安宅丸(読み)アタケマル

デジタル大辞泉 「安宅丸」の意味・読み・例文・類語

あたけ‐まる【安宅丸】

江戸時代、3代将軍徳川家光のときにつくられた大型軍船実用に適さず半世紀で解体された。

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精選版 日本国語大辞典 「安宅丸」の意味・読み・例文・類語

あたけ‐まる【安宅丸】

  1. [ 1 ] 寛永一二年(一六三五)将軍家光が造らせた大型軍船。類を絶した巨艦で、長さ一五六・五尺(約四七メートル)、幅五三・六尺(約一六メートル)、深さ一一尺(約三・三メートル)、二人掛りの大櫓百丁立、水夫二〇〇人、推定排水量一五〇〇トン。攻撃力、防御力もまた冠絶していた。船体は日本式と西洋式の折衷構造で、周囲を銅板で包み、矢倉は純日本式の二層造り、内部に大砲鉄砲を備える。船首の龍頭や三重の天守などは内外とも華麗を極め、日光の東照宮と比肩されたが、余りにも巨大なため、実用に適さず、維持費に窮した幕府によって天和二年(一六八二)解体された。大安宅丸。
    1. [初出の実例]「新造の安宅丸御覧のため、品川にならせらる」(出典:徳川実紀‐大猷院殿御実紀・寛永一二年(1635)六月二日)
    2. 安宅丸<b>[ 一 ]</b>
      安宅丸[ 一 ]
  2. [ 2 ] 〘 名詞 〙
    1. あたけぶね(安宅船)」の別称。
    2. ( [ 一 ]は江戸に回漕して深川御船蔵に入れておかれたが、夜な夜な「伊豆へ行こう伊豆へ行こう」とうなったという俗説に基づく ) 無理を言うこと。また、その人。
      1. [初出の実例]「いきいきと・伊豆へ行ふとあたけ丸」(出典:雑俳・桜がり(1730))
    3. ( [ 一 ]は取りこわされ焼却されたので ) やくこと。嫉妬すること。
      1. [初出の実例]「御亭主が猪牙で女房安宅丸」(出典:雑俳・柳多留‐五四(1811))

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「安宅丸」の意味・わかりやすい解説

安宅丸
あたけまる

寛永8 (1631) 年,江戸幕府が江戸防衛用として計画し,同 12年に完成した巨大な軍船。建造地は伊豆 (静岡県) の伊東。船体は長さ 38mの竜骨に 45本の肋骨を配して外板を張る西洋式の構造であるが,船首尾などは日本式構造が混っている。上部の総矢倉は2層で全長 43mの純日本式,船体とともに全体を銅板で包んで防火力を強化し,その船首寄りに2層の天守を設けている。また総矢倉内には大筒5,小筒 30,鉄砲 80を備えているので,防御力,攻撃力とも当時の軍船とは段違いであった。推定排水量は約 1800tで,これは当時ヨーロッパ最大最強の軍船として恐れられていたイギリスの『ソブリン・オブ・ザ・シー』に匹敵し,日本では最大級の軍船の 30倍という桁はずれの大きさだったが,この巨体を推進する櫓は2人漕ぎの 100丁立てのため,行動は敏速を欠き,艦隊戦闘よりも江戸防衛用の移動要塞的性格が強かった。なお家光の好みからか,船首の竜頭をはじめ天守や船尾まわりに豪華な装飾を施したので,その絢爛さは日光の東照宮に比肩された。しかし江戸幕府も安定した天和2 (82) 年,無用の長物として解体された。

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百科事典マイペディア 「安宅丸」の意味・わかりやすい解説

安宅丸【あたけまる】

江戸時代三大船の一つ。1631年大御所徳川秀忠向井将監に建造を命じ,1634年に完成を見た。室町後期〜江戸初期に造られた,いわゆる安宅船(あたけぶね)型の軍船で,家光は天下丸と命名したが俗に安宅丸とよばれた。全長30尋(ひろ)(約57m),外玄に銅板を張り,櫓(ろ)100挺(ちょう)をもつ巨船だったというが,設計ミスからか,操縦ままならず,1682年解体。

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歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典 「安宅丸」の解説

安宅丸
〔長唄, 常磐津〕
あたかまる

歌舞伎・浄瑠璃の外題。
初演
明治33.9(東京・明治座)

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世界大百科事典(旧版)内の安宅丸の言及

【日の丸】より

…江戸時代に日の丸を重用したのは幕府である。将軍の御座船安宅丸(あたけまる)と天地丸は多数の日の丸の幟(のぼり)で装飾されていたし,1673年(延宝元)に年貢米廻漕のために雇った廻船に立てることを義務づけて以来,日の丸の幟(日の丸船印・朱の丸船印と呼ぶ)が幕府船の標識として常用された。また朱の丸の帆印は1799年(寛政11)から始まる幕府の第1次蝦夷地直轄時の赤船(あかふね)で使われている。…

【安宅船】より

…こうして日本木船史上最強の軍船安宅船は,17世紀初頭忽然(こつぜん)と姿を消す。なお,家光の世に成った安宅丸は,洋式船や中国式船の手法を加味した独特の巨船で,安宅船に属するとはいえない。ちなみに〈あたける〉とは〈暴れ回る〉の意であるとか。…

【和船】より

…また豊臣秀吉の朝鮮出兵のために集めた700余艘の水軍船隊の旗艦〈日本丸〉などは,全長34~35m,船体の深さ約3m,天守閣のようなやぐらが2基もそびえ,櫓の数100挺(ちよう),推定排水量300トンに及ぶ堂々の巨船で,これらはとくに大安宅と呼ばれた。(3)安宅丸 1631年(寛永8),すでに隠居して大御所となっていた徳川秀忠が,〈江戸城守護の海上の砦(とりで)となさん〉と,御船手奉行向井将監に命じ,伊豆の伊東で4年の歳月を費やして,秀忠没後の35年(寛永12)に成ったもの。総長156.5尺(約48m),幅53.6尺(約16.3m),大櫓(たいろ)100挺,推定排水量1800トン,乗組員200人という,和船史はもとより,世界の木造船史にも特筆されるべき巨船であった。…

※「安宅丸」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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