13世紀から17世紀まで、鎌倉・室町時代に成立した作り物語をさす。平安時代の作り物語を本格的物語とよぶのに対し、その本格的物語を文章・内容ともに拠(よ)るべき古典としているので、擬古(古典を模倣する)物語という。中世物語、鎌倉時代物語などともよばれる。現存するのは『石清水物語(いわしみずものがたり)』『わが身にたどる姫君』など12、13編であるが、13世紀末成立の『風葉(ふうよう)和歌集』に多数の物語名が記されていて、部分的に内容のわかるものがある。それらは写本で伝えられているうちに、散逸したものと考えられる。擬古物語には、武士中心の社会になって政治的、経済的に無力になった貴族階層の、自分たちの全盛の時代を回想しあこがれる精神が基盤にあるので、どうしても独創性に乏しい。また、平安時代のことばを模倣しながらも鎌倉時代のことばも混じってしまう、いわゆる擬古文で書かれている。そこで、文章・内容ともに評価が低いが、『石清水物語』には武士を無視できぬ現実の反映があり、『わが身にたどる姫君』には宮廷秘話としての題材に新しみがあるなど、細かくみるとそれなりの創意工夫がある。『風葉和歌集』以後の成立である『木幡(こはた)の時雨(しぐれ)』『小夜衣(さよごろも)』は継子(ままこ)いじめ、『松蔭中納言物語(まつかげちゅうなごんものがたり)』は因果応報の思想を軸として、民間説話の要素を盛る。その文章・内容が新興階層の好みにあわなくなったとき、擬古物語は消えて御伽草子(おとぎぞうし)の世界が登場する。
[桑原博史]
『桑原博史著『中世物語の基礎的研究』(1969・風間書房)』
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