家畜飼育業者がその生産家畜を食用に供するために,獣畜の処理の適正を図り,公衆衛生の向上増進に寄与するため〈と畜場法〉(1953公布)が定められ,この法律で獣畜(ウシ,ウマ,ブタ,ヒツジ,ヤギ)を食用に供する目的で屠殺解体する施設を屠畜場と規定している。処理能力については,生後1年以上のウシまたはウマを1日10頭以上屠殺解体する規模であることが定義されている。屠畜場の設置については,構造設備その他厚生省令で定める事項を記載した申請書を都道府県知事に提出し許可を受けなくてはならない。このためには,(1)人家が密集している場所,(2)公衆の用に供する飲料水が汚染されるおそれがある場所,(3)その他都道府県知事が公衆衛生上危害を生ずるおそれがあると認める場合は許可が与えられない。屠畜場では都道府県知事の行う検査を経た獣畜以外は屠殺できない。また都道府県知事の行う検査を経た獣畜以外を解体することはできない。ここで解体された獣畜の肉,内臓,血液,骨および皮は,都道府県知事の行う検査を経たものでないと,屠畜場外に持ち出すこともできないと規定されている。
このように屠畜場では厳重な検査と管理が義務づけられている。これらの検査にあたっては,屠畜検査員がこれに携わる。屠畜検査員は都道府県の職員のうちから都道府県知事が命ずることになっている。屠畜場で検査すべき疾病の範囲は〈と畜場法施行規則〉によって定められている。これらの綿密な検査が行われた後,施行規則の規定にもとづき検印を押す。この場合獣畜の種類によって,検印を押すべき部位も規定されている。以上の手続を経て安全な食用肉として,市場から食肉店を介して販売に供されている。
執筆者:本好 茂一
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