勘当(読み)かんどう

精選版 日本国語大辞典「勘当」の解説

かん‐どう ‥ダウ【勘当】

〘名〙
(かんが)え当てること。調査し決定すること。
※蜂須賀侯爵家所蔵文書‐天平宝字二年(758)一二月二一日・早良郡三家豊継解案「郡司依状、勘当奴籍帳并紀事既合実」
② 罪を調べてを当てること。
※続日本紀‐天平宝字七年(763)一〇月乙亥「以人於海、勘当下獄」
※随筆・折たく柴の記(1716頃)下「いかにや議定せられたりけむ、まづ伊勢守御勘当の事ありと聞ゆ」 〔新唐書‐徐堅伝〕
譴責(けんせき)すること。また、譴責を受けること。勘気を蒙(こうむ)ること。お叱りを受けること。
※竹取(9C末‐10C初)「玉の取りがたかりし事を知り給へればなん、かんだうあらじとて参りつる」
※源氏(1001‐14頃)行幸「かむたうはこなたざまになむ、かうしと思ふこと多く侍る」
④ 江戸時代、親子関係を断つこと。奉行所に届け出て公式に親子関係を断つのが本来のあり方だが、公にせず懲戒的な味を持たせるだけの「内証勘当」も行なわれた。また、主従師弟関係を断つことにもいった。〔元和本下学集(1617)〕
※幸若・満仲(室町末‐近世初)「若君を御勘当候事を、恨とばし思し召れ候な」
⑤ 一般に、親、師匠などが、子、弟子に対して、それまでのを切ること。
※坊っちゃん(1906)〈夏目漱石〉一「おやぢがおれを勘当すると言ひ出した」
⑥ 仲間からはずすこと。〔浪花聞書(1819頃)〕
[語誌](1)文字通りには「かんがえて当てる」という①の意味で、上代・中古の文書にその例を確認できるが、さらに②のような限定的な意味でも上代から用いられており、中国の古典籍にも認められる。
(2)中古になると、③のような日本独自の意味が現われ、近世以降は、④⑤の親や上位者が子や下位者との縁を絶つという現代の用法に通じる意味で用いられるようになる。

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日本大百科全書(ニッポニカ)「勘当」の解説

勘当
かんどう

もともとは法家(ほうか)の術語で、罪を勘(かんが)えて法に当てることをいい、中世では主君の勘気を被ること、および親が子との縁を切ることの意味に使われた。近世以後、親が子との縁を切ること、すなわち懲戒の意味で、親が子を家から追放する行為をさすようになった。親族関係も当然断絶されるわけで、その意味で久離(きゅうり)の一種とも考えられる。事実、江戸町奉行(ぶぎょう)所では、久離を欠落(かけおち)久離、勘当を追出(おいだし)久離とよんで区別するようになった。

 勘当は、単に口頭または文書をもって言い渡しただけでは、いわゆる内証(ないしょう)勘当であって、法律上の効果を発生しなかった。有効にするためには、江戸の町奉行所に帳付け(登録)をしてもらう必要があった。その手続は、庶民の場合、願い出を受けた代官がこれを許可すると、公事方(くじかた)勘定奉行へ届け出る。勘定奉行は寺社・町両奉行へ通達する。町奉行所ではこれを言上帳に記入し、その書替(謄本)が勘定奉行、代官を経て願人へ交付されるという段取りがとられた。幕臣については、勘当は目付への届出によって行われた。勘当された子は相続権を失い、親はその子に関するいっさいの責任を逃れることができた。勘当された者が素行を改めた場合、先に勘当を願い出た者は代官役所(または奉行所)に帳消し(帳付けの取消し)を願い出ることができた。

[石井良助]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典「勘当」の解説

勘当
かんどう

一般的に懲戒を意味し,親が子を家から追放することをさす。しかし勘当の本来の意義は,『類聚三代格』,あるいは『延喜式』にみえるごとく,罪の軽重に応じて刑を定めるというだけのことである。しかるに,この語は中世にいたって,貴人から譴責をこうむり,居させられる自由刑を意味するようになり,さらに江戸期には,久離義絶などと等しく,父あるいは師の不興をこうむり,縁を断たれる意となった。

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デジタル大辞泉「勘当」の解説

かん‐どう〔‐ダウ〕【勘当】

[名](スル)
親が子との縁を切ること。江戸時代には奉行所に届け出が必要であった。また、主従関係・師弟関係を断つことにもいった。「放蕩息子を―する」
《法に合わせかんがえて罪に当てる意から》責めてしかること。
「宮より重く―せられしかば」〈宇津保・国譲上〉
[類語]離縁絶縁義絶離れる離反離背決別おさらば絶交断交決裂物別れ離間乖離手を切る生木を裂く仲を裂くたもとを分かつ

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旺文社日本史事典 三訂版「勘当」の解説

勘当
かんどう

親族・主従・師弟などの間柄を上位者側から断絶する行為
親が子を勘当すると,子の債務,犯罪の連帯責任を免がれ,子は家督・財産相続権を失う法律的効力をもった。中世以来武家社会で行われ,近世では庶民間にも行われた。

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世界大百科事典 第2版「勘当」の解説

かんどう【勘当】

近世の法制度において,在宅者を家から追放し,家族関係を公的に解消することで,正式には領主の許可を得て行うものであった。勘当を実行するのは,その人物のひきおこす事件が家族に影響を及ぼさないようにするためであり,家族内部の秩序維持というよりも,社会的な責任を逃れようとしたものであるが,同時に家の相続に関連して相続権を放棄させる目的も含まれており,地主層や商人たちによって行われた。このような勘当は近世の幕藩権力が社会秩序を維持するために制度化したものであり,日本の伝統的家族の内部で行われていたものではなかったと判断される。

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普及版 字通「勘当」の解説

【勘当】かんとう(たう)・かんどう(だう)

罪科をしらべ、法にあてる。〔唐書、徐堅伝〕大を犯すに比す。に詔して勘當せしめ、實を得ば輒(すなは)ち決せしむ。(かんどう(だう)) 国語君父に逆らって追放され、縁を切られる。

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世界大百科事典内の勘当の言及

【義絶】より

…義絶には義絶状の作成・公示が要件となっていた。義絶の原因はおもに子の親に対する不孝とされたために,義絶することを〈不孝(ふきよう)する〉〈勘当(かんどう)する〉ともいった。日本中世における親権のあり方を示すとともに,日本と中国の家族関係・秩序の差異を示すものとして注意される。…

【久離】より

…旧離とも書き,江戸時代に伯父・兄など目上の親族から,甥・弟など目下の親族に対して申し渡す親族関係断絶行為を意味した語。ただし勘当義絶などと混同されたことも少なくない。子に対しては,出奔した子に対する場合のみを久離(武士の場合は義絶とも称する)とし,在宅の子を追い出して絶縁する場合は勘当と呼ぶことが,すでに安永(1772‐81)ころから行われていたが,やがて勘当も,追出久離と呼ばれて久離の一種として扱われるようになった。…

【帳外】より

…無宿ともいう。当時は刑罰が連座制であるため,不法行為を行うおそれのある子をもった親は,その子を勘当し,さらに人別帳からの抹消を願い出て公認されると,その子は帳外となる。18世紀末の天明期(1781‐89)ごろから勘当が同時に帳外となるようになり,19世紀初頭の文化期(1804‐18)ごろからは勘当されていない要注意者を村役人が帳外扱いをして,人別帳に札をつけておくところから,〈札つき〉の称がおこったという。…

【不孝】より

…不孝された者は,家から追放され,嫡子に立って家を継ぐ身分も,祖父母,父母の財産の分与にあずかる資格もともに奪われ,すでに与えられた財産も取り上げられた。 なお中世法には,不孝と類似の法律行為に義絶と勘当がある。義絶は中世では不孝と同じく祖父母,父母の子孫に対する親子・祖孫関係の断絶を意味したが,不孝が純然たる同族内の行為にとどまるのに対して,義絶には,親子・祖孫関係の断絶という行為に加えて,その事実を族外世間に公示して,承認を得る手続(義絶状の作成公表)が求められた。…

※「勘当」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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