小公子(読み)ショウコウシ(英語表記)Little Lord Fauntleroy

デジタル大辞泉 「小公子」の意味・読み・例文・類語

しょうこうし〔セウコウシ〕【小公子】

原題Little Lord Fauntleroyバーネットの児童小説。1886年刊。米国生まれの少年セドリック英国に住む祖父伯爵に引き取られ、その純真さで祖父の愛をよびさまし、伯爵家を継ぐ。明治23年(1890)から同25年にかけて若松賤子わかまつしずこ翻訳

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精選版 日本国語大辞典 「小公子」の意味・読み・例文・類語

しょうこうしセウコウシ【小公子】

  1. ( 原題[英語] Little Lord Fauntleroy ) 児童文学アメリカの女流作家バーネット作。一八八六年刊。イギリスに住む祖父の伯爵にひきとられたアメリカ生まれの少年セドリックがその純真さで祖父の愛の心を呼びさます物語日本では、明治二三年(一八九〇)から同二五年にかけて若松賤子によって翻訳され広く読まれるようになった。

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改訂新版 世界大百科事典 「小公子」の意味・わかりやすい解説

小公子 (しょうこうし)
Little Lord Fauntleroy

アメリカの下町っ子がイギリス貴族の跡取となる一種の世継ぎ出世物語。バーネット夫人Frances Hodgson Burnett(1849-1924)作(1886)。ニューヨーク靴磨きの少年や雑貨屋の主人を友だちとして育ったセドリック少年は,突然訪れた使者とともに,侯爵家を継ぐフォントルロイとなるべく海を渡ってドリンコート城に赴く。人の愛を解せず,息子の結婚相手も認めないアメリカ嫌いの頑固な侯爵も,純真で,幼いながら公平な視点をもつこの孫と接するうちに,人間らしい感情を取り戻していく。アメリカの民主主義とイギリスの貴族主義の対立和解という興味あるテーマ,ドラマティックな筋立て,真の気高さは人間性にあるとする作者の主張が多くの読者を獲得し,ビロードの服にレースの襟は当時の良家の子どもの流行のスタイルも作った。出版後まもなく日本でも《女学雑誌》に若松賤子(しづこ)の翻訳が連載された(1890-92)。原作の味わいを生かした洗練された口語訳である。バーネット夫人はイギリス生れで16歳のときアメリカへ移住。ほかに《小公女》《秘密の花園》がある。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「小公子」の意味・わかりやすい解説

小公子
しょうこうし
Little Lord Fauntleroy

アメリカの作家バーネットが、次男ビビアンをモデルにして1885年に書いた子供のための物語。翌年刊行。主人公のセドリックは、アメリカ人と結婚したために勘当された父と早く死別し、ニューヨークの裏街で母と2人で暮らしていたが、頑固なイギリス貴族の祖父ドリンコート侯爵に跡継ぎとして引き取られる。しかし生来の天真爛漫(らんまん)さと優しさで母に対する祖父の誤解を解き、母を呼び寄せることができる。セドリックは思いやりある、かわいらしい理想的な子供として描かれている。アメリカでは出版されると同時にたいへんな評判となった。日本でも原作初版の4年後(1890)に、若松賤子(しずこ)が『女学雑誌』に翻訳の掲載を始め、その正確で巧みな翻訳により多数の読者を得、今日に至るまで、その人気のほどは変わっていない。

[掛川恭子]

『吉田甲子太郎訳『小公子』(岩波少年文庫)』

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百科事典マイペディア 「小公子」の意味・わかりやすい解説

小公子【しょうこうし】

バーネット作の家庭小説。1886年作。原題は《小フォントルロイ公Little Lord Fauntleroy》。ニューヨークの裏町に育った少年セドリックが,英国にある祖父の老貴族の城に迎えられ,その純真さでかたくなな祖父の心を和らげる。各国語に翻訳され,日本でも明治の若松賤子(しづこ)訳以来,広く読まれている。
→関連項目若松賤子

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「小公子」の意味・わかりやすい解説

小公子
しょうこうし
Little Lord Fauntleroy

アメリカの女流作家フランセス・バーネットの代表作。 1886年刊。アメリカ女性と結婚したため勘当されたイギリス貴族の長男を亡き父にもつセドリックは,ニューヨークから母とともにイギリスの祖父の館に呼び寄せられる。そして次第にかたくなな祖父の心をやわらげ,母子ともども長年の勘当が解ける。礼儀正しく心やさしい子と母の物語が好評を呼び,カールした髪型と黒のベルベット服が流行 (子供は嫌ったが) した。日本でも 90 (明治 23) ~92年に若松賤子が翻訳して以来親しまれてきた。

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世界大百科事典(旧版)内の小公子の言及

【若松賤子】より

…89年明治女学校の巌本善治と結婚して母校の教師をやめたが,病気がちの暇をぬすんで《女学雑誌》に創作や翻訳,またキリスト教精神による教育的随筆を数多く発表。翻案小説《忘れ形見》(1890),テニソンの物語詩の翻訳《イナック・アーデン物語》(1890),90年から92年には《小公子》(バーネット原作)の翻訳など,いずれも子供の姿態を清新な口語体でとらえ,彼女の仕事の頂点を示している。94年から《日本の伝道新報》婦人欄を担当し,英文での日本紹介に努めた。…

※「小公子」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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