株式会社,有限会社の会計の帳簿および書類の閲覧または謄写を求める株主または社員の権利。1950年の商法改正でアメリカ法にならって採用された制度で,株主・社員がその権利(とりわけ代表訴訟提起権,差止請求権)を確保・行使するための前提として重要な意義を有する。その対象となるのは,会計帳簿および会計書類であって,業務・財産には及ばない。帳簿閲覧権者は,発行済株式総数または資本の100分の3以上に当たる株式または出資口数をもつ者であり,その意味でこれは少数株主権または少数社員権の一種である(商法293条の6,293条の7,有限会社法44条の2,46条1項)。会社荒しによる乱用を防止するため個々の株主・社員には閲覧権を認めていないわけだが,他方,個々の株主には,計算書類およびその附属明細書の閲覧権が与えられている(商法282条2項,有限会社法43条の2-2項)。ただし,有限会社では定款で各社員に帳簿閲覧権を与えることができ(有限会社法44条の2-2項),逆に金融事業においては,帳簿閲覧権はいっさい認められない(銀行法23条等)。閲覧を請求するには,理由を示した書面を会社に提出しなければならない。この請求があった場合には,会社は原則としてこの請求に応じなければならない。しかし取締役は,その請求が,株主・社員の権利の確保・行使に関して調査するためでないこと,会社の業務運営または株主共同の利益を害するためであること,請求者が会社と競業関係にあることなど,法定の列挙事由に該当すると認められる相当の理由があることを立証すれば,その請求を拒否することができる(商法293条の6-2項,293条の7,有限会社法46条1項)。
執筆者:岸田 雅雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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