動物の形態がどのような機構によって形成されるかを、実験的手段により研究する生物学の一分野。19世紀末、W・ルーが、カエルの受精卵を用いた研究から発生機構学を提唱したことに始まる。ルーの方向はH・シュペーマンやJ・ロイブの業績とともに実験発生学として発展した。実験形態学では、狭義の発生現象だけでなく、組織や器官の再生現象も対象とされる。また、ホルモンによる巨視的、微視的な形態学的変化や、ホルモンの発生や変態に対する作用機構の研究も、広義の実験形態学である。しかし、実験形態学的方法だけでなく、生化学や物理化学の方法なども導入したホルモンの生物科学は内分泌学とよばれる。
[川島誠一郎]
…他方,発生学は卵細胞から始まる個体の発生過程の研究であるが,発生の因果関係の解明が目的である場合は生理形態学,異種間での比較に基づいて進化機構の解明などが目的にされるときは比較形態学の性格をおびることになる。 以上とは異なって,人工的条件の下で行われる形態学の一つに,20世紀になってから現れた実験形態学がある。これは,動物の発生過程に実験的操作を加えることにより形態形成の機構を解明しようとするもので,生理学的性格の強いものといえる。…
…実際,このようなあまりにもドイツ哲学に密着して命名されたことは,この発生を実験的に研究する分野のドイツ以外の諸国への普及をいくぶん阻害することになったのは否定できない。ドイツ以外では,この発生過程の要因の実験的研究についての分野は,実験形態学experimental morphologyとか実験発生学experimental embryologyとか呼ぶことによって,古くからある発生学と区別された。 しかし,研究の進歩につれて,純粋に記述だけを目標とした研究は姿を消し,発生についての研究を実験操作をもって行うことは常識化してきたので,上に述べたような歴史的に存在してきた区別はまったく不要となり,生物の発生についての生物学の分野は,1950年代以後は発生生物学developmental biologyという名称で統合されている。…
※「実験形態学」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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