経営管理上と法律上の二つの意義があるが、後者は近年ほとんど現実性をもつことはなくなっている。
経営管理としての生産管理は、経営における生産活動を効率化し、生産的諸資源の有効性を最高に発揮させるための体系的施策をいう。具体的にいえば、需要に適合した良質の製品ないし財を、安価にしかも適時に生産するための体系的努力である。その主要な内容は、生産計画、作業研究、作業計画、工程管理、品質管理、原価管理、在庫管理、運搬管理などである。以下、これらについて順次説明する。
生産計画は、生産すべき製品の種類、数量、品質、生産時期を予定することである。3~5年程度の長期生産計画と、年度内に用いる短期生産計画とに大別される。前者は、経済・需要予測にたった既存製品の生産見通し、新製品の導入予定、設備や労働力など主要生産能力の所要見通しをおもな内容とする。生産計画の中心は年度生産計画であるが、それは1年を単位にした製品ごとの生産予定である。年度生産計画は、必要に応じて半期・四半期・月次などの短期生産計画に細分される。生産計画を能率的に遂行するために、作業の方法・用具・設備・環境について科学的検討を加える必要が生じる。これにこたえるものが作業研究である。それは時間研究と動作研究を中心にしている。時間研究は、作業の標準時間を科学的に設定する手続であり、動作研究は、作業の標準動作を科学的に設定する方法である。これらに基づいて標準作業が設定される。標準作業と生産計画を前提にした具体的な実施計画が、作業計画である。それは、各作業を遂行する作業者や設備・機械の負荷状況(すでに与えられている作業量、その反面が余力)を確認しながら、各作業が暦日時に対応して、いつ・どこで・だれによって実施されるべきかを定めるものである。それは単に日程とよばれることもある。
生産計画、作業研究、作業計画によって生産管理の計画段階は終了し、実施段階に移る。その中心は工程管理である。それは、工程ごとの作業の進行が計画どおりに行われるよう処置し、遅延を生じた場合には原因を除去し、対策を講じることで、進度管理または進捗管理(しんちょくかんり)ともいう。工程管理の管理基準は時間であるが、それと同時に、品質やコストも重要な基準となる。これらに特化した管理分野が、品質管理と原価管理である。品質管理は、望ましい品質基準内に製品が納まるよう、製品を検査し、生産方法を改善し、人間を訓練する。原価管理は、所定の原価標準と実際原価を対比し、差異の解消に努める。生産の円滑な進行と需要への敏速な対応のためには、原材料や製品の在庫が必要であるが、それが過大になると収益を圧迫する。適正在庫の算定と実現が、在庫管理の目的である。運搬業務の複雑化と運搬手段の専門・多様化は、独立した運搬管理を必要とするようになる。
法律上の生産管理は、争議行為の一種として、労働者団体(労働組合)が使用者の指揮・命令を排除し、自主的に生産・業務を管理することをいう。第二次世界大戦後の経済混乱期に、この戦術が一時的に多用されたことがある。しかし、経済状態の回復や政府による規制の強化により、しだいに下火になった。この戦術が経営権との関係で合法か違法かについては学説上対立があるが、最高裁判所の判決は違法としている。
[森本三男]
企業活動上要求される製品生産において,品目,数量,品質,納期,原価を,与えられた労働力,機械設備,原材料,副資材の枠内で達成するための,計画・統制を生産管理と呼ぶ。生産の全過程におよぶ管理の総称であり,通常つぎの7分野に分けて別々の呼び方でいうことが多い。
(1)生産計画 販売計画,製造計画,工程編成,設備計画,要員計画,資材計画から成る。製品の販売量を予測し,販売時期,生産に必要なリードタイム,製品在庫状況を勘案して製造(生産)目標を立て,年間・月間・日間・時間当りの生産必要量を定める。現有生産能力・能力増強余力には各企業の限度があり,販売計画はこの限度内で利益最大,売上高最大,シェア最大などを狙って決定されるのが常である。決定された製造計画について各製品の製造工程を分析し,設備,作業,標準時間,材料・製品の運搬,検査方法などを効率性を基準に決定することを工程編成という。決定された主要設備の配置・改良,補助的設備の整備などが設備計画,必要な労働力を量的・質的に決定し組織体系を決めることを要員計画,原材料,部品,副資材の投入調達計画を資材計画という。(2)製造予算編成 販売予測,市場状況と製造計画から目標とする単位製造原価が各工程別に分解されて算出される。これに生産量を乗じたものが期間達成予算となる。各工程ごとに予算の消化状況が管理されることになる。(3)工程管理 生産される品物を中心に生産工程の細部まで計画し統制することで,工程の決定手法としてインダストリアル・エンジニアリング,ワーク・デザインなどが用いられる。工程計画,日程計画,進度管理などが含まれる。(4)資材管理 〈資材管理〉の項参照。(5)品質管理 〈品質管理〉の項参照。(6)設備管理 機械設備を最も効率的に使用するための計画・統制をいい,機械類が故障しないように予防保守することと,最短時間で修理復旧させることに分かれる。(7)原価管理 工程ごとに与えられた予算につき実績の状況を把握比較し,改善するための計画・統制をいう。
執筆者:阿部 圭 なお労働者が使用者の指揮・命令を拒否し,自主的に生産を管理することも生産管理という(〈生産管理闘争〉の項参照)。
執筆者:黒田 満
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…企業制度論ないし経営形態論は,資金調達の様式の差異にもとづく会社制度や企業間の結びつきの諸形態を問題にする。生産活動の仕組みについては,生産管理,品質管理などの領域が発達している。マーケティング論は,市場での販売と企業内の生産との関係を問題にしている。…
…ストライキ中の工場や事業場から労働者が退去せず,スト破りの就労阻止やストライキの切りくずし防止を目的として,職場に労働者が居座る場合があるが,この場合はストライキの一種として,座込みストsit‐down strikeと呼ばれる。なお,職場に労働者が居座ったうえ,さらに使用者を排除し労働者のみの管理のもとに生産や営業を続行しようとする場合は,生産管理(work‐in。〈生産管理闘争〉の項参照)と呼ばれ,座込みストとは区別される争議戦術となる。…
…また,暴力の行使は刑事責任のみならず民事責任を免除するものでない(労働組合法1条2項)。争議行為の手段態様で具体的に問題とされたものに,生産管理,職場占拠,ピケッティング,サボタージュ(怠業),製品ボイコット,リボン腕章着用闘争,ビラはりなどがある。 第1に生産管理や職場占拠(シット・ダウン・スト)戦術については,会社の所有権を侵害するとして違法説をとるものがあるが,日本の企業別労働組合の特質を考慮して,理想型の生産管理――労働組合が使用者に代わって,従前どおりの通常の方法で会社業務の管理を行い,収入は会社のために保管し,生産・販売等業務に従事する組合員には所定どおりの賃金を生産管理後に支払う形態――や使用者の会社施設の占有を排除せず操業をも妨害しない,単純な滞留型の職場占拠に,正当性を認める学説・判例が多い。…
…労働組合法,労働基準法および労働関係調整法は労働三法といわれる。労働組合法は集団的な労使関係を規律する最も基本的な法律で,労組法と略称する。1949年6月1日に制定され,同日に施行された。
[制定までの経緯と変遷]
戦前にも労組法制定に向けた努力が存在したとはいえ,大正時代から昭和の初頭にいたるまでの間に約20の法案が登場したものの,いずれも日の目をみることはなかった。終戦直後の1945年12月に公布,46年に施行された旧労組法が,日本最初の労組法であった。…
※「生産管理」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...
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