宇治橋姫(読み)うじのはしひめ

精選版 日本国語大辞典 「宇治橋姫」の意味・読み・例文・類語

うじ‐の‐はしひめうぢ‥【宇治橋姫】

  1. ( 「うじのはしびめ」とも )
  2. [ 一 ] 京都府宇治市、宇治橋のほとりにある橋姫神社の祭神に付会されている伝説上の女性。古来和歌の世界で、橋姫伝説の流布に従い、巫女(みこ)遊女愛人と広い意味をこめて歌われている。
    1. [初出の実例]「さむしろに衣かたしきこよひもや我を待つらん宇治の橋姫〈よみ人しらず〉」(出典:古今和歌集(905‐914)恋四・六八九)
  3. [ 二 ] [ 一 ]の所伝が中世にはいって発展し、嵯峨天皇の代に、嫉妬のために宇治川に身を沈め、鬼形(きぎょう)となって京中の人に害を与えた女性。「剣巻」(「平家物語」「太平記」所収)、御伽草子「橋姫物語」その他に伝えられている。
    1. [初出の実例]「その頃、うぢのはしひめの、あれて人をとると」(出典:曾我物語(南北朝頃)八)

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朝日日本歴史人物事典 「宇治橋姫」の解説

宇治橋姫

『古今為家抄』などの歌学書,『平家物語』や謡曲の「鉄輪」に登場する橋姫伝説の主人公。嫉妬に狂い,自分を捨てた男に恨みを晴らそうとして,生きながら鬼となる。屋代本『平家物語』剣の巻では,貴船神社(京都市左京区)に丑の刻参りをした女は,託宣にしたがって頭に鉄輪をのせ,宇治川に浸って鬼に変身するという。この伝説は男支配の社会に生きた女たちの心をとらえ,丑の時刻(午前2時ごろ)に神仏に参拝する「丑の刻参り」は近世以降習俗として定着し,盛んに行われた。宇治橋のほとりには宇治橋姫神社があり,現在でも多くの人々の信仰を集めている。<参考文献>網野善彦,大西広,佐竹昭広『天の橋 地の橋』

(小松和彦)

出典 朝日日本歴史人物事典:(株)朝日新聞出版朝日日本歴史人物事典について 情報

デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「宇治橋姫」の解説

宇治橋姫 うじのはしひめ

民間に伝承された神。
山城(京都府)の宇治橋をまもり,橋姫神社にまつられる。嫉妬(しっと)ぶかく,嫁入りのとき橋をわたってはならないといわれた。「古今和歌集」でうたわれたのが最初。のち藤原清輔(きよすけ)の「奥儀抄(おうぎしょう)」では嫉妬ぶかい女性,屋代本「平家物語」剣(つるぎの)巻では鬼女としてつたえられている。

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