宇宙を経由して行う無線通信。人工衛星が実現するとともに、宇宙を経由して行う宇宙通信という通信の分野が大きく開けてきた。これは大別して次の三つに分類される。(1)宇宙(宇宙局という)と地上(地球局という)との間の通信。(2)宇宙局と宇宙局との間の相互通信。(3)宇宙局を中継点とした地球上の2局間の通信。
ロケットを打ち上げるときの地上からの誘導制御指令送信、人工衛星からの各種の通信や写真電送などは(1)の分類に入るし、人工衛星どうしの連絡などは(2)に入る。(3)に入る宇宙局は一般に通信衛星とよばれ、目覚ましい発達を続けている。宇宙通信には、指向性が強く、小電力でも遠距離に到達できるように、一般にギガヘルツ以上のマイクロ波が用いられる。周波数が高いために、通信回線が増大され、またテレビの中継にも役だつ。なお、宇宙局から出る電波の出力はどうしても小さくなるため、受信するのに感度の高いアンテナが必要であると同時に、信号音を雑音から区別する技術を向上させなければならない。電波のほかに、レーザーを使う研究も進んでおり、その将来性が期待される。
なお通信衛星の軌道は、いわゆる静止軌道(高度約3万6000キロメートルの赤道上)が圧倒的に多く用いられているが、静止軌道上の各衛星の間隔や使用周波数との相互干渉の問題などによって衛星の数が制限されている。このため軌道傾斜角0度の赤道上ではなく、傾斜角数十度の長楕円(ちょうだえん)軌道上に複数の衛星を打ち上げて、いわゆる8の字を描く軌道を交替に移動して、静止衛星と同様の機能を果たす準天頂衛星Quasi-zenith satelliteの研究開発が2000年ごろより開始され、その第1号「みちびき」は2010年(平成22)9月に、H-ⅡAロケット18号機で打ち上げられた。カーナビゲーション装置などで幅広く利用されている全地球測位システム(GPS)の精度向上が狙いである。日本上空の準天頂衛星を利用することにより、ビルの谷間や山の陰など従来の静止衛星では到達不可能であった所にも電波が届くようになり、その応用が今後大いに期待されている。
[新羅一郎・久保園晃]
『郵政省通信政策局編『有人宇宙活動を支える情報通信ネットワーク――宇宙インフラストラクチャの構築に向けて』(1991・日刊工業新聞社)』▽『宇宙通信政策懇談会編『スペーステレコム21――宇宙通信政策懇談会報告書』(1991・ぎょうせい)』▽『高野忠・小川明・坂庭好一・小林英雄・外山昇他著『宇宙通信および衛星放送』(2001・コロナ社)』
人工衛星,月,惑星などの宇宙飛行体間の通信,宇宙飛行体と地球上との通信および宇宙飛行体を介した地球上の遠隔地間の通信の総称。このうち人工衛星を介した地球上の遠隔地点間の通信は衛星通信と呼ばれる。衛星通信は,電話,TVの国際間中継や,海上の船舶との海事衛星通信などに広く用いられており,衛星放送も実用段階に入った。人工衛星と地球との通信は,気象衛星や資源探査衛星のような地球探査衛星からの観測データの伝送,人工衛星の状態検査や指令を行うためのテレメトリー・コマンド通信に用いられている。また,マリナー,バイキング,ボエジャーのような惑星探査機との交信は,人類が行ったもっとも長距離の通信であり,背景雑音にうずもれた微弱な受信信号を見つけ出して捕捉(ほそく)する位相同期受信機や,受信した情報の誤りを訂正する誤り訂正符号を用いることにより特別に感度の高い受信方法を実現している。宇宙飛行体間の通信はアポロ計画の月着陸船と司令船との交信に見られる程度で例が少ないが,今後,地球探査衛星やスペースシャトルのオービターとの通信に多用されよう。これを行うデータ中継システムは,見えない時間が多い低(中)高度衛星と地球上との通信を静止衛星を介して行うもので,通信可能な時間が大幅に増える。宇宙通信には,通常大気減衰が少なく,かつ電離層をつき抜ける1GHzから30GHzの周波数が用いられている。
執筆者:村谷 拓郎
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