六根清浄(読み)ろっこんしょうじょう

精選版 日本国語大辞典 「六根清浄」の意味・読み・例文・類語

ろっこん‐しょうじょう ロクコンシャウジャウ【六根清浄】

〘名〙
仏語六根が汚れを払って、清らかになること。心身ともに清浄になること。また、その境地六根浄
※栄花(1028‐92頃)御裳着「光を尋ねて参り、すべて明かなる眼を開き、六根清浄を得たりと覚え」
② 仏語。天台宗でいう、円教十信の位。菩薩の六根が清浄になる段階。これを六根清浄位という。六根浄。
③ 六根の不浄を祓い清める、となえことば。
※伊勢講并参宮儀式(1686)一「天清浄、地清浄、人清浄、内外清浄、六根清浄、祓ひ賜ひ、清て賜ふ、此咒文をとなふべし」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

デジタル大辞泉 「六根清浄」の意味・読み・例文・類語

ろっこん‐しょうじょう〔ロクコンシヤウジヤウ〕【六根清浄】

仏語。六根から生じる迷いを断って、清らかな身になること。また、霊山に登るときや寒参りなどの際に、六根の不浄を清めるために唱える語。六根浄。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

日本大百科全書(ニッポニカ) 「六根清浄」の意味・わかりやすい解説

六根清浄
ろっこんしょうじょう

六根浄とも略す。「根(こん)」はサンスクリット語のインドリヤindriyaの漢訳語で、感覚器官とその器官の有する能力という意味。六根とは、眼(げん)根(視覚器官と視覚能力)、耳(に)根(聴覚器官と聴覚能力)、鼻(び)根(嗅覚(きゅうかく)器官と嗅覚能力)、舌(ぜつ)根(味覚器官と味覚能力)、身(しん)根(触覚器官と触覚能力)、意(い)根(思惟(しゆい)器官と思惟能力)の6種をいい、この六根が清浄になることを六根清浄という。仏教では、修行や種々の浄行によってこの六根清浄が得られるとした。たとえば『法華経(ほけきょう)』法師功徳品(ほっしくどくほん)では、『法華経』経典の受持(じゅじ)・読誦(どくじゅ)・解説書写の行によって、六根のそれぞれが種々の功徳(くどく)を有して超人的能力を発揮するとともに、清浄となると説かれており、中国天台宗では、これに基づいて六根清浄を仏道修行の進展を示す目安の一つとなし、修行の階梯(かいてい)に六根清浄位という位を設けた。

 後世、霊山などに登山する際、金剛杖(こんごうづえ)を携え、「六根清浄」と唱えながら登るのは、それによって登山者の身心が清らかとなり、その功徳によって無事に登山ができるように祈るもので、六根の罪の懺悔(さんげ)を説いた『観普賢菩薩行法経(かんふげんぼさつぎょうぼうきょう)』という経典に基づいている。

[藤井教公]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

百科事典マイペディア 「六根清浄」の意味・わかりやすい解説

六根清浄【ろっこんしょうじょう】

六根浄とも。仏教で,身心に功徳が満ち自在に働けるように,感覚と認識の基礎となる眼・耳・鼻・舌・身・意の六根を清浄にすること。真言宗富士講では,登山などに際し,これを称して,安全を祈る。天台宗では《法華経》に基づいてこれを修行の位とし,六根清浄位という。

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

四字熟語を知る辞典 「六根清浄」の解説

六根清浄

六根から生じる欲望、執着を断ち切って、心身ともに清浄になること。また、霊山に登る者などが、清浄を願って唱えることば。

[使用例] 白装束に身を潔めた登山者は、六根清浄のコーラスでお山にゆく[大辻司郎*漫談集―飛行機の話|1929]

[解説] 六根とは、人間が迷いを生ずる原因となる六つの感覚器官で、目・耳・鼻・舌・身(皮膚)・意(思考の働き)をいう。「清浄」は清くけがれのないこと。

出典 四字熟語を知る辞典四字熟語を知る辞典について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「六根清浄」の意味・わかりやすい解説

六根清浄
ろっこんしょうじょう

眼,耳,鼻,舌,身,意の六根が,修行することなどの功徳によって清らかになること。このとき六根は完全に調和した理想的状態にいたるという。登山する修行者が「六根清浄」と称えることもある。六根浄ともいう。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

今日のキーワード

潮力発電

潮の干満の差の大きい所で、満潮時に蓄えた海水を干潮時に放流し、水力発電と同じ原理でタービンを回す発電方式。潮汐ちょうせき発電。...

潮力発電の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android