富田川(読み)とんだがわ

日本歴史地名大系 「富田川」の解説

富田川
とんだがわ

中辺路なかへち町北方、奈良県境の果無はてなし山脈に源を発し、同町内でなか川・鍛冶屋かじや川・石船いしぶり川・西谷にしだに川、上富田かみとんだ町内でおか川・生馬いくま川、白浜しらはま町内でしや川などを集めながら南西に流下し、白浜町富田で紀伊水道に注ぐ。大塔おおとう村の鮎川あゆかわ温泉から上流は著しい渓谷をなしているが、それより下流は平地部がやや広くなり、上富田朝来あつそ盆地付近は郡内最大の水田地帯をなす。流路は峡谷部では大きい変化はなかったが、平坦地となる上富田町付近では幾変遷があった。延長三三・六キロ。流域面積二四〇平方キロ。

富田川の名は古くは下流をさし、中流岩田いわた(石田川)、上流は栗栖くるす(芝川)とよばれ、「続風土記」に「栗栖川にては栗栖川といひ、岩田にては岩田川といひ、富田にては富田川といふ」と記される。この岩田川に沿った中辺路町栗栖川くりすかわ滝尻たきじりまでの川筋は、古代末期から中世にかけての熊野参詣路、熊野街道中辺路であった。「熊野御幸記」建仁元年(一二〇一)一〇月一三日条に「石田河」とみえ、「平家物語」「源平盛衰記」「義経記」などにも岩田川(河)がみえる。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「富田川」の意味・わかりやすい解説

富田川
とんだがわ

和歌山県南西部を南西流する川。奈良県境の果無(はてなし)山脈の安堵(あんど)山(1184メートル)に源を発し、白浜町富田で太平洋に注ぐ。延長33キロメートル、流域面積211平方キロメートル。かつては流路の荘(しょう)名から上流は栗栖川(くるすがわ)、中流は岩田川、下流を富田川と称した。上流は中生層を貫いてV字谷をなし、下流は田辺(たなべ)層群で氾濫(はんらん)原を発達させ天井川となる。田辺市鮎川(あゆかわ)では川原に温泉が湧出(ゆうしゅつ)し、下流の白浜町にはオオウナギ(国の天然記念物)が生息する。

[小池洋一]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「富田川」の意味・わかりやすい解説

富田川
とんだがわ

和歌山県南西部の川。奈良県との県境にある果無 (はてなし) 山脈の安堵山 (1184m) に源を発してほぼ南西流し,白浜町で太平洋に注ぐ。全長約 46km。中流部の鮎川温泉付近までは急勾配で峡谷を形成,下流部は勾配もゆるやかになり河岸段丘が発達。段丘上ではミカン栽培が行われる。

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事典 日本の地域遺産 「富田川」の解説

富田川

(山口県周南市菊川~御影町)
ふるさと周南景観特選」指定の地域遺産。
富田川は、大道理地区、四熊地区などに源流をもつ全長14kmの河川。大道理付近から流れ出し、魚切の滝を経て菊川湖に流れ込む

出典 日外アソシエーツ「事典 日本の地域遺産」事典 日本の地域遺産について 情報

世界大百科事典(旧版)内の富田川の言及

【月山城】より

…毛利氏は毛利元秋や吉川広家などを城主として山陰支配をおこなった。城下の飯梨川(旧名富田川)からは尼子氏代より1666年(寛文6)水没までの城下町遺跡が発見されており,この富田川河床遺跡には掘立柱の町並みの遺構など,中・近世の町並みを示す貴重な遺跡が含まれている。【松浦 義則】。…

※「富田川」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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