改訂新版 世界大百科事典 「宋元銭」の意味・わかりやすい解説
宋元銭 (そうげんせん)
中国の宋(960-1279),元(1260-1368)の両朝で鋳造された銅銭。とくに宋銭は日本で中世に流通した銭貨の主体であった。
10世紀中期で皇朝十二銭の鋳造が中止され准布,准絹,准米が通貨の用をなしたが,12世紀中期から宋銭を主とする中国銭の輸入がはじまり,13世紀には著増した。朝廷では一時は中国銭の通用を禁止したが,経済の発達は銭貨流通を促進することとなった。すなわち武家政治の時代となって,各地に市場が成立発達して銭貨による取引が盛んとなり,税の代銭納や田畑など不動産の売買にも銭貨使用が多くなり,その流通が拡大普及してきた。中国歴朝の中で,鋳銭のもっとも盛大であったのは北宋時代で,なかんずく神宗の代を最盛とし,銅・鉄銭の鋳造は膨大な額で,その末年10ヵ年ほどは銅銭のみで鋳造高毎年500万貫文にも及んだという。南宋になると外国貿易は財政上からもいよいよ重要視され,銅銭の海外流出もはげしくなり,日本商船の銅銭持出しも激増した。しかし南宋の鋳銭高は北宋時代に比して僅少で,輸出銭の大部分は北宋銭とみられる。元は鈔(紙幣)と銀を結びつけたいわば銀本位制をとって,銅銭はほとんど廃していた。しかし民間では旧来の慣習により銅銭も行用しており,元末に鈔の信用は失墜し,ますます銀・銅銭使用が盛んとなった。
室町時代に入り,永楽通宝以外の明銭が輸入されても,なお北宋銭が通用銭貨の60~70%を占めていた。とくに数量の多い銭貨は,皇宋通宝,元豊通宝,元祐通宝,煕寧通宝,天聖元宝などである。南宋,さらに元の銅銭の輸入は少量であるが,南宋では建炎通宝,淳煕元宝,慶元通宝など,元では至大通宝,至正通宝などがある。
執筆者:小葉田 淳
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報