領域の損傷により,既得の言語符号の操作(音声・文字言語の表出と理解)機能が障害された状態である。失語症をもたらす主な原因は,脳出血と脳梗塞で,失語症の原因の90%を占める。また,脳腫瘍や脳外傷(交通事故などによる)も失語症を引き起こす。脳血管障害後の失語症の出現率は,15~20%と報告されている。失語症の主な症状は,話すことの障害(喚語困難,錯語,発音の障害,文法の障害,ジャーゴンjargon),聞いて理解することの障害(聴覚的把持/理解障害),書くことの障害(失書,錯書),読むことの障害(失読),計算障害(失計算)である。これらの症状の特徴から,複数のタイプに分類される。主な失語症のタイプは,話しことばの理解は保たれているが発語に困難のある運動失語expressive aphasia(ブローカ失語),逆に発話の流ちょうさは保たれているが言語理解に困難のある感覚失語receptive aphasia(ウェルニッケ失語),ものや観念の名前を言い表わすのが困難な失名詞失語anomia(単純失語,健忘失語),すべての言語機能に困難を起こす全失語total aphasiaである。

 失語症に次ぐ成人の主な言語障害は,ディスアスリアdysarthriaである。ディスアスリアは,発声・発語器官の運動を支配する神経・筋系の損傷による構音や発声の障害である。この障害は,麻痺性構音障害,運動障害性構音障害,運動性構音障害などとよばれることもある。ディスアスリアは,脳血管障害,脳腫瘍,脳外傷,脳の変性疾患(パーキンソン病,舞踏病,脊髄小脳変性症,筋萎縮性側索硬化症など),脳の脱髄疾患(多発性硬化症など),脳の代謝異常(ウィルソン病,アルコール性小脳変性症など)といったさまざまな原因で起こる。

 これらの障害のほかに,吃音(大多数が,子どもの時に生じておとなになっても治っていない場合である),器質性構音障害,および発声障害が成人でも生じる。成人の主な器質性構音障害は,舌癌を摘出したために起こるものである。癌の状態によって,舌の一部,半分,全部あるいは,舌全部と口腔底を切除する場合があり,切除範囲によって構音障害の状態は異なる。成人の発声障害は,声帯の病気,ホルモン分泌の異常,精神的な原因,声の乱用などによって起こる。喉頭付近に腫瘍(喉頭癌)ができた場合,声帯を全摘すると声をまったく出せなくなる。

【言語障害の治療】 言語障害をもつ子どもや成人の機能障害を改善し,コミュニケーション能力を高め,社会参加を促進する働きかけを行なう。言語障害そのものに働きかけて,障害を矯正したり軽減したりする方法には,呼吸訓練,発声訓練,構音訓練,語彙の増加や文法障害の改善訓練,流ちょう性促進訓練(発話の流ちょう性を促進し,吃音による非流ちょう性を軽減する訓練),ことばの聞き取り訓練などが含まれる。一方,コミュニケーション能力を高めたり補ったりする方法には,発話訓練(話す速度や抑揚のつけ方などの話し方の訓練)や実用コミュニケーション訓練(さまざまなコミュニケーション場面・状況下で,適切なコミュニケーション手段を用いる訓練)などがある。また,コミュニケーション補助手段(50音表などの文字盤)の利用,代替器官の活用(食道発声,代償構音など),補助器具・機器(たとえば,人工喉頭,補聴器)の使用などを促すための働きかけを行なう。これらは,拡大・代替コミュニケーションaugmentative and alternative communication(AAC)とよばれるアプローチである。社会参加を促進するための環境調整の方法には,障害をもつ人の家族への働きかけ(接し方の指導,家庭での訓練,障害受容の促進など),保育園,幼稚園,学校などの関係者への働きかけ,職場への働きかけ,地域への働きかけ(たとえば,障害者のグループ活動の支援,共同作業所の設置・運営)などが含まれる。 →学習障害 →言語発達 →広汎性発達障害 →失語症 →知的障害
〔伊藤 元信〕

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