…一年中で最も寒い時期の修行であるために,厳しい苦行となるが,その苦行が多くの功徳(くどく)をもたらすという信仰が背景にある。一般に寒行には僧侶を中心とした寺堂や道場での座禅・誦経・念仏・題目のほか,鉦を叩きながら民家の軒先や社寺を巡って念仏や和讃を唱える〈寒念仏〉,鈴を振りながら裸足で薄着して社寺に参詣し祈願する〈寒参り〉,冷水を浴びて神仏に祈願する〈寒垢離(かんごり)〉などの所作がある。〈寒念仏〉について,文化年間(1804‐18)に編まれた《会津風俗帳》には〈堂社修繕建立のため,出家又は信心の男女四五人連にて和讃念仏を唱へ,村々相廻り,米少々つゝ出す〉と托鉢の状況を記し,同時期の《歳時謾録》には六斎念仏の行者が城下や無常所を夜行したと記し,《続飛鳥川》には白木綿の単物と頭巻を着し,鈴を振って歩行し,絵札をまく願人坊主の姿を記している。…
…千(せん)垢離とか万(まん)垢離というのは,数多く水を浴びれば,願がかなうものと考えられた呪術である。また寒垢離は1年間の寒の時期に限って,垢離をとると,もっとも効果があると考えられた行為である。江戸の大山(おおやま)詣は,隅田川岸で垢離をとって参詣することで知られていた。…
…すなわち,妻のイザナミを黄泉(よみ)の国(死者の世界)に訪問して危うく逃げ帰り,身に着いた死の穢悪を清めるために日向(ひむか)の河水で水浴し,しかもそれによってイザナキはアマテラス,ツクヨミ,スサノオの三貴神を生んだとされる。平安時代以降はもっぱら穢れを祓除する意味が強まり,密教系の垢離(こり)の観念にも習合して水垢離,浜垢離,寒垢離,滝行,水行などの修行形式に発展した。中世から近世にかけて修験道や社家神道でその行法を各地の祭礼神事に広め,幕末の神道家井上正鉄(まさかね)は伯家(はつけ)神道の禊法を採用して後の禊教の基をひらいた。…
※「寒垢離」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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