宇治大納言物語(読み)ウジダイナゴンモノガタリ

デジタル大辞泉 「宇治大納言物語」の意味・読み・例文・類語

うじだいなごんものがたり〔うぢダイナゴンものがたり〕【宇治大納言物語】

平安後期の説話集宇治大納言源隆国編。11世紀後半の成立現存していないが、今昔物語と深い関連があったと推定される。
宇治拾遺物語と混同して呼んだ名。

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精選版 日本国語大辞典 「宇治大納言物語」の意味・読み・例文・類語

うじだいなごんものがたりうぢダイナゴンものがたり【宇治大納言物語】

  1. [ 一 ] 宇治大納言源隆国編著の説話集。一一世紀後半の成立。現存しないが、「今昔物語集」「古本説話集」「宇治拾遺物語」などに影響をもたらしたと推定される。
  2. [ 二 ] 「宇治拾遺物語」を[ 一 ]と混同して呼んだ称。
  3. [ 三 ]世継物語[ 三 ]」の異本の称。
  4. [ 四 ] 鎌倉時代成立の擬古物語「苔の衣」の一部を独立させて称したもの。

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百科事典マイペディア 「宇治大納言物語」の意味・わかりやすい解説

宇治大納言物語【うじだいなごんものがたり】

平安時代の説話集。源隆国編纂(へんさん)したとされる。早く散逸したと考えられ,内容の詳細は定かではない。11世紀中ごろの成立か。鎌倉時代成立の《宇治拾遺物語》の序文記述などによれば,インド中国・日本に伝わる種々の説話を雑纂形式に集成した説話集と推測される。後代説話文学への影響も著しく,《今昔物語集》《古本説話集》《宇治拾遺物語》などの有力な源泉となったと考えられている。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「宇治大納言物語」の意味・わかりやすい解説

宇治大納言物語
うじだいなごんものがたり

(1) 平安時代中期,宇治大納言と称された源隆国の編集した説話集。鎌倉,室町時代の諸書に内容の一部分が散見するのみで,現在散逸して伝わらない。『今昔物語集』の作者を隆国とする考え方から,その別名といわれたこともある。 (2) 『世継物語』 (一名『小世継』) という現存の説話集の別名。成立年未詳。 (3) 鎌倉時代に作られた擬古物語『苔の衣』巻三が独立した書物として伝えられたときの書名主人公の大納言が無常を感じ出家する話の一部である。

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世界大百科事典(旧版)内の宇治大納言物語の言及

【宇治拾遺物語】より

…鎌倉時代初期の成立で,1220年(承久2)前後と見る説が有力。書名の由来は諸説あって一定しないが,古来宇治大納言隆国(源隆国)編,またはそれに取捨を加えたものとされてきたことからの称らしく,中世には《宇治大納言物語》と異称されたこともあった。197話の長短編説話を集録し,ひらがな本位の和文体で記した典型的な読物的説話集。…

【古本説話集】より

…《宇治拾遺物語》《世継(よつぎ)物語》所収説話と細部まで一致をみせる説話を含み,また,《今昔物語集》所収説話と一致をみせる説話をも含んでいる。これは,これらの書物が直接,間接に源隆国《宇治大納言物語》を編纂資料としていると考えることによって説明される。現在ではすでに散逸してしまった《宇治大納言物語》の実体を明らかにするうえでも,重要な資料である。…

【今昔物語集】より

…標題のみを残す19話,標題と本文の一部を残す説話を含めて,1059話を収録。
[編者と成立]
 《宇治拾遺物語》の序に,宇治大納言源隆国(みなもとのたかくに)が納涼のために宇治平等院の南泉房(なんせんぼう)に籠り,往来の諸人の昔物語を記録したものが《宇治大納言物語》であり,増補されて世に行われている,とある。従来は,この《宇治大納言物語》が本書と同一視され,本書は隆国の編とされていたが,収録説話に隆国没後の記事を含むこと,隆国の編としては説明の困難な誤りを含むことなどが指摘され,隆国編纂説はそのままでは受け入れられなくなった。…

【是害房絵詞】より

…鎌倉末期の絵巻物。現在までに十数本が知られているが,最古の京都曼殊院蔵上下2巻本(1354書写か)の奥書によると,原本は1308年(延慶1)冬,磯長寺(大阪府南河内郡磯長村にあった寺か)において,《宇治大納言物語》に取材し,童幼教化のために作成されたものという。ただし《宇治大納言物語》は散逸して明確ではないが,近似の説話は《今昔物語集》巻二十の〈震旦ノ天狗智羅永寿,此朝ニ渡レル語〉である。…

【説話文学】より

…10世紀初頭の三善清行(きよつら)撰の《善家秘記(ぜんけひき)》,紀長谷雄(きのはせお)撰の《紀家怪異実録(きけかいいじつろく)》などが先駆的作品で,いずれも六朝・唐代の類書に触発された漢文表記の本朝怪異説話集である。この系譜につながる仮名文表記の画期的作品が,11世紀後半に成立した源隆国(たかくに)撰の《宇治大納言物語》である。本朝世俗説話を主体に広範な説話を集録し,後代作品にも大きな影響を与えたものらしいが,現存しない。…

【源隆国】より

…隆俊ら諸子も立身したが,鳥羽僧正覚猷(かくゆう)は特に有名。《宇治拾遺物語》序に《宇治大納言物語》(原本不詳)の作者と伝える。《今昔物語集》の撰者ともいわれるが不明。…

※「宇治大納言物語」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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