花山院(読み)カザンイン

デジタル大辞泉 「花山院」の意味・読み・例文・類語

かざん‐いん〔クワザンヰン〕【花山院】

京都市上京区にあった清和天皇の皇子貞保さだやす親王の邸跡。藤原忠平伝領し、のちに花山天皇が出家して没するまでの間ここに居住
花山天皇退位出家後の称。
藤原北家ほっけ道長流の家の名。藤原師実ふじわらのもろざねの次男家忠いえただに始まる。

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精選版 日本国語大辞典 「花山院」の意味・読み・例文・類語

かざん‐いんクヮザンヰン【花山院】

  1. ( 古くは「かさんいん」 )
  2. [ 一 ] 清和天皇の皇子貞保親王の住居の地。京都府庁の東方御所西部にあった。
  3. [ 二 ] 花山天皇の別称
  4. [ 三 ] 藤原北家の一流。関白藤原師実の二男家忠が花山院[ 一 ]を伝領して家号としたのに始まる。清華(せいが)家の一つ

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改訂新版 世界大百科事典 「花山院」の意味・わかりやすい解説

花山院 (かざんいん)

平安時代に栄えた邸宅で,平安京の近衛大路の南,東洞院の東にあり,広さは1町に及んだ。現在の京都御苑内で京都御所の南の場所が跡地。はじめ清和天皇と子の貞保親王邸であったのを摂関の藤原忠平が伝領。忠平は別にもと藤原冬嗣邸の東京第(小一条院)も伝領していたが,花山院はその東に位置していたところから東一条家とも単に東家とも呼ばれた(《拾芥抄》)。忠平の所有となったのは10世紀初めごろと考えられる。忠平の日記《貞信公記》には,931年(承平1)に,この東家で狐や鷺を見るなどの話が散見する。この邸は忠平から子の師輔,その子伊尹へと伝えられ,伊尹の娘の〈九の御方〉を介して孫の花山天皇が居住することにもなった(《栄花物語》)。天皇の諡号(しごう)はそれにちなむ。そもそも邸の名の由来は庭に撫子や萩といった草花が多く植えられていたことによるという。平安時代後期には摂関藤原師実が伝領し,さらに子の家忠,そして忠雅,兼雅へと伝えられ,この家系花山院家と称した。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「花山院」の意味・わかりやすい解説

花山院
かざんいん

平安・鎌倉時代の邸宅の一つ。東一条、東院(ひがしのいん)などともいう。清和(せいわ)天皇の皇子式部卿(しきぶきょう)貞保(さだやす)親王の邸宅のあったところで、四周にナデシコハギなどを多く植えたため花山(はなやま)という名があったことから花山院の名がつけられたという。京都近衛(このえ)大路の南、御所の西部、現京都府庁の東方にあたる。藤原忠平(ただひら)・師輔(もろすけ)へと伝領、冷泉(れいぜい)天皇は東宮のときに、また花山法皇もここに住した。のちに隣の小一条院をあわせて藤原道長の孫関白(かんぱく)師実(もろざね)が伝領、その次子左大臣家忠(いえただ)へと受け継がれた。七清華家(せいがけ)の一つとして有名な花山院家は、この家忠がこの花山院を氏号としたのに始まる。1336年(延元1・建武3)後醍醐(ごだいご)天皇はここを仮皇居とし、ここから吉野へ移った。応仁(おうにん)の乱(1467~77)に焼失

[小野信二]

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歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典 「花山院」の解説

花山院
(通称)
かざんいん

歌舞伎・浄瑠璃の外題。
元の外題
新撰花山院
初演
宝永7.11(江戸・中村座)

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「花山院」の意味・わかりやすい解説

花山院
かざんいん

花山天皇」のページをご覧ください。

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世界大百科事典(旧版)内の花山院の言及

【花山院家】より

…平安時代後期の関白藤原師実の第2子家忠を始祖とする。家忠が婚姻ののち父師実の邸花山院を譲り受けたのにちなんで花山院左大臣と称した。その子権中納言忠宗は同邸に住した形跡はないが,忠宗の子忠雅は花山院太政大臣と,その子および孫の兼雅・忠経はそれぞれ後花山院左大臣・花山院右大臣と称されたように,代々同邸を本邸とし,花山院を称号にしたが,鎌倉時代中期以降に花山院が家の号として用いられることになった。…

【花山天皇】より

…諱(いみな)は師貞(もろさだ),僧名入覚。花山院とも。冷泉天皇の第1皇子。…

※「花山院」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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