富士(市)(読み)ふじ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「富士(市)」の意味・わかりやすい解説

富士(市)
ふじ

静岡県東部、岳南(がくなん)地域にある中心都市。1954年(昭和29)富士町と田子浦(たごのうら)、岩松の2村が合併して市制施行。1966年吉原市、鷹岡(たかおか)町と合併。2001年(平成13)特例市に移行(2015年施行時特例市に名称変更)。2008年庵原(いはら)郡富士川町を編入(庵原郡消滅)。市域は富士山頂から駿河(するが)湾に達し、富士山南麓(なんろく)の地域を含む。JR東海道本線・身延線(みのぶせん)・東海道新幹線、岳南鉄道が通じる。国道1号、139号、469号、西富士道路が通り、東名高速道路富士インターチェンジ、新東名高速道路新富士インターチェンジ、田子浦港がある。古代柏原駅(かしわばらのえき)が置かれ、中世吉原湊(みなと)は宿場として発達、甲州往還起点でもあった。江戸時代、吉原は東海道五十三次の宿場町岩本は富士川舟運の中継地として発展。富士川は10余流に分流し、村々は州に点在、洪水に悩まされたが、雁堤(かりがねづつみ)の築堤で安定した。現在の市街地は富士川扇状地上に位置する。広大な富士山麓ではスギヒノキ種苗の出荷、平坦(へいたん)部は火山灰地にも適したキャベツ、海岸砂州地では花卉(かき)を栽培している。沿岸漁業はシラス網漁が営まれたが、製紙かすによる駿河湾汚染や田子浦港の築港で、一時衰退した。江戸時代以来の和紙生産の伝統のもとに、明治中期から機械抄紙が行われ、以後、紙・パルプ工業の町として発達、大小多数の製紙工場が集中している。田子浦港の開港、東駿河湾工業整備特別地域の指定を受け、岳南工業地帯の中心として工業化が進行した。電気機器、化学、食品、自動車関連の工場も多い。富士山の自然を生かした丸火(まるび)自然公園があり、浅間古墳(せんげんこふん)(国指定史跡)、日蓮(にちれん)ゆかりの実相寺(じっそうじ)など史跡も多い。また、文化施設として市立博物館、歴史民俗資料館、富士山こどもの国などがある。面積244.95平方キロメートル、人口24万5392(2020)。

[川崎文昭]

『『富士市史』全2巻(1966~1969・富士市)』『『富士市史』全2冊(1982・富士市)』『『富士市二十年史』(1986・富士市)』


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

今日のキーワード

焦土作戦

敵対的買収に対する防衛策のひとつ。買収対象となった企業が、重要な資産や事業部門を手放し、買収者にとっての成果を事前に減じ、魅力を失わせる方法である。侵入してきた外敵に武器や食料を与えないように、事前に...

焦土作戦の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android