通常の銀河に比べて電波を強く出している銀河をいう。1940年代後半、電波天文学の初期に点状電波源が相次いで100個ほど発見され、1950年代にかけて対応する光学天体の探索(同定)が行われた。その結果、これらのものは銀河系内の超新星の残骸(ざんがい)や電離水素領域などのほか、比較的遠方の銀河であることがわかった。これらは属する星座名にA、Bなど、電波の強い順に名がつけられ、はくちょう座A、おとめ座A、ケンタウルス座Aなどが早くから知られている。その後もさらに弱い電波源の探査と光学同定が続けられている。
光学的な分類では、大部分が楕円(だえん)銀河で、そのほか中心領域がとくに明るい銀河、特異な型をした銀河などがある。通常の銀河との境界はあまり明確ではなく、電波の放射エネルギーが毎秒1040エルグを目安にしている。
電波の空間的な強度分布は光学的な形とはほとんど関連なく、はくちょう座Aのように銀河から双方向に亜鈴(あれい)型に数百万光年広がった双対型構造が典型的な例である。銀河団に属する銀河では、双対型構造が吹き流され、曲がっている型のものが多い。
電波の放射機構は、銀河の中心核から吹き出た高エネルギー電子が磁場に巻き付いた場合に出すシンクロトロン放射である。さらに放射エネルギーが強く、遠方にある準星(クエーサー)などとの関連で、宇宙の構造や、銀河の形成過程、活動性などについて解明の手掛りを与えるものと考えられている。また、1970年代の中ごろには、これら銀河の中心核には巨大ブラック・ホールが存在すると考えられるようになってきた。
[井上 允]
『赤羽賢司・海部宣男・田原博人著『宇宙電波天文学』(1988・共立出版)』▽『祖父江義明著『電波でみる銀河と宇宙』(1988・共立出版)』▽『小尾信彌著『銀河の科学』(1989・日本放送出版協会)』▽『家正則著『銀河が語る宇宙の進化』(1992・培風館)』▽『ハインツ・R・パージェル著、黒星瑩一訳『星から銀河へ――ハーシェルの庭』(1993・地人書館)』▽『谷口義明著『不思議な銀河の物語――銀河は例外をつくらない』(2000・裳華房)』▽『前田耕一郎著『電波の宇宙』(2002・コロナ社)』▽『藤井旭著『宇宙探検――そこが知りたい!宇宙の秘密』(2002・偕成社)』
強い電波を放出する銀河。1954年に電波源はくちょう座Aの場所に特異な形状とスペクトルをもった銀河が発見され,これが電波銀河発見の最初である。ふつうの銀河は,中心核の電波は比較的弱く,渦巻の腕に沿ったシンクロトロン放射が強いが,電波銀河では,(1)銀河の外側にあって,ローブと呼ばれるときには数百万光年のところまで広がった電波源,(2)中心核とローブとを結ぶ部分にあるジェットと呼ばれる電波源,(3)中心核の電波の三つが強い。中心核に発生した高エネルギー現象のため,電子とプラズマが加速されジェットとなって銀河間空間にとび出していって,銀河間空間の磁場またはガスにぶつかって止められたのがローブであると考えられている。おとめ座A,ペルセウス座A,ケンタウルス座Aなどが強い電波銀河として知られている。
超長基線干渉計の観測では,中心核からジェットに向けて電波源が動いていく,つまり高エネルギープラズマがとび出していくことが見られており,その速度もときには見かけ上光速の何倍にもなるいわゆる超光速現象や,電波銀河の空間密度がわれわれの近傍と比べて100億光年ほど離れた遠方のほうが高いことなど,いろいろ不思議な現象が見つかっている。また,中心核の数光年という狭い領域からこのような高エネルギーのジェットが発生するためには,星の爆発などではまかなうことができない大量のエネルギーを必要とする。また,多くの電波銀河はX線も放出している。
このようなことから,電波銀河の中心には,太陽質量の数百万倍のブラックホールがあって,それに吸い込まれるガスがぶつかり合って高温プラズマが発生し,それによってジェットができると考えられている。ブラックホールを考えたのは,これだけの量のエネルギーをこれだけ狭い場所で発生させるためには原子核エネルギーでは不足で,どうしても重力エネルギーを必要とするからである。しかし,ブラックホールのエネルギーで足りるとしても,それがジェットとして超高速で放出するからくりについてはわかっていない。クエーサーは電波望遠鏡で観測する限り全体として電波銀河とあまり違わない。ただクエーサーのほうが一般的には電波が強い。また,われわれの銀河系やアンドロメダ銀河の中心核にも強い電波源があるが,これと電波銀河との関係はわかっていない。強い電波を放出する電波銀河がどのような機構か,またどのように進化していくか,一つ一つの銀河の進化とどのように関連しているかも今後の課題である。
執筆者:森本 雅樹
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[特殊な銀河]
銀河の中には,強いX線,紫外線,赤外線,電波などの大量の高エネルギー粒子や,高温プラズマに起因すると思われる放射線を放っているものがある。電波銀河,セイファート銀河,マルカリアン銀河,クエーサー,BL Lac天体などと呼ばれるものがそれである。可視域では一般に青紫色光の過剰を示し,活動的な銀河中心核,あるいは活動的な中心部分をもっているものが多い。…
…銀河を外から観察する場合には,核自体は銀河中央部の濃密な恒星系に埋もれているので,その恒星系内の質量分布や空間運動の異常から,核の存在を推定できることもあるが,多くの場合は,爆発的な活動現象に伴う高エネルギー放射や,異常励起による輝線スペクトルの検出によって認められる。大型楕円銀河のうち電波銀河として知られるもののほとんどは,活動的な中心核をもっていて,形態的にも,中心部分からの爆発の痕跡や高エネルギー粒子の噴出しと思われる青いジェットの認められるものが多い。クエーサーやBL Lac天体などの高エネルギー放射を放つ高光度の準点状銀河も,中心核の極度に発達している大型楕円銀河の一種ではないかと思われる。…
※「電波銀河」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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