出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
…時代が下り役の種類が複雑化するにつれて,いろいろな名称が生まれた。そのおもなものをあげると,〈実悪(じつあく)〉また〈立敵(たてがたき)〉は悪人中の悪人の役で,顔は白塗り,燕手(えんで)という凄みのあるかつらを用い,堂々たる貫禄を見せるものが多い。代表的な役は《伽羅先代萩(めいぼくせんだいはぎ)》の仁木弾正,《仮名手本忠臣蔵》の師直,《時桔梗出世請状》の光秀など。…
…勘当された文蔵が紙衣(かみこ)姿で遊里に現れ,愛人に会う二幕目は,近松の浄瑠璃の一系統〈夕霧伊左衛門物〉以来の局面で,文蔵の役はやつしを得意とした藤十郎の代表的な当り芸といえる。悪に加担した藤川武左衛門の役は〈実悪〉の役柄の最初といわれる。近松歌舞伎の規範的作品。…
…原田甲斐は伊達兵部と共謀し,主君を淫蕩に陥れ隠居させ,若君を毒殺して家を押領しようと謀る悪人として描出された。浄瑠璃・歌舞伎劇では〈東山〉(室町時代)に置き換え〈伊達騒動物〉の系統を形成,甲斐は貝田勘解由,また仁木弾正左衛門直則などの名に仮託され,奸臣役の典型(実悪(じつあく))として演じられた。《伽羅先代萩(めいぼくせんだいはぎ)》の〈床下(ゆかした)・評定所対決・刃傷〉における演技は5世松本幸四郎が好演し,後世に大きく影響を与えた。…
※「実悪」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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