水の祓浄力を利用して,不浄をとり去る行為をいう。垢離という場合は,仏事を前にして川に入り,洗浄すると理解されている。神道では,一般に禊(みそぎ)することであり,垢離と禊は,同じ心意の上に成り立っている。《古事記伝》では,垢離を川降りの義だとしている。すなわち,川辺にでて,水を浴びることにより,身体に付着した不浄なものいっさいを,川水に流してしまうと考えられている。垢離の語は,《無量寿経》が出典であり,尊者または清僧となるための修行者に課せられた儀礼であった。これが転じて,一般の人々が神仏に祈願するとき,心願が通じるように念じて,水を浴びる形態となった。千(せん)垢離とか万(まん)垢離というのは,数多く水を浴びれば,願がかなうものと考えられた呪術である。また寒垢離は1年間の寒の時期に限って,垢離をとると,もっとも効果があると考えられた行為である。江戸の大山(おおやま)詣は,隅田川岸で垢離をとって参詣することで知られていた。
執筆者:宮田 登
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
水にて身心の罪穢(つみけがれ)を除き清めるための行為。水垢離(みずごり)、垢離掻(こりかき)などともいう。神仏に詣(もう)でるときや祈願に先だって、水を浴びて身心を清めるもので、禊(みそぎ)の一種。滝や川などで行われることが多い。古くから和歌山県の熊野三社に詣でる熊野詣での垢離をはじめ、富士行者や修験(しゅげん)者などの間に多く行われている。山岳信仰における登拝は、もとは男子のみであったが、第二次世界大戦後は愛媛県の石鎚(いしづち)山その他で女子の登拝が許され、女子の垢離も行われるようになった。垢離をとるときは、裸体または白衣を着用する。垢離の起源は、記紀神話に、伊弉諾尊(いざなぎのみこと)が、濁穢(けがれ)を除くために禊祓(みそぎはらい)をしたとある故事によるのであろう。
[沼部春友]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
…水あか,湯あかなどもその例である。神仏に祈る際,冷水を浴びて垢離(こり)をとれば心身が清くなるとした。あかはけがれたものだから,伊弉冉尊(いざなみのみこと)から逃げ帰った伊弉諾尊(いざなぎのみこと)が黄泉(よみ)の国で汚れた身体の禊(みそぎ)をしたとき,八十禍津日神(やそまがつひのかみ)と大禍津日神(おおまがつひのかみ)が生まれた。…
※「垢離」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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