改訂新版 世界大百科事典 「山岸会」の意味・わかりやすい解説
山岸会 (やまぎしかい)
無所有一体社会の実現を目的とする社会運動団体。山岸巳代蔵(1901-61)によって1953年に創設された。本部は三重県伊賀市の旧伊賀町川東にあり(2008年現在は東京都新宿区),2006年現在全国32ヵ所に実顕地がある。84年現在,定住者は約1000人。生業は養鶏を中心に酪農から農業全般に及ぶ。創立者山岸巳代蔵の思想の中核は,〈個人〉,自我(我執)の放棄を説く点に特徴があり,自己が他によって生かされているという根本的な確信である。この場合,〈他〉とは,他人のみならず自然を含む他者であり,自然と人為とが一体となって調和した社会を理想とした。他方,このヤマギシズムは,科学への楽観的な期待と,それにより現実化される快楽主義を特徴としており,人間の理想のありようは快・遊びの一元的な達成であるとしている。養鶏を糸口に農民を中心に結成された山岸会は,急速に拡大し,1959年運動を急進的に進めようとした結果生じた社会問題(山岸会事件)により,全国にその名を知られるようになった。巳代蔵の死後の64年に山岸会は分裂し,巳代蔵の思想を継承している〈護教派〉が現在の山岸会の主流となっている。〈いま,ここで〉の革命と護教は,しばしば,画一的な意識革命をもたらしていると指摘されることがある。60年代末の学園紛争を契機に多くの青年が流入し,日本のコミューン運動の一つの中心となっている。95年に幸福会ヤマギシ会と改称。
執筆者:今 防人
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報