岸田今日子(読み)キシダ キョウコ*

新撰 芸能人物事典 明治~平成 「岸田今日子」の解説

岸田 今日子
キシダ キョウコ*


職業
女優

生年月日
昭和5年 4月29日

出生地
東京都 杉並区

学歴
飯田高女〔昭和21年〕卒,自由学園高等科〔昭和24年〕卒,文学座附属演劇研究所〔昭和25年〕修了

経歴
劇作家岸田国士二女で、詩人・童話作家の岸田衿子の妹。俳優の岸田森はいとこ。戦時中は姉と2人で長野県に疎開、昭和21年飯田高女を卒業して上京し、自由学園高等科に入る。舞台美術に興味を持ち、24年卒業と同時に父が創立した文学座の附属演劇研究所に入所。25年舞台「キティ颱風」の娘役に抜擢され、父の猛反対を受けるも一度だけとの約束で許されて出演、女優の面白さに目覚めた。“一人前の社会人になってから俳優になれ”との父に従い一時研究所を離れ、27年文学座に入団して「狐憑」で正式にデビュー。29年「どん底」稽古中に父が急逝、同年研究所で1期後輩の仲谷昇と結婚(52年離婚)。35年小説家の三島由紀夫が演出した舞台「サロメ」に主演、話題を呼び、また「陽気な幽霊」「バイオリンを持つ裸婦」「黒の悲劇」などの大作に主演して次代の新劇界を担う新進女優として注目を集めた。38年文学座を退団し、仲谷、芥川比呂志らと劇団雲結成に参加。50年雲を解散し、演劇集団円を創立。「聖女ジャンヌ・ダーク」「じゃじゃ馬ならし」「アントニークレオパトラ」「マクベス」「会話」「欲望という名の電車」などの翻訳劇に出演する傍ら、別役実太田省吾清水邦夫つかこうへい、平田オリザらの新作劇にも積極的に取り組んだ。広い額と大きな瞳、厚い唇という個性的な風貌で知られ、ミステリアスで艶めかしさ湛えた雰囲気と、悲喜劇を問わず、純真な役やとぼけた役から悪女まで幅広くこなす抜群の演技力で、個性派女優としての存在感を示した。平成6年紫綬褒章。11年「猫町」「遠い日々の人」で紀伊国屋演劇賞。映画には、昭和28年今井正「にごりえ」の端役として初出演。37年「破戒」「秋刀魚の味」で毎日映画コンクール助演女優賞を受賞。39年には安部公房原作・勅使河原宏監督の「砂の女」に主演、同作品がカンヌ国際映画祭審査員特別賞を受けるなど国際的にも高く評価された。テレビドラマでも「みどり保育園」「傷だらけの天使」「御家人斬九郎」などに好演。また独特の声質を生かしてドラマ「大奥」のナレーションやNHKラジオ「私の本棚」の朗読など声の分野でも活躍。44年より演じたアニメ「ムーミン」のムーミン役で子どもたちにも親しまれた。子ども向けの舞台作りにも熱心で、円・こどもステージを企画し、エッセイや童話も執筆。平成10年には「妄想の森」で日本エッセイスト・クラブ賞を受賞した。18年76歳で亡くなり、舞台は17年「オリュウノオバ物語」、映画は18年「ウール100%」が遺作となった。他の出演作に、舞台「雰囲気のある死体」「プラトーノフ」「今日子」「桜の園」「線の向こう側」、映画「犬神家の一族」「海と毒薬」「八つ墓村」「春の雪」、テレビ「赤穂浪士」「春の坂道」「前略おふくろ様」「武田信玄」「徳川慶喜」「ナースマン」「奥さまは魔女」「あいのうた」など。著書に「子供にしてあげたお話 してあげなかったお話」「外国遠足日記帖」「時の記憶」「大人にしてあげた小さなお話」などがある。

所属団体
日本文芸家協会

受賞
紫綬褒章〔平成6年〕 岸田国士賞(文学座)〔昭和34年〕「人と狼」「薔薇と海賊」,テアトロン賞(昭35年度)「陽気な幽霊」,ブルーリボン賞(助演女優賞 昭37年度)「破戒」「秋刀魚の味」,O夫人児童演劇賞(第5回)〔平成1年〕,ブルーリボン賞(助演女優賞 第39回 平8年度)〔平成9年〕「学校の怪談2」「八つ墓村」,日本エッセイストクラブ賞(第46回)〔平成10年〕「妄想の森」,紀伊国屋演劇賞(第34回)〔平成11年〕「猫町」「遠い日々の人」 毎日映画コンクール女優助演賞(昭37年度)「破戒」「秋刀魚の味」など

没年月日
平成18年 12月17日 (2006年)

家族
父=岸田 国士(劇作家),姉=岸田 衿子(詩人・童話作家)

親族
いとこ=岸田 森(俳優)

伝記
仮面の女と愛の輪廻家族の原風景女優であること獅子文六先生の応接室―「文学座」騒動のころことばを磨く18の対話永くもがなの酒びたりブルーベリーを摘んだ日々―ふたりの山小舎だよりまた、近いうちに気分は夕焼け色 虫明 亜呂無 著宮原 安春 著関 容子 著福本 信子 著加賀美 幸子 編中村 伸郎 著岸田 衿子,岸田 今日子 著和田 誠 著吉行 和子 著(発行元 清流出版論創社文芸春秋影書房日本放送出版協会早川書房徳間書店大和書房潮出版社 ’09’04’04’03’02’91’88’86’86発行)

出典 日外アソシエーツ「新撰 芸能人物事典 明治~平成」(2010年刊)新撰 芸能人物事典 明治~平成について 情報

デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「岸田今日子」の解説

岸田今日子 きしだ-きょうこ

1930-2006 昭和後期-平成時代の女優。
昭和5年4月29日生まれ。岸田国士(くにお)の次女。岸田衿子(えりこ)の妹。昭和27年文学座にはいり,「狐憑」でデビュー。28年「大つごもり」で映画デビュー。38年テレビドラマ「男嫌い」,39年映画「砂の女」などで人気をあつめ,テレビ,映画,舞台で活躍。テレビアニメ「ムーミン」の声優としても知られた。平成10年「妄想の森」で日本エッセイスト・クラブ賞。平成18年12月17日死去。76歳。東京出身。自由学園高卒。

出典 講談社デジタル版 日本人名大辞典+Plusについて 情報 | 凡例

今日のキーワード

カイロス

宇宙事業会社スペースワンが開発した小型ロケット。固体燃料の3段式で、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発を進めるイプシロンSよりもさらに小さい。スペースワンは契約から打ち上げまでの期間で世界最短を...

カイロスの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android