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擬古物語 ぎこものがたり

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

擬古物語
ぎこものがたり

平安時代の物語を模倣してつくった物語の意で,鎌倉時代の物語をさす。『源氏物語』を頂点とする物語文学は,鎌倉時代に入っても多数つくられたが,傑作に乏しく,衰退して南北朝時代にはほとんど姿を消した。この間の百余編のうち現存するのは,『有明の別れ』『住吉物語』『松浦宮物語 (まつらのみやものがたり) 』『苔の衣』『石清水物語』『海人 (あま) の苅藻』『わが身にたどる』『小夜衣』『いはでしのぶ』など 10編余で,大半は散逸。これらに共通するのは (1) 前代の物語,特に『源氏物語』の模倣,影響が著しい,(2) 構成力に乏しく,内容が分裂的,(3) 色調が暗く,仏教の影響が強く,悲恋遁世談が多い,(4) 平安時代の物語に追随しながら,怪奇な趣向,露骨な描写が出て「あわれ」とは違った要素をもつ,などである。なお江戸時代に擬古文で記した物語をも擬古物語と呼ぶことがある。

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百科事典マイペディアの解説

擬古物語【ぎこものがたり】

(1)おもに《源氏物語》の文体を模倣した中世の物語。《松浦宮物語》《石清水物語》など。(2)江戸時代小説の一種。雅文小説。主として国学者が雅文体を用いて記した読本(よみほん)。
→関連項目物語文学

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大辞林 第三版の解説

ぎこものがたり【擬古物語】

主として鎌倉時代、「源氏物語」「狭衣物語」などの平安時代の作り物語を模倣して作られた物語。ほとんどが貴族の男女を主人公とした宮廷物語であるが、時代を反映して無常観が濃く、悲恋遁世の話が多い。「あまのかるも」「松浦宮まつらのみや物語」「苔の衣」「風につれなき」「わが身にたどる姫君」など。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

擬古物語
ぎこものがたり

13世紀から17世紀まで、鎌倉・室町時代に成立した作り物語をさす。平安時代の作り物語を本格的物語とよぶのに対し、その本格的物語を文章・内容ともに拠(よ)るべき古典としているので、擬古(古典を模倣する)物語という。中世物語、鎌倉時代物語などともよばれる。現存するのは『石清水物語(いわしみずものがたり)』『わが身にたどる姫君』など12、13編であるが、13世紀末成立の『風葉(ふうよう)和歌集』に多数の物語名が記されていて、部分的に内容のわかるものがある。それらは写本で伝えられているうちに、散逸したものと考えられる。擬古物語には、武士中心の社会になって政治的、経済的に無力になった貴族階層の、自分たちの全盛の時代を回想しあこがれる精神が基盤にあるので、どうしても独創性に乏しい。また、平安時代のことばを模倣しながらも鎌倉時代のことばも混じってしまう、いわゆる擬古文で書かれている。そこで、文章・内容ともに評価が低いが、『石清水物語』には武士を無視できぬ現実の反映があり、『わが身にたどる姫君』には宮廷秘話としての題材に新しみがあるなど、細かくみるとそれなりの創意工夫がある。『風葉和歌集』以後の成立である『木幡(こはた)の時雨(しぐれ)』『小夜衣(さよごろも)』は継子(ままこ)いじめ、『松蔭中納言物語(まつかげちゅうなごんものがたり)』は因果応報の思想を軸として、民間説話の要素を盛る。その文章・内容が新興階層の好みにあわなくなったとき、擬古物語は消えて御伽草子(おとぎぞうし)の世界が登場する。[桑原博史]
『桑原博史著『中世物語の基礎的研究』(1969・風間書房)』

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