宇宙線の起源(読み)うちゅうせんのきげん(英語表記)origin of cosmic rays

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「宇宙線の起源」の意味・わかりやすい解説

宇宙線の起源
うちゅうせんのきげん
origin of cosmic rays

銀河宇宙線のおもな源は,超新星パルサーなど急激に変動する電磁プラズマ領域である。超新星の爆発により放出された高速プラズマ中には強い磁場と乱流が発生し,荷電粒子は統計加速によって高いエネルギーレベルに達する。その組成は,超新星からの放出ガスの元素存在比をほぼ反映し,大部分陽子で,ヘリウムは約 10分の1であり,そのほか炭素,窒素,酸素のような軽い原子核から,超新星爆発時に発生する超ウラン元素まで含まれる。電子も加速され,強い磁場の中でシンクロトロン放射により可視領域にまで及ぶ電磁波を放出し,また星間空間へ放出されて銀河電子となる。超新星起源説は,宇宙線の元素組成から早川幸男が提唱し,また 1054年のおうし座の超新星爆発の残骸であるかに星雲のシンクロトロン放射からビタリー・ギンツブルグも提唱している。1個の超新星の宇宙線発生のエネルギーは 1050ergに達する。超新星は銀河系内で平均 30年に 1度出現するので,宇宙線のエネルギー発生率は毎秒 1041ergとなる。これは宇宙線が銀河系から逃げる際のエネルギー流出量に見合う大きさである。他方,超新星のあとに残ったパルサーの回転磁場によっても加速される。超高エネルギー(1018eV以上)の宇宙線は一般に超新星では加速不可能と考えられ,また銀河系内に閉じ込めることもできない。その源は銀河系外の電波銀河クエーサーとみなされている。1020eVの宇宙線は宇宙背景放射マイクロ波と衝突してエネルギーを失う。銀河系外空間の宇宙線のエネルギー密度は,銀河系内のエネルギー密度に比べ 1万分の1程度である。エネルギー数億eV以下の準宇宙線の源については推測の域を出ないが,超新星のほか,脈動星や磁変星候補とされている。また太陽はエネルギーの低い太陽宇宙線を放出するので,普通の恒星も同様の働きをすると考えられる。

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