寛平御記(読み)かんぴょうぎょき

日本大百科全書(ニッポニカ) 「寛平御記」の意味・わかりやすい解説

寛平御記
かんぴょうぎょき

宇多(うだ)天皇御記』ともいう。同天皇の日記。宇多・醍醐(だいご)・村上(むらかみ)3天皇の御記をあわせて「三代御記」と総称する。1313年(正和2)当時は10巻の伝存が知られるが、現在は散逸。江戸時代後期に中津広昵(ひろちか)が逸文を集録し、和田英松(ひでまつ)が増補したものが、『続続群書類従』などに集録されているのみである。これによって、当時の公事儀式、天皇の日常の感懐、天皇と藤原氏との対立、なかでも、阿衡(あこう)の紛議の詳細を知ることができる。近衛兼経(このえかねつね)の「毎事殊勝、古事眼前に在るが如(ごと)し、臣下得失政道の奥旨(おうし)、詩歌の興(きょう)、大旨此(こ)の御記に在り」との評語が、彼の『岡屋(おかのや)関白記』にみえている。

[林 幹彌]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「寛平御記」の意味・わかりやすい解説

寛平御記
かんぴょうのぎょき

宇多天皇在位 (887~897) 中の日記。『宇多天皇御記』『寛平聖主記』ともいい,もと原本 10巻であったが室町時代末期の兵火で焼失したらしい。朝廷の儀式に詳しく,摂政,関白をはじめ貴族の必読書物とされていた。特に天皇と藤原氏の衝突した阿衡の紛議 (→阿衡事件 ) に関する記事は当事者の記録として貴重。現在は,江戸時代後期に中津広昵 (ひろちか) が,読書に引用された記事を拾集したものを中心に,9年分が復元されている。『続々群書類従』所収。 (→醍醐天皇御記 , 村上天皇御記 )

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