静電気の帯電を防ぐこと。吸湿性に乏しい合成繊維やプラスチックは電気絶縁性が高く(体積固有抵抗1011~1017Ωcm),摩擦などで静電気を発生しやすく,一度帯電するとその静電気はなかなか逃げない。冬季の乾燥した場所では天然繊維や紙でも帯電することがある。帯電するといろいろな問題が発生する。たとえば,紡績工程で繊維が帯電すると機械に付着し,糸をつくることが困難となり,またプラスチックフィルムなどでは成形加工や巻取りが困難となる。衣服が帯電すると,ほこりが付着しやすくなったり,布がまつわりつくようになり,着たり脱いだりするときに音や火花をともなって放電する。爆発性ガスの充満した場所では放電は危険である。カーペットの上を靴で歩いていると静電気が発生,蓄積し,ドアの金属取っ手に触れたときなどに放電して人体にかなりのショックを与えることも日常経験する。これを防止するには,表面電気抵抗を1010Ωcm以下,好ましくは106Ωcm以下にすればよい。帯電防止法としては,発生する静電気が蓄積しないで速やかに漏洩(ろうえい)するように,親水性,導電性の帯電防止剤を,合成繊維(紡糸時)や樹脂(加工前)に添加(練込み)したり,製品表面に塗布あるいはスプレーによって付着させる方法がとられる。繊維の場合には,このほか,金属めっきをした繊維やその他の導電性繊維を混ぜることによっても帯電防止効果が得られる。
帯電防止の目的に用いられる物質の多くは界面活性剤で,一般に表に示すような化合物が使われている。樹脂との相溶性,耐熱性,持続性を考慮して選択され,また当然ながら用途によって毒性,危険性の高いものは排除される。通常,樹脂100重量部に対し0.5~2.0重量部が加えられる。一般にノニオン系(非イオン系)のものは耐熱性がよく,樹脂との相溶性がよい。カチオン系のものは帯電防止能が優れ,耐熱性は悪いが,電子写真用などの特別の用途にも用いられる。繊維用にも各種のものが用いられるが,一例をあげると,ポリエステル繊維用にはポリエチレングリコールとポリエチレンテレフタレートとの共重縮合物などがある。家庭で手軽に使える繊維用やレコード用のスプレー式のものもあるが,繊維に使用した場合の耐洗濯性は乏しい。
執筆者:坂本 宗仙+森川 正信
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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