デジタル大辞泉 「脳」の意味・読み・例文・類語
のう〔ナウ〕【脳】
2 頭脳のはたらき。「
[類語]脳髄・脳味噌・頭脳
( 1 )「新撰字鏡」に「髄〈略〉骨中脂也 保祢乃奈豆支」、「観智院本名義抄」に「髄〈略〉ナツキ ホネノナカ」とあるので、骨髄の意味ももっていたか。
( 2 )「出雲国風土記」の「脳嶋」「脳磯」という地名の借訓例から、この語は上代から存在したとみられる。やがて「ナヅキを(つき)くだく」という慣用句のなかにほぼ限定されて使用され、①の「脳髄」から②の「頭」の意味に移行したと推定される。
脊椎動物の神経系において神経作用の支配的な中心をなしている部位をいい,無脊椎動物では頭部背側にある食道上神経節を脳または頭神経節という。脊椎動物では,脳(頭蓋腔のなかにある)は脊髄(脊柱管のなかにある)とともに中枢神経系を形造っているので,脳は中枢神経系の部分であるわけであるが,〈脳〉という言葉は,中枢神経系を代表するものとして〈中枢神経系〉の意味で用いられることもある。
脊椎動物の中枢神経系(脳と脊髄)には,末梢神経系(脳神経と脊髄神経)を通じて外界や自分自身の体に関する情報が送り込まれる。中枢神経系はこれらの情報を処理し,一定の指令を末梢神経系を通じて効果器(筋肉や腺)に送り出して,外部環境に合目的的に適応するとともに,内部環境を恒常的に維持する機構に参加している。このように,中枢神経系は情報を送り込んでくる入力ニューロン(感覚神経節のニューロン)と,指令を直接末梢に送り出す出力ニューロン(運動ニューロンや自律神経の起始ニューロン)との間に介在するニューロンの集合とみることができる。入力ニューロンが出力ニューロンに直接連絡している場合は,反応の速度の点では有利であるが,情報に応じて反応を細かく調節することはできない。入力ニューロンと出力ニューロンの間に介在するニューロンの数が増すほど,入力ニューロンからの情報に対する出力ニューロンの応答をいっそう精妙に調節できるはずである。すなわち,中枢神経系が発達するほど,一定の入力情報に対する生体の反応に選択性が増す。神経系を〈不確定性の貯蔵所〉とみるH.ベルグソンの考え方(《創造的進化》)はこの意味で正しいといえるであろう。
中枢神経系(脳と脊髄)を構成する細胞はニューロンとグリア(神経膠(しんけいこう))である。このうち,中枢神経系のニューロンは,上記のように,末梢神経系の入力ニューロンと出力ニューロンの間に介在するニューロンであり,グリアはこれらのニューロンを一定の形にまとめあげてそれらの生活環境を形成している。無脊椎動物の中枢神経系ないし脳がニューロンとグリアの塊(塊状脳solid brain)であるのに対して,ヒトを含めた脊椎動物の脳は管状脳tubular brainである。管状脳は系統発生的には原索動物の幼生において初めて出現するといわれる。個体発生においては中枢神経系は神経管neural tubeに始まる。ヒトで神経管が完成するのは胎生4週の終りである。以後,中枢神経系の発育は神経管の壁の肥厚,変形という形をとるが,その間を通じて中枢神経系の管状構造は終始保たれる。
神経管には,その形成の始まりの時期から頭方の脳管と尾方の脊髄管とが区別できる。脊髄管がその後も原形を比較的よく保ちながら脊髄に分化,発育するのに対して,脳管は胎児の成長につれて複雑に変形する。まず脳管は前脳胞,中脳胞,菱脳(りようのう)胞の三つの膨らみ(脳胞brain vesicle)に区分されるが,さらに前脳胞は終脳胞と間脳胞に,菱脳胞は後脳胞と髄脳胞に区分される。このように脳管が五つの脳胞から成立する時期は,ヒトでは胎生5週である。脳胞は間脳胞より尾方では不対であるが,終脳胞だけは左右1対の半球胞から成る。これは前脳胞の外側壁がその前背側部において左右に膨出することによって生じる。以上の脳胞はいずれも神経管の部分として分化してくる構造であるから,それぞれの内部には管腔があり,それらの管腔は互いに連絡している(すなわち,神経管の内部にある中心管にあたる)。左右1対の半球胞の内腔は側脳室,間脳の内腔は第三脳室,菱脳の内腔は第四脳室と呼ばれる。中脳の内腔と脊髄の内腔は神経管の内腔,すなわち中心管としての形態をとどめていて狭い。第三脳室と第四脳室を結ぶ中脳の内腔は中脳水道と呼ばれる。第三脳室は1対の室間孔によって左右の側脳室と連続している。これらの管腔は完成した脳では髄液(脳脊髄液)で満たされ,全体として脳室系を形成する。脳室系は第四脳室において,その後端の正中部にある孔(第四脳室正中孔)と,外側壁の後部にある左右1対の孔(第四脳室外側孔)によって,中枢神経系の外側を包むくも膜下腔に連続する。脳は,このようにして,内側の脳室系と外側のくも膜下腔を満たす髄液によって内外から包まれ,さらにその外側を硬膜と頭蓋骨で保護されている。
脳の区分は脳室系を基にして行われる。側脳室を囲む部分を終脳(正確には,左右の大脳半球と終脳の不対部),第三脳室を囲む部分を間脳,中脳水道を囲む部分を中脳,第四脳室を囲む部分を菱脳とする。さらに菱脳の前半部(後脳)からは小脳と橋(きよう)が分化し,菱脳の後半部は延髄(髄脳)として脊髄に連続する。
成人の脊髄は身長の28~29%の長さがあるが(日本人では40~47cm),脳と脊髄の重量比は約55対1であり,中枢神経系において脳の占める割合がいかに大きいかがわかる。また,脳のなかでも大脳半球(大脳外套と大脳核)が全脳重の80%を占め,小脳は約11%,その他,間脳,中脳,橋,延髄は合わせて7~8%にすぎない。
脊椎動物の中枢神経系は,前記のように,神経管から発生してくるのであるが,その際,中枢神経系を形成するニューロンとグリアは,神経管の最内層にある未分化な細胞(マトリックス細胞matrix cell)の細胞分裂によってつくられる。マトリックス細胞の細胞分裂によって増数した細胞は,中心管から放射状に外方に向かって移動しつつ分化,成熟する。一般的にみて,ニューロンのほうがグリアよりも早期につくられ,ニューロンでも大型のもののほうが小型のものよりも早期に出現するといわれる。ニューロンになるべき細胞(神経芽細胞neuroblast)は,目的地に向かって移動しながら成熟する(軸索や樹状突起の伸長と分枝)。神経芽細胞はニューロンに分化すると細胞分裂の能力を失う。ニューロンの間にはシナプスが形成されるが,ある特定のニューロンがいかにして一定のニューロンを見いだしてそれとの連絡(シナプス)を達成するのか,その機序についてはまだよくわかっていない。ニューロンのなかには胎生期や生後まもない時期に消失していくものがあるが,それらはおそらく適当な相手のニューロンを見いだしてそれらとのシナプス連絡を形成できなかったニューロンであろうと考えられている。また,成熟したニューロンには細胞分裂の能力がないのであるから,これらが何かの原因で失われた場合,そのニューロンの減数が他のニューロンの細胞分裂によって補われることはない。しかし,あるニューロンが消失したことによって生じるそのニューロンの軸索終末の〈空き家〉は,付近にある他のニューロンの軸索終末からの新たな分枝によって占められることが多い。このような現象(出芽sprouting)は成熟した脳でも観察されている。
中枢神経系の情報処理機能は,シナプスによって機能的に連絡するニューロンのネットワークによって営まれる。これらのニューロンは一様に分布しているのではなく,その集合状態には粗密があり,配列の様式も多様である。ニューロンの細胞体の集合が,その集合密度,位置関係,形態的特徴などによって周囲の構造から区別できる場合,それらを核nucleusまたは神経核という。〈核nucleus〉という語は,日本語,英語ともに細胞の場合の核と同じであるが,その内容,意味はまったく異なる点には注意を要する。また,末梢神経系においてはニューロンの細胞体の集合を神経節ganglionと呼び,これには感覚神経節と自律神経節がある。
神経核のなかでも,運動核(運動ニューロンの細胞体の集合),自律神経起始核(自律神経起始ニューロンの細胞体の集合),感覚核(感覚神経節ニューロンがシナプス連絡する中枢神経系ニューロンの細胞体の集合)などは,その性質が比較的単純である。しかし,これらの神経核をも含めて,一般に神経核を構成するニューロンは形態的にも機能的にも均一ではなく,それぞれの神経核にはさらに内部構造がある。すなわち,いっそう詳細にみた場合には,一つの神経核をさらにいくつかの亜核に細分できる場合も多い。また,形態上は一つの神経核として認識できる場合でも,その機能がよくわからないものや,いくつかの機能に関与する神経核もある。
ある神経核を構成するニューロンの軸索が集合して走行し,これらが神経繊維群としてのまとまりの傾向を強く示し,周囲の構造から区別される場合,それらを神経路tract(神経伝導路または伝導路)と呼ぶことがある。〈神経路〉の概念の根底には,〈同じ連絡関係をもつニューロン群,したがって同じ機能的意味をもつニューロン群は集合する〉という考えがある。つまり,〈神経路〉の概念は,それぞれの神経路に一定の機能的意味を見いだしていこうとする志向に裏づけられて生まれたといえよう。しかし,形態の上では神経路にみえても,その機能的意味がまだ十分わからないものが多数ある。また,これまでは一定の機能をもつ神経路として取り扱われてきた神経繊維束であっても,研究が進むにつれて,実はいくつかの機能群に区分されることがわかってきた例も多い。したがって〈神経路〉は,多くの場合,ニューロン・ネットワークのなかから抽出され仮定されたニューロンの機能的連絡系の概念として理解するべきものである。
ある機能系を形成する左右1対の神経路の神経繊維はしばしば脳の正中部で〈交叉(こうさ)〉している。たとえば,大脳皮質から起こり直接に脊髄まで達する錐体路の繊維や,末梢からの感覚入力を受けてこれを間脳の背側視床にまで伝達するニューロンの軸索は,それらの大部分が交叉している。脳出血は,多くの場合,これらの繊維群が交叉するレベルよりも上方で起こって,これらの繊維群を損傷する。それゆえ,脳出血の際にしばしばみられる半身の運動麻痺(片麻痺)や感覚脱失は,脳出血の起こった側とは反対の体側に出現することが多い。神経繊維の交叉の原因や意味についてはよくわかっていない。
新生児の脳重は体重の約10%,370~400gであり,男女差はほとんどない。成人の脳重は体重の約2.5%であり,日本人では男性1350~1400g,女性1200~1250gである。ヒトよりも大きい脳をもつ動物もある。たとえば,ゾウの脳重は4000~5000g,クジラの大きい種類では1万gに達する脳をもつものもある。しかし,これらの動物の体は巨大であるから,体重に対する脳重の割合をみると,ヒトのそれよりはるかに小さい。一方,体の小さいラットやスズメなどでは,体重に対する脳重の割合はそれぞれ3.6%,2.9%とヒト並み,ないしそれ以上の値を示す。また,ヒトの脳重は体重よりもむしろ身長との相関が高いことが知られており,身長1cmに対する脳重は約8.5~9gである。いずれにしても,単純に脳重だけから脳の機能の優劣を論じることができないのは明らかである。
ヒトで脳重が最高値を示すのは20~40歳であり,50~60歳からは老人性の減少が始まるといわれる。ある種の病気の際には脳重が著しく変化することが知られている。しかし,栄養不足だけでは成人の脳の脳重はなかなか減らない。体重が半減するような状態になっても脳重はよく保たれるという。体の他の部分を犠牲にしてでも脳を維持しようとする機序が働いているのであろう。一方,発育期の脳は栄養不足のほか,代謝異常,ホルモン環境などの影響を受けやすい。出生後1年のあいだに栄養失調状態におかれた小児の知的能力が著しく侵されていたことが心理学的研究によって明らかにされている。また,実験動物を出生直後から低タンパク飼料で飼育すると,体重が著しく減少するとともに,脳重も10%ほど少なくなることが知られている。
脳は他の臓器に比べて非常に多くのエネルギーを必要とする。これに必要な酸素やグルコースは血行によって供給され,脳は1日に120~130gのグルコースと約120lの酸素を消費する。ヒトの脳を栄養する動脈には二つの系統がある。一つは内頸動脈であり,他の一つは椎骨動脈である。これら二つの系統の動脈は,頭蓋腔に入ると脳底で互いに連絡吻合(ふんごう)して動脈輪(ウィリス動脈輪circle of Willis)を形成する。脳を栄養する動脈はすべてこの共通の動脈輪から起こる。脳を循環する血液の量は,心臓から拍出される血液の15%にあたるといわれる。脳重が体重の約2.5%であることを考えると,脳を循環する血液の量がいかに多量であるかがわかる。
執筆者:水野 昇
脳の固形成分の半分以上(51~54%)は脂質である。残りの大部分(38~40%)はタンパク質で,このほか少量の遊離アミノ酸などの有機物質と無機塩が含まれている。脳内の遊離アミノ酸のなかではグルタミン酸が最も高濃度で,全遊離アミノ酸の30%を占め,N-アセチルアスパラギン酸,グルタミン,タウリン,γ-アミノ酪酸,アスパラギン酸などがこれに続いている。N-アセチルアスパラギン酸は脊椎動物の脳でとくに濃度が高く,シスタチオンはヒトとサルの脳で高濃度に存在する。
脳の機能を支えるエネルギー代謝には,酸素とグルコースの供給が不可欠である。肺から摂取される酸素の約20%が脳で消費されており,低酸素の条件下では脳の機能がまっ先に障害される。ヒトの脳は1日当り120~130gのグルコースを消費するが,脳内のグルコースやグリコーゲンの貯蔵は非常に少なく,血液により時々刻々補給されなければならない。低血糖に際しては昏睡が起こるし,脳の血流が止まると,貯蔵グルコース,グリコーゲンは数分以内に使い果たされ,脳に回復不能な障害を起こす。
脳には微量であるがその機能を支えるうえで重要な役割を演じる種々の活性物質が含まれている。活性物質には,シナプス伝達を仲介する神経伝達物質,シナプス伝達を修飾するモジュレーター物質,ホルモンなどのほか,睡眠や本能行動の神経過程において特異的な役割を果たすと考えられるものがある(睡眠物質,食欲物質など)。また脳組織の発生,発達,維持に重要な役割を果たす神経成長因子などもある。これら活性物質にはアミン,アミノ酸,ペプチド,あるいはタンパク質から成るものが多いが,脂肪酸系のものもある。
脳の働きは,電気的なインパルス信号による情報処理過程がその重要な部分を占めるが,これを多彩な化学過程が支え,さらに化学的な信号による情報処理過程も加わって,脳全体が膨大な化学工場の観を呈する。麻酔剤や睡眠剤,トランキライザーなどの薬剤が脳に作用するのは,脳組織の働きがそもそも多彩な化学的過程に支えられているためである。
脳組織と血管の間には物質の移動を妨げる一種の関門がある。グルコースや酸素は脳内に自由に移行するが,一般に高分子のタンパク質や脂質,アミノ酸,リン酸,ナトリウムイオンNa⁺などは脳内に入りにくい。血液脳関門は,脳を化学的な外乱から保護し,脳の恒常性と栄養を保つために,重要な防護装置として働いている。
脳組織には,その環境条件に応じて,ある限度以内で構造を部分的に変化させその働きを修飾する柔軟性が備わっている。一時的に加えられた原因により持続的な変化を起こす性質を一般に可塑性と呼ぶ。ただし脳の可塑性には,切断された神経が再生したり,脳の一部が損傷されたときに残存部の神経細胞の突起から新しい枝が出て(出芽)障害された機能を代償するような場合から,正常な脳組織が発達する過程において環境との相互作用によってその後の性質が変わったり,あるいはまた正常な成熟脳のなかで常時起こっているある種の変化まで,幅広い内容が含まれている。
たとえば,子ネコを生後2~5週間の限られた期間,縦じまだけを見させておくと,大脳皮質視覚野の神経細胞には縦じまを見たとき反応するものが異常に増加し,横じまに反応するものが減少する。横じまを見させて育てると逆のことが起こる。しま模様を見させる代りに片目を閉じておくと,閉じた目からの刺激に対する大脳視覚野の神経細胞の反応性は著しく低下し,あとで目を開いてやっても元に戻らない。このように大脳視覚野の神経細胞の視覚刺激に対する反応性は,生後のある限られた臨界期間にだけ可塑性を示し,その期間に受けた視環境の影響によりその後の働き方が決まってしまう。
シナプスに一過性に与えられた条件により,そのシナプスの伝達特性が長時間にわたって変化する性質はシナプス可塑性と呼ばれている。このシナプス可塑性は〈記憶〉の基礎過程と考えられ,同じシナプスに続けて信号が来ると,その後そのシナプスを信号が通りやすくなったり,あるいは二つのシナプスにほぼ同時に信号が来ると,一方のシナプスの信号の通り方が抑えられるといった具体例が見いだされている。
脳の働きは,脊髄から大脳皮質に向かって階層的に積み上げられている。脊髄には四肢の運動,内臓の活動に関する種々の反射機能が備わっている。延髄には呼吸,血液循環に関する反射中枢や前庭迷路反射の中枢がある。また,中脳には眼球の運動や瞳孔の大きさ,眼の焦点調節に関する反射中枢がある。中脳にはさらに歩行や姿勢の保持の中枢がある。脊髄,脳幹にわたって備わっているこれら多数の反射機能を土台として,その上に脳の高次機能が営まれている。脳幹と脊髄が無傷であれば,それより上位の中枢が障害されても,いわゆる植物人間の状態で生命を維持することができる。脳死は脳幹も障害された状態で,人工的な呼吸の介助なしには生命を維持することはできない。
高次の運動機能は小脳,大脳基底核,大脳皮質の運動野,運動前野,補足運動野により営まれている。感覚信号はその多くが視床を介して大脳皮質の1次感覚野に送られ,ここで特徴抽出と呼ばれる情報処理が行われる。抽出された特徴の情報は,次に連合野で総合されて外界の事物に関する知覚の表象を生ずる。快・不快の情動は視床下部において発現する。摂食,飲水,性行動など個体や種の維持に必要な本能行動を起こす中枢も視床下部にある。視床下部は大脳辺縁系と密接に関連し合って働いている。睡眠・覚醒の中枢は延髄,中脳から視床下部にわたって存在すると考えられる。
18世紀から19世紀にかけて脳の肉眼的な構造が詳しく調べられ,脳のなかに働きの上での分業があるのではないかとの考えが生まれた。ガルF.Gallは,大脳のなかに理性,情意,本能,気質などの中枢があり,その各部の発達の強弱に従って頭蓋骨に高まりやくぼみができるので,頭の形から人の性質,素質を知ることができると唱えた。しかし,1830年ころフルーランスM.J.P.Flourensは,大脳表面のどこかが部分的にこわされてもいつも同じような病状が起こってくることを根拠に,大脳には種々の中枢などはなく,どこでも同一の価値をもつと考えた。この大脳皮質同価値説に押されて,ガルの骨相学は勢いを失ったが,やがて61年のP.ブローカの失語症の研究や,63年のJ.H.ジャクソンによるてんかんの研究により,大脳皮質に機能の局在があるとの考えが復活してくる。70年フリッチG.FritschとヒツィヒE.Hitzigが,大脳皮質の一定部位を電気刺激すると,身体の一定部位の筋肉に収縮が起こることを見いだし,大脳皮質運動野の存在を明らかにするに及んで,局在論は決定的なものとなった。
またブロードマンK.Brodmannは,顕微鏡で調べた組織構造の違いに基づいて大脳の皮質を52の領域に分け,各領域に一連番号をつけた(1909)。現在,この脳地図は大脳の研究に広く用いられており,その各領域の分担する機能の解明が進められている。たとえば,運動野は4野に,視覚野は17,18,19野に,聴覚野は41,42野に,皮膚の触覚や圧覚などの体性感覚野は1,2,3野にある。
→大脳皮質
運動野,感覚野に挟まれる大脳皮質の領域を連合野と呼ぶ。ラットなどの比較的下等な哺乳類では連合野はごく狭いが,動物が高等になるにつれて連合野は広がり,ヒトの大脳では高度に発達して広い面積を占めている。大まかに前頭連合野,側頭連合野,頭頂連合野の3部分に分けられる。ヒトの前頭連合野はとくによく発達して,大脳皮質面積の1/4を占める。頭頂連合野には各感覚野からの情報が流れ込み,外界についての知覚の表象を生ずる。とくに空間的な位置,距離などの知覚に関与する。頭頂連合野から側頭連合野にかけて聴覚野をとり囲んで言語野がある。側頭連合野は眼で見たものの形状を知覚するなど,外界の事物の表象を生ずる働きがある。その一部には顔の形に特異的に反応する神経細胞のあることが知られている。これらと違って前頭連合野は,複雑な行動の時間的・空間的手順をプログラムする場で,周囲状況への適応性,深みのある思考力などを生み出す働きがある。一時,精神病の治療法として行われた前頭葉切断手術では,人格が平板,移り気,衝動的になり,先見性がなく行動の持続性を失い,野心もなく責任感もなくなるなどの障害が現れた。ただし,通常の知能テストではあまり差が出てこない。
言語野は多くの場合,左の大脳半球にある。また運動機能には右利き・左利きという左右の非対称性があるが,多くの人では左の大脳半球の支配する右手が利き手になっている。言語機能と利き手の中枢の左右の所在は必ずしも一致せず,人によっては反対になることもある。しかし多くの人(92%)でこれが一致することについて,特別な必然性は考えられないのであるが,進化に際して同じころに手の微細な運動と言語の両機能が脳に備わるようになり,両者の機構がいっしょに伴って発達するなんらかの理由があったのかもしれない。
脳出血などにより言語野のある半球が障害されると失語症になり,日常生活に多大の支障をきたすが,反対側の半球が障害されても大きな支障は起こらない。このため言語野のある側を優位半球,その反対側を劣位半球と呼びならわしてきた。しかし劣位半球には優位半球とは違う独特の非言語機能が備わっていることが近年判明した。すなわち劣位半球には言語野に対応して音楽を聴くときに働く領域があり,また身体と周囲空間の相対関係を認識する領域もある。抽象的な図形を用いて学習や記憶をテストすると,劣位半球の障害によってこれらが侵されることがわかる。
左右の大脳半球をつなぐ脳梁を重症のてんかんの治療や松果体腫瘍の切除のために外科手術によって切断された患者では,左右の大脳半球の働きを別々に調べることができる。スペリーR.W.SperryやガッザニガM.S.Gazzanigaのこうした研究(1970)によって,優位脳が言語による分析的な思考法に従って事を運ぶのに対して,劣位脳は直接知覚的な総合的な過程に訴えて迅速に事を処する能力があることがわかってきた。優位半球が解析的であるのに対して劣位半球は大局的であり,優位半球が技術的であるのに対して劣位半球は芸術的ともいえるような,互いに異なり,互いに補い合う働きをもつものと思われる。
→左右優位 →左利き
脳がわれわれの心の働きを担っていることには疑う余地はないが,心の働きをすべて脳の働きに帰することができるかどうかについては議論の分かれるところである。R.デカルトは脳と心は別であるとの二元論をとり,心が松果体を介して脳に働きかけるとした。この考えを修正して,脳と心が相互に作用し合うとしたり,脳と心のなかで対応する過程が並行して起こるとする二元論的な説も唱えられている。これに対し,心は脳の働きにほかならないとする一元論にも,心が脳という複雑な物理化学系の示す性質であるとする還元論的唯物論と,脳の進化の過程で突如出現した特殊な生物学的な働きであるとする創発主義的唯物論の二つの違った考え方がある。
現在,脳の研究は自然科学のあらゆる技術を総動員して進められており,脳の関係する精神病,神経病など多くの病気の予防,治療の開発に大きな期待が抱かれ,また人工知能,人工頭脳の研究の発展に寄与することも期待されているが,〈脳と心の問題〉を解決して人間の全き理解に到達するためには今後まだ多くの研究の積重ねが必要である。
執筆者:伊藤 正男
無脊椎動物の〈脳〉は,すでに述べたように,体の前方に位置する高次の大きな神経節(頭神経節)にすぎない。脊椎動物では,ヒト以外の動物の脳もまたすべて三つの脳胞から形成され,原則的な設計はヒトの場合と同じである。系統上互いに接近した間柄の動物でも生活様式が違うと,脳の形態も異なる。対照的に系統上は遠い関係にある種類でも,生態が同じであると似た脳の形態をとる。脳の表面をおおう髄膜は魚類では1枚の薄い膜だけであるが,両生類からはその上に頭蓋骨に密着した硬膜ができ,カエルでは硬膜下に内耳のリンパ囊が広がる。
脊椎動物の脳全体を系統発生の面から眺めると,終脳の変化が最も著しい。ことに終脳の背側外套(壁)dorsal palliumから発達する新皮質は,学習のような高次の神経活動に関係が深い。鳥類の線条体striatumの背側部は,哺乳類の新皮質のように光や音による情報が間脳を経て投射される。その部位はコハク酸脱水素酵素の反応が強い。硬骨魚類の終脳背側壁は薄い膜であるが,最近,繊維連絡の実験から,膜に向かい合う,脳室に面した部分は新皮質に相当する部分と考えられるようになった。哺乳類の新皮質は著しく発達し,種によっては限られた容積の頭蓋腔に納められるため,しわが生ずる。クジラのような水生哺乳類にしわが多いのは,水の抵抗を少なくするため頭蓋が小さくなり,小さい器に広がった皮質を入れるようになった結果である。トガリネズミのような原始的な哺乳類では,新皮質にしわがなく,光,音,圧などの各感覚領域が互いに接近し,連合野はほとんど発達していない。
動物が高度に家畜化された場合,たとえばペットとして野生のフナから作出されたキンギョは,フナに比べて人になれやすく,動作も緩慢である。キンギョでは脳の体重に対する相対的な重さ,つまり相対成長はフナより少なく,脳のなかでも味覚の情報を初めに受けとる部分,つまり迷走葉vagal lobeが萎縮する。このように人為選択で作出された動物では,脳の重さが相対的に減少し,また動物の生存に重要な役割を果たしている知覚域が縮小する。この事実はブタやイヌがそれぞれ家畜化された場合にも認められる。なお育種の方法として交雑を行った場合,雑種の脳の様相は両親の中間型である。
一般に〈生きている化石(遺存種)〉といわれる種の脳は,新しい地質時代に現れた仲間の脳と比べると,相対的に発達は悪い。たとえば,サメのなかで古代的なラブカの終脳と小脳は,現代の攻撃的なサメなどのものより扁平で萎縮し,小脳にはしわがみられない。
→神経系
執筆者:正井 秀夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
動物の神経系において、神経細胞が集合して神経作用の支配的中心となった部分をいう。無脊椎(むせきつい)動物では一般に頭神経節あるいは脳神経節が脳にあたる。脊椎動物では、脊髄の前方に続く部分で、脳髄膜に包まれ、さらに固い頭蓋(とうがい)によって保護されている。脳髄膜は頭蓋骨に近い部分から硬膜、クモ膜、軟膜の3枚の膜によってできている。脊椎動物の脳は、発生の過程で、胚体(はいたい)の背面の外胚葉が正中線に沿って陥没して生じた神経管から発生する。その前部が脳管、後部が脊髄管になるが、発生が進むにつれて脳管の形態が修飾され、前方から前脳胞、中脳胞、菱脳胞(りょうのうほう)(菱形脳胞)という三つの膨らみが現れる。
前脳胞からは終脳と間脳が分化し、終脳は左右1対の大脳半球をつくる。中脳胞は中脳になる。菱脳胞は後脳と髄脳に分かれるが、後脳の背側は小脳を、腹側は橋(きょう)を形成する。延髄は髄脳から分化する。終脳は系統発生的に大きな差がある。円口類や魚類では終脳は嗅覚(きゅうかく)に関係するのみであるが、両生類になると嗅覚のみでなく統合作用を有するようになる。爬虫(はちゅう)類以上になると、感覚と運動の統御を行う新皮質が現れ、哺乳(ほにゅう)類では終脳の大部分を占めるようになる。小脳も動物の運動の制御調節に関係しているので、動物の運動性とその制御能力に応じて発達がみられる。延髄、橋、中脳と間脳(および終脳の一部を含めることがある)を一括して脳幹というが、これは上方に広がった大脳半球を支える幹という意味が含まれている。脳幹の部分は脊椎動物の脳の基本構造で、動物の生命維持に重要な機能の中枢がこの部分にあって、魚類から哺乳動物を通してその構造にはほとんど差がない。
また、脳からは12対の脳神経が出ており、前方から順に第1脳神経、第2脳神経というように番号がついている。その内容は次のようである。(1)嗅神経、(2)視神経、(3)動眼神経、(4)滑車神経、(5)三叉(さんさ)神経、(6)外転神経、(7)顔面神経、(8)内耳神経、(9)舌咽(ぜついん)神経、(10)迷走神経、(11)副神経、(12)舌下神経。これらの神経は頭部に関係する感覚の受容や運動に関係している。
大脳半球の表面には神経細胞が層状に集まっており、その内側には表面へ出入りする多数の神経線維の集まりがある。この表面を大脳皮質といい、内側を大脳髄質という。大脳皮質は系統発生的にもっとも古い古皮質と原皮質、系統発生的に新しい新皮質の3種の皮質に区別される。古皮質と原皮質は辺縁皮質と総称され、嗅覚のみでなく、本能行動や情動行動に関係する部分である。新皮質は爬虫類から出現するが、鳥類では新皮質を欠き、かわりに線条体が哺乳類より発達している。哺乳類においては新皮質の発達が著しく、古皮質と原皮質を大脳半球の辺縁に押しやった形となっている。大脳皮質の機能には局在性があって、運動機能や感覚機能の中枢を区分することができる。さらに感覚機能では皮膚感覚野、視覚野、聴覚野などの中枢がそれぞれ区別される。運動や感覚に直接関与しない大脳皮質は、ものの理解、記憶、判断などの高度な神経作用を行うところで連合野といわれるが、霊長類を含めて動物の脳では、ヒトと比べてこの連合野の発達が悪い。
[新井康允]
ヒトの脳は脳髄ともよばれ、その下方に続く脊髄(せきずい)とともに中枢神経系を構成している。脳は頭蓋腔(とうがいくう)内に収容され、脊髄は脊柱管内に収められ、それぞれ保護されている。ヒトの神経系は動物のなかではもっとも高度の機能を備えており、神経系の分化もそれに応じて複雑な仕組みをもっている。
ヒトの脳を発生学的にみると、胎生28日ころに胎児の背側に独立した神経管ができあがり、続いて、神経管の前半部で三つの膨らみが形成される。前方から前脳胞、中脳胞、菱脳胞という。これらが脳の原基となる。菱脳胞に続く後方はそのまま脊髄となる。前脳胞はもっとも大きな発達を示し、終脳と間脳とに分化する。中脳胞はそのまま中脳となる。菱脳胞は後脳(小脳と橋(きょう))とこれに続く延髄とに分化する。高等な動物ほど終脳の発達分化が大きく、ヒトの場合、終脳は左右に大きく膨れて大脳半球となる。この左右の大脳半球を支えて、キノコの傘を支える柄にあたる部分、つまり間脳、中脳、橋、延髄までの部分全体を脳幹という。
成人の脳の重量は、日本人男子で約1350グラム、女子で約1250グラムとされる。日本人と欧米人との間では脳重量の差はあまりない。また、新生児の脳の重量は約400グラムであるが、生後、急速に大きくなっていく。生後1年で約2倍の大きさになり、4~5歳で1200グラム、10歳で1300グラム前後となり、ほぼ成人の値となる。ヒトの脳は20歳ころには完成する。脳の重量は身長にほぼ比例するとされ、脳重量と体重との比が脳の発育の基準として用いられることがある。大脳半球の表面にある複雑な大脳回〔いわゆる脳のシワ(皺)〕や脳の重さが、その個体の知能や性格と対比されることがあるが、直接の関係はなく、また目安にもならない。たとえば、マッコウクジラの脳は9000グラムもあるし、ゾウやイルカの脳回や脳溝はヒトよりもはるかに細かく、数も多い。
[嶋井和世]
大脳半球の表層には神経細胞が配列し、これを大脳皮質(灰白質)という。大脳皮質に覆われた半球の内部は、大脳皮質に出入する神経線維が走る大脳白質(髄質)である。この大脳白質の内部には神経細胞の集団が存在し、大脳皮質と間脳以下の部分を仲介している。これを大脳核とよぶ。大脳皮質の厚さは平均して2.5ミリメートルほどで、もっとも厚い皮質部位は4ミリメートル(前頭葉の中心前回)で、もっとも薄い部分は1.5ミリメートル(後頭葉の視覚野など)とされている。大脳半球の皮質は、発生学的には新皮質、古皮質、旧皮質(原皮質)の3種類に区分される。旧皮質と古皮質(広義の嗅葉(きゅうよう)部分、海馬(かいば)、扁桃(へんとう)核など)は発生学的にはきわめて古く、原始的な機能をつかさどる部分で、下等な動物から備わっている。これに対して、新皮質(大部分の半球皮質)は高等動物ほどよく発達し、適応行動と創造行動を具現するような働きをもっている。大脳半球は、このようにして神経系の最高の統合作用の「座」としての役割を果たしている。さらに脳幹と脊髄は、これらの作用に介在する静的な生命現象をつかさどる座としての役割を果たしている。大脳皮質の神経細胞の数は140億とされているが、脳や脊髄には、神経細胞のほかに神経膠(こう)細胞(グリア細胞)がある。神経膠細胞は神経細胞と起源が同じであるが、胎生の初期に神経細胞と分かれた細胞で、神経細胞のような刺激伝達には関係しないが、神経細胞の周囲を取り囲んで存在し、神経細胞の物質代謝に密接に関係するほか、神経細胞の保護などにあたっている。神経膠細胞の数は、神経細胞の10倍とも20倍ともいわれている。
ヒトの小脳は脳全体の10%を占めるが、脊椎(せきつい)動物のなかではきわめて発達のよいほうである。小脳は全身の骨格筋の緊張状態を調節し、平衡感覚をつかさどっている。すなわち、体の姿勢と運動の反射的調節に重要な働きをする部分である。
[嶋井和世]
脳はその活動に応じて、体のどの部分よりも新陳代謝が旺盛(おうせい)である。成人の脳の重量は体重の約2.5%にすぎないが、脳を流れる血液量は体全体の血液量の20%にも及び、1分間におよそ800ミリリットルの血液が脳を流れる。つまり、これだけの血液量の流入によって送り込まれる酸素とブドウ糖は、神経細胞の活動に必要なエネルギーとして使われる。このため、脳には豊富な血管が発達している。しかし、脳の血管は、他の部分の血管とは異なり、その血管内を流れる物質は自由に神経細胞に到達するということではなく、物質によってはせき止められてしまう。これは、脳の「血液‐脳関門」の存在のためとされている。この解剖学的構造は明確でないが、神経細胞の周囲を囲む神経膠細胞とその外側の基底膜、毛細血管内皮細胞が関門形成に関与していると考えられている。胎児の脳では、まだこの関門は完成していない。脳は三重の脳膜(硬膜、クモ膜、軟膜)に包まれて頭蓋骨内に収められているうえ、クモ膜と軟膜との間隙(かんげき)(クモ膜下腔(くう))には脳脊髄液が満たされているため、外部からの衝撃に対して防御されている。
[嶋井和世]
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…この湾曲は,出生10ヵ月ごろ,直立歩行する時期から出現する。 脊柱には脊柱管と呼ばれる上下に長い管があり,その上端は頭蓋骨のなかの広い腔所,頭蓋腔と連続し,神経系の中枢をなす中枢神経(脳と脊髄)をこのなかに保護している。 ヒトが直立歩行を行うようになり,脊柱は地表に対して90度回転して垂直方向をとり,発達した重い脳を脊柱の上端にのせるようになった。…
…また,軸索の末端(軸索終末axon terminal)では,次のニューロンに興奮の伝達が行われる。軸索は一般に長い突起であるから(脊髄から四肢の末端部にまで達するもの,大脳皮質から脊髄の末端部にまで達するものなど),神経繊維nerve fiberと呼ばれることが多い。また,軸索はしばしばリン脂質を主成分とする鞘(しよう)(髄鞘またはミエリン鞘myelin sheath)をかぶっている。…
…末梢神経系における神経細胞体の集合をいう。これに対し,中枢神経系(脳と脊髄)内における神経細胞体の集合を(神経)核nucleus(細胞の〈核〉と文字は同じであるが概念はまったく違う点に注意)という。しかし,中枢神経内の神経細胞体の集合に対しても慣用的に〈節〉が用いられている場合がある(たとえば基底神経節basal ganglia)。…
…それでも,人は自由に言語をあやつる。つまり,自覚や意識はしていなくとも,当該の言語の文法(文法体系)を脳中に一種の知識として承知していて,おのずからそれに従ってその言語を用いているわけである。そして,同じ言語を用いる人々の脳中には,多少の個人差はあるにしても,基本的に共通の文法が備えられていると考えられる。…
※「脳」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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