山名郷(読み)やまなごう

日本歴史地名大系 「山名郷」の解説

山名郷
やまなごう

観音山かんのんやま丘陵東南端とからす川・かぶら川に挟まれた地域に位置する。古代多胡たご山字やまな(和名抄)系譜を引く。山名郷は文保二年(一三一八)一一月一二日付関東下知状写(蜷川親治氏所蔵文書)にみえるのが早いが、山名義範(新田義重子息)の本貫地であり、成立は平安末期までさかのぼるであろう。鎌倉後期成立と考えられる妙本寺本「曾我物語」巻五には、三原狩に向かう源頼朝が「山名・板鼻・松井田宿」を通っていることが記され、宿として認識されていたことが知られる。また「宴曲抄」(正和三年八月)は鎌倉から信濃善光寺に向かう道筋を示しているが、そのなかに「矢並に見ゆる鏑河、今宵はさても山な越ぞ、いざ倉賀野にとゞまらん」と記される。


山名郷
やまなごう

和名抄」諸本にみえる郷名。東急本に「也万奈」の訓がある。「遠江国風土記伝」は式内社山名神社を周智すち飯田いいだ(現森町飯田)比定し当郷をこの付近とするが、「掛川誌稿」は「山名は山無にて、即山梨なれば」として山名神社および山名郷を周智郡上山梨かみやまなし・中山梨・下山梨、豊田とよだ沖山梨おきやまなしの四村(現袋井市上山梨・下山梨・沖山梨付近)に比定する。


山名郷
やまなごう

「和名抄」所載の郷で、同書名博本が山石とするのは誤記であろう。東急本・元和古活字本では也万奈の訓を付す。「三代実録」元慶元年(八七七)閏二月二六日条にみえる常世神は当郷に鎮座していたとされる。

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

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